第3話 旅立ちの日!モールドとの約束!
騒動から数日たったある日、再び王に呼び出された。
「何度もすまないな。次の任務はやつらの基地を落とすことだ。前日の魔族の侵入を受け、会議でこちらから攻め入ることが決まった。そこには魔王の幹部と思われるやつがいる。そいつを倒せばしばらくは脅威から逃れることができるだろう。そいつに勝てるのはアルだけだ。やってくれるか?」
「もちろん。望むところですよ」
「さすがは最強の騎士。そう言ってくれると信じていた。今回の旅は軍を引き連れての長く、厳しいものになる。犠牲も否めないだろう。わかっていると思うが、気を付けてくれ」
「大丈夫です。何としてでも倒してきます」
俺の返事を聞くと王は安心したように微笑んだ。
「出発は三日後だ。それまで準備をしておいてくれ」
三日後か。
また少ししか街にいることができなかった。
騎士という職に就いた以上、みんなを守るため甘えたことは言ってられない。
必ず勝たねば。
三日の間に装備をメンテナンスし、必要なものを買い溜めた。
そして当日、俺たちを見送るために街の人たちが正門に集まった。
モールドとネヴィも見送りに来てくれたが、モールドはずっと下を向いたまま目を合わせてくれなかった。
街にいる時間が短すぎてかまってやれなかったからだろう。
「なあ、そんなに拗ねるなよ」
「だって、いつ帰ってくるかわかんないんでしょ?」
「そうだな。かなり険しい旅になりそうだな」
モールドはうつむいたまま鼻をすすった。
ずっと一緒にいたい気持ちは俺にもわかる。
だが、俺がやらないといけないんだ。
俺はモールドの前にしゃがみ、目線を合わせる。
「いいかモールド。俺は騎士だ。だからみんなを守るためにもどんな時でも戦わないといけない。命の危険もあるだろう。だがな、お前たち愛する家族を残して逝くなんてことは絶対にしない。そんなことしてたまるか!だから何が何でも早く終わらせて帰ってくる。それまで寂しい思いをさせてしまうかもしれないが待っていてくれないか?」
しばらく沈黙が続いた後、赤くなった目がこちらを向いた。
「…ほんとにすぐ帰ってくる?」
「もちろんだ。俺は最強の騎士だからな。だからお前は俺の帰る場所を守っていてくれ」
「わかった。なるべく早く帰ってきてね。約束だよ!」
俺はモールドを優しく抱きしめた。
モールドのぬくもりを全身で感じる。
そしてそのぬくもりは心までも。
「そうだ。これ作ってもらったんだ!お父さんにあげる」
モールドの手の中には銀で出来たペンダントが。
ふたを開けると俺らの家族写真が入っていた。
「いいお守りだ。ありがとう、大切にするよ」
ペンダントを首から下げると、力がみなぎってくるような気がした。
今の俺なら誰にも負けない。
よし、そろそろ出発の時間だ。
軍を引き連れ、敵地へ向かう。
天気も良好。
風も追い風で気分がいい。
いろんな期待を背に、大地を力強く踏みしめて行く。
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