17話 珍しいこと三連発

【貴族同士の外交における制限緩和】


 いつものように新聞に目を通していると、そんな記事が目に入った。どうやら万全の護衛をつけた上での外交であれば、国に申請をしておけばいいらしい。


 外交をするのにも国の許可が必要だとか、随分と窮屈な時代になりましたわねぇ……。どうしてこうなってしまったのでしょう。


 ……いや考えるまでもなく、あの謎の黒ローブの集団のせいですわ。尚更、あの時奴らを逃したことが悔やまれますわね。あの時私がしっかりと身柄を拘束しておけば、今頃もう少しあの集団に関する進展もあったでしょうに。


 結局、あの舞踏会から三年以上経った今でも奴らに関しては何も音沙汰がないのです。よっぽど隠れるのが上手いのか、はたまた国に内通者でもいるのか。


 ……いや、これは考えすぎですわね。国は私たちの安全を考慮して外交を制限していたわけですし。


「はぁ……」


 思わず溜め息を吐いてしまう。本当に一体何なのでしょう。貴族を一網打尽にしようとしてきたあたり、とんでもないことをしでかそうとしているのは間違いないのですけれど。


 そんなことを考えていると、自室の扉をノックする音が聞こえてきた。


「お姉様、今はお時間大丈夫ですか?」


「サニア? 入っていいですわよ~」


 サニアが来るなんて珍しいですわね。何かあったのでしょうか。


「では失礼するのです。……お姉様のお部屋、最高なのです……」


 いやまず用件を話しなさいな。なに人の部屋の空気を堪能しているんですの。


「それで? 何か用件があったのでしょう?」


「……ハッ! 久しぶりのお姉様のお部屋でトんでいたのです」


 わたくしの部屋、やっぱり劇物でも舞っています?


「コホンっ! えっと、お父様がお呼びなのです。お姉様だけ連れてきて欲しいとのことだったのです」


 わたくしだけ? 妙な呼び出しですわね。


 ……え、もしかしてわたくしまた何かやらかしてます? つい最近呼び出されたばかりなのですけど? 


「なんか顔が青くなってますけど大丈夫なのです。お父様が怒っている雰囲気はなかったのです」


「あ、そうなんですのね……安心しましたわ」


「お姉様、ビビりすぎなのです……」


 だってしょうがないでしょう。わたくしが何かする度に呼び出してくるんですもの。ビビるようにもなりますわ。


「まあ、そういうことなので早くお父様のところに行ってあげてくださいなのです」


「分かりましたわ。ありがとう、サニア」


 そういうことで、今日もせこせこ書類とにらめっこしているであろうお父様のもとに向かうことになったのです。一体何の用でしょう。わたくしだけというところも気になりますわね。


「お父様~? いらっしゃいます~?」


「パキラか。入ってくれ」


「では、失礼しますわ」


 執務室に入ると、書類ではなく外の景色を眺めているお父様が。机の上に書類もありませんし。珍しいこともあるものですわね。こんなに暇そうにしているお父様を見るのは久しぶり……どころか初めてかもしれませんわ。


「急に呼び出してすまないな。そこの椅子にでも座ってくれ」


 何かいつもと雰囲気が違いますわね……。いやまあ、毎度詰められる時でしかここに呼び出されていないので当然と言えば当然かもしれませんけれども。そう考えるとわたくし、結構ろくでもない人間ですわね?


「さて、本題に入ろう。今日は、パキラに頼みがあって呼んだんだ」


 お父様からの直々の頼みとはこれまた珍しい。今日は珍しいことだらけですわね?


「頼み、ですか」


「ああ。パキラは王国が外交の制限を緩和したことは知っているな?」


「ええ。確か護衛を十全に用意していれば良いという話でしたわよね」


「今日呼び出した理由はまさにそれだ。近々、私はライムライト領の南西部に赴くことになっているんだ」


 なるほどなるほど。話が見えてきましたわよ。これはあれですわね。わたくしがお父様の護衛として同行してほしいとか、そういう話ですわね。


「つまりわたくしがお父様の護衛につけばいい、ということですわね。任されましたわ!」


「いや、既に護衛は手配してある。今回頼みたいのは別の要件だ」


 あれれ~? この話の流れでそうではないことあります? これじゃ自信満々に「任されましたわ!」とか言ってたわたくしがバカみたいじゃありませんの。


「パキラ、お前は謎の黒ローブの集団の姿を見たことがあるのだろう? 今回の制限緩和を機に、再び姿を現さないとも限らない。なので、パキラにはそいつらが姿を現した時のために警戒をしていて欲しいのだ」


 今度こそ理解しましたわ。つまり、これはあの時のリベンジチャンスというわけですわね。今回姿を現そうものなら今度こそとっ捕まえてやりますわ。


「一度奴らを退けているお前がいれば、こちらも安心して会談を進めることが出来る。護衛とは別行動をして、奴らが姿を現したらそちらで対処してもらいたいというわけだ」


「ええ。その任、喜んで受けさせていただきますわ。わたくしとしても、奴らを逃がしたことは心残りでしたの」


「危険なことを任せてしまってすまないな。万が一のことがあったなら、自分の身を第一に考えてくれ。本来なら、娘にこんなことを頼むべきではないのだがな……」


「安心してくださいな。わたくし、誰かを守るためにこの拳を磨いているのですから」


 この拳に誓って、必ずや守り抜いて見せましょう。仮に奴らが姿を現しても、確実に被害は出させませんわ。

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