11話 成長
国によって、貴族同士の交流が制限されてから三年ほどが経ちましたわ。その間、あの怪しい魔導士が姿を現すことはなく足取りがつかめない状況でしたの。それは現在も変わらず、国は捜索を続けているようですわ。
また、交流の制限によって外交というものが相当減り、自分の領地問題の解決などに時間を回すことが増えたのです。
まあ、これは
そしてその三年間の
クチナシ様の胴体に拳を当てられることも増えてきました。ずっと躱されていた日々を考えると、相当な成長と言えるでしょう。
この三年間で目覚ましい成長を遂げたのは
何なんですの? もう既に私よりも大きいのですけれど? 私の胸に行くはずだった栄養は筋肉になったということですの? まあそれなら許して差し上げましょう……。
でも何なのでしょう。この拭いきれない敗北感は。
まあ胸の話はこれくらいにしておいて、サニアに関しては魔法ですわね。今のサニアの魔法の実力はというと……。
「さあクチナシ様! 勝負です! 今日こそお姉様は頂いていくのです!」
「フン! 小娘のその言葉もそろそろ現実味を帯びてきておるわ! だからといって当たってやる気は無いがのう!」
クチナシ様の言葉通り、サニアもこの三年間で魔法の実力はとんでもなく伸びたのです。
魔法の速度、密度、精度。どれをとっても一級品と言っていいでしょう。そこに生まれつき持っている魔力の絶対量がプラスされて、とんでもない魔法使いになっていますわ。
「では……いきます!」
サニアが魔法を構える。その瞬間に降り注ぐ雷の雨。稽古場の地面にそれが当たる度に、激しい音が鳴り響く。それでサニアの攻撃の手が休まるはずもなく、雷によって逃げ場を制限されたところに無数の炎の弾幕が放たれる。
「なんの! まだまだぁ!」
クチナシ様も反応していますが、確実に回避に使うことができるスペースが減っていますわね……。
サニアの恐ろしいところは、右手で雷魔法の制御をしつつ、左手で弾幕を張り続けているところですわ。
そうして、サニアが弾幕でクチナシ様の動きを誘導したところで、サニアが手を打ったのです。
「っ! ここっ……!」
瞬間。クチナシ様の真上に一際大きな雷が降り注いだのです。それは確実にクチナシ様を捉えていました。
「ぬうっ!?」
回避不能の一撃。完全に動きを誘導しきったサニアが、ついにクチナシ様を穿ったのです。
「当たっ……た……?」
雷の着地点から激しい砂埃が巻き上がっている。その中から、一つの影が姿を現したのです。
「いい雷だったわい! お陰で筋肉が解れて身体が軽いのう! 十年は若返った気分じゃ!」
そこには魔法を受ける前より元気そうなクチナシ様。サニアの魔法を電気マッサージ扱いしてるのは何なんですの?
「お姉様。私、魔法当てましたよね? なんでさっきより元気そうなのですか?」
「……クチナシ様に言ってちょうだい、サニア」
「いつかは当てられる日が来ると思っておったが早かったのう! 合格じゃ。約束通り、明日は姉を貸してやろう」
「何故でしょう勝った気がしません!」
勝負には勝ったはずなのになぜか不満そうな顔のサニア。まあ、そうですわよね。負けた側の方が元気そうなんですもの。
「それにしてもいい雷じゃったのう。あれ、月一くらいでやってもらえんか?」
「絶対に嫌なのです!」
「それは残念じゃ。ほれ、今日の稽古は終わりじゃ。明日のプランでも考えておくといいわい、サニアよ」
「だから小娘じゃなくて名前が……って今サニアと呼びました?」
「なんじゃ、その年でもう耳が遠くなったのか? 今からでも小娘呼びに戻してもいいのだぞ?」
「戻さなくていいのです!」
「フン! 今日の勝ちは譲ってやるわい。だが、次もこういくとは思うなよ」
そう言って稽古場を後にするクチナシ様。その背中は一仕事をやり切ったような、そんな背中でしたわ。
「さて、では明日の
「……ハッ。明日は……お姉様を、独り占めできる……?」
突然目がキマりだすサニア。
え、
「お姉様。明日、楽しみですね?」
「お、お手柔らかに頼みますわね?」
「フフ……お姉様を独り占め……お姉様と二人っきり……お姉様……」
一体何を考えているのでしょう……。想像もしたくないですわね……。
というか顔が凄いことになっていますわ。目はキマっていますし口からよだれが垂れそうですし。
明日の
距離感、やっぱりおかしいですわよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます