優しさの輪郭

凪咲 心音

優しさの輪郭

「優しさ」と「冷たさ」は、

とても近い場所にあると思う。


その境界線は曖昧で、

見る角度によっていくらでも姿を変える。


もしかしたら、

このふたつは対極ではなく、

同じ感情の裏表なのかもしれない。


たとえば、

誰かの悩みに耳を傾けるとき。


私たちは「助けたい」という気持ちから

言葉をかけるけれど、

その言葉が本当に相手の救いになるかは、

わからない。


なぜなら、

悩みはいつだって、

本人にしか解決できないものだから。


それでも、私たちは言葉を紡ぐ。

自分のことではないからこそ、冷静に語れるし

その無責任さに気づかないまま、

誰かの人生に口を出す。


「あなたのため」と言いながら、

どこかで「自分の満足」のために

話している自分がいる。


怖いのは、

たいていその自分に気づかないこと。


人は誰かを気にかけるふりをしながら、

結局、自分自身のことばかり

考えているのかもしれない。


少し捻くれて聞こえるかもしれないけど、

人間って、そういう矛盾を抱えて

生きているものだと思う。


でも、別にそれでいい。


「優しさ」も「冷たさ」も、

そのどちらも、

きっと私たちの中に共存している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

優しさの輪郭 凪咲 心音 @cacao_02

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ