第4話 ドロップアイテム確認&モンスター飯!
「さて、ここからはお楽しみのボスドロップを確認するぜ!」
モンスターを倒すと、霧散して消滅してしまう。
しかし、特殊な素材……つまりアイテムが手に入る場合がある。
それは、モンスターが持っていた武器だったり、体の一部だったりする。
ちなみに、アイテムドロップ確認はダンジョン配信では人気コンテンツ扱いだ。
モンスターとの戦闘と同じくらいコメントは盛り上がる。
もしかしたら、開封動画(高額なカードを引き当てれるか試す企画)と同じノリで見ているのかもしれない。
事実、コメント欄では───
『アイテム開封、キタコレ!』
『当たりこい、当たりこい!』
『レアアイテム! カモン!』
大盛り上がりだ。 それには理由がある。
「事前に告知しているけど、この配信で入手したアイテムは視聴者プレゼントとして厳選な抽選で当選者を決めます!」
そう、俺は配信中のドロップアイテムは視聴者プレゼントにする事を決めている。
『きゃ! ライガさん、太っ腹!』
『あれ、冗談じゃなく本気だったのかよ!』
『ボスドロップって浅層でも100万円くらいの価値はある……よな?』
「うんうん」と俺は、戦斧を良く見えるように掲げた。
「このバトルアックスとか、オークションに出せば300万くらいにはなるぞ」
『え? それ配送できるものなのか?』
「ん~ 日本刀だったら専門業者なら1万円くらいで配達してくれるけど、たぶん美術品扱いになるから、もう少し高くなるかな。まぁ送料はこっちで負担するぜ」
俺が欲しいのは金じゃない。 配信者としての評価だ。
だから、こうして高額な物もプレゼントする。 ほら、昔のYouTuberさんたちもやってただろ?
ただ、気を付けなければならないのは、高額な分、炎上に結び付きやすい事だ。
「配信最後に応募に必要なキーワードを発表するから最後まで絶対見てくれよな!」
さて……めぼしいアイテムドロップはバトルアックスが2つくらい。
「残りは……食材に使わせてもらうぜ」
黒オークたちは霧散していったが、1匹だけ体が残っている。
地上に持ち帰ると研究施設などで買い取って貰うが、ここは食わせてもらう!
『食材……食べるつもりか! モンスターを!』
『え? 大丈夫なの?』
『いや、ダメだろ? 見るからにヤバそうじゃん?』
おっと視聴者たちをドン引きさせてしまった。これは良くない。
「大丈夫、大丈夫! ダンジョンで入手したアイテムで毒物なら、毒消しのアイテムで相殺できるから……それにダンジョン産の食材は、高級で美味なんだぜ!」
それでも半信半疑になっている視聴者たちだが、俺は調理の準備に入った。
「まずは
そうして、取り出したのはキャンプ用の小型コンロ。 火をつける。
ご飯が炊ける前に黒オークの解体を始める。
普通ならグロい映像になっているだろう。
しかし、最初に説明したと思うが俺の配信では、AR(現実拡張)によって自動的に映像加工されている。
配信を見ている視聴者は、グロ映像が見えていないはずだ。
まぁ、 このため……倒したモンスターで料理配信をする事がARの機能を付けた真の目的だったりもする。
さて……
色は濃い赤。脂は白く、引き締まっている。黒オークの肩ロース──
「くぅ~ コイツはいい肉してやがるぜ!」
呟きながら、俺はその塊をまな板の上に置いた。
まず包丁の柄を手に持ち替える。そのまま、柄の部分で肉をトントンと叩いていく。
肉を叩いて柔らかくする行為だ。 大切なのは、強くもなく、弱くもない、絶妙な力加減となる。
『手際いいなぁ!』
『料理に慣れてるのか?』
『探索者時代は、ダンジョンでモンスター飯ばかりを?』
おっと、料理の腕前が褒められ始めた。ちょっと修正しておこう。
「いや、普段は全く料理はしないぜ? この日のために1か月間、料理を練習をキッチリとしてきたんだ」
うん……最初は、ご飯を炊く事すら失敗してたからなぁ。
なんで、強火以外に火力の種類があるのかもわからなかった。
『意外と努力家なんだ』
『裏で頑張ってるんだね(ほろり』
「……うん、そろそろいいか」
次に衣作り……小麦粉、卵、パン粉を肉につけていく。
そして、ある意味では調理のクライマックス!
ご飯とは別のコンロ。油を張った小鍋が、すでにジュウという音を立て始めていた。
「いくぞ……」
肉をそっと油に落とす。ジュワッ!と激しい音とともに油が跳ねる。
「うおぉ! やっぱり怖いぇ! 油物は、まだ慣れないなぁ」
『モンスターより、油の方が怖いのかよ!』
『恐怖感バグってませんか?』
「うるせぇよ」と俺は笑ながら、鍋の様子を確認する。
肉の色が黄金。 キツネ色に変わって来たぞ。
揚がったカツを取り出し、皿の上で休ませる。
この間、切ったタマネギに市販のタレで茹でる。 タマネギが柔らかくなったのを見ると……
「カツを投入。そして、かきまぜた卵を入れて……よし!」
すでにご飯は炊けている。
どんぶりに盛り付けた白米。その上の鍋の中身を移動させ───
とどめに三つ葉を、ちょこんと乗せた。
「完成だ! 黒オークのかつ丼!」
俺は配信映えってのを意識してドローンのカメラに見せつけた。
『おぉ! マジで美味そう!』
『絶対に美味いやん、そんなもん!』
『本当にモンスターで作ったの!? コレ!?』
おぉ! やっぱり、コメントの速度が上がってる!?
いや、待てよ。 ボスと戦っている時やアイテム検分よりも視聴数が爆上がりじゃないか!
やべぇ。ここで食レポをミスったら……いや、配信に失敗なんて存在しない!
「それじゃ、実食していくぜ! いただきます!」
ほっかほかだ。 ご飯も、肉も! それに卵が、とろぉ~りとしている。
「見てみろ! うわぁ、美味そうだろ!」
ゆっくりと箸を口に運ぶ。
「あむっ!」
タレを吸い込んだカツ。 さくっ!とした食感に驚く。
それの食感を楽しめるのも僅かな時間だけだった。 甘いタレが旨味が口内に広がっていく。
「あぁ……うまっ!」
あぁ、満たされてる!
ただのオークを相手にするつもりが3匹……それも黒化していて強くなっていた。
配信中だから、余裕ぶっていた。けど、内心じゃ予定外の出来事に焦っていた。
そして、料理配信…… その結果を言うとしたら───
「うん、感動もひとしおってやつだな」
しみじみと呟いた。
『もっと食レポして! 味の感想をはよ!』
『どんな味なのか、説明してくれよぉぉぉ!』
「おっと! すまん、すまん! 最初は肉の弾力が強いけど、とろけて消えていくような柔らかさもあるんだぜ、不思議だよなぁ!」
『うわぁ食べてぇ!』
『俺もちょっとダンジョン行って来る!』
『行ってら!』
『死んでら!』
「それで、ご飯にタレが染みていて……こうやってカツと一緒に食べると……やばい、ご飯が止まらないぞ」
ついつい、白米をかき込む手が早くなっていく。
ちょっと下品かもしれないが・・・・・・ガツガツと口内に運んでしまう。
「食レポは難しいなぁ。俺の語彙力だと美味さが伝えきれないかもな」
『ぶっちゃけ、見てるだけで美味そうなの伝わってくるんだよな』
『わかる! 表情が豊か過ぎるんだ』
「お前ら、食レポを求めておいてだな!」
美味い物を食べて、視聴者数も伸びて、こんなに幸せでいいんだろうか?
「ふぅ……ごちそうさま!」と俺は最後の挨拶で配信を締めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます