マテリアル・ツインズ 《Material・Twins》

@guratan-23

廻帰せよ我らの夢よ原罪よ

Episode.1

まだあの時は世界が理不尽だとは気付けなかった。まだ子供だった俺達は何も、何も出来なかったんだ。だから何もかも失った。ただ俺達二人だけを残してみんないなくなってしまった。けれど一つの小さく大きな決意は生まれた。  



───必ず魔獣を絶滅させてやる。




   第一幕 夢罪纏う星々の邂逅

 



◆◆◆



「おい、カイト仕事だぞ」

「あ、もうそんな時間か」

「毎日寝すぎだぞ」


朝5時頃。大抵の人間はまだ寝静まってる時間から彼らの仕事は始まる。


「さて今日もやってくか」

「おう」


彼らの仕事とは、ひどく明確で単純な仕事である。


「いつも通りぶっ殺したいフォルムだな」

「同感」


目の前にいるのはこの世界の害獣。彼らの故郷を奪った元凶。全てにおいて存在してはいけない存在。カイトとメガロはそれをぶっ殺したくてしょうがない。そうしないとアイツらは浮かばれないから。


「カイト!そっち行ったぞ!」

「了、解…!」


彼らの仕事はそう。


───魔獣狩りである。


◆◆◆


「毎度助かってるわ〜カイト、メガロ」

「おっさんもこんな黒に近い仕事よく辞めないよな」

「はっ!お前らが言うかよ!ずっとこの仕事やってるくせに」

「……まぁ、やらなきゃいけねぇもんだしな?メガロ」

「あぁ…俺達がやらねぇと…な」

「ははは、これからも頼むぜ〜」


本来魔獣狩りは中央政府魔獣対策組織である『WALL』に所属している者が行うべきものだ。彼らカイト・メガロがやっていることは無許可での魔獣狩り。無論犯罪である。だが『WALL』にいる人間だけじゃ人手不足だ。だからやらないといけない。犯罪だろうと皆を救っているのは変わらないのだから。


「ほら、次の仕事だ!行くぞ!」



◆◆◆


コンコンと、ドアをノックする音が聞こえた。おそらく仕事の話だろう。今日は休みのハズだけどなぁ…


「どうした?」

「───さんからの依頼です。相方と一緒に指定の場所に向かえと」

「………またか、あの人は。俺達のこと何だと思ってんだ」

「あはは…」

「で、いつ行けば良いと?」

「明日です」

「分かった。あの人に了解と伝えておいてくれ」 「はい」


使者は用件を伝えるとドアを閉めそそくさと出ていった。今日はゆっくりできるから良いとしてもなぁ…明日からまた出張か。入った時から思ってたが…


「やっぱしWALLはブラックだな」


ずっと夢から遠ざかってるような気がするんだ。


◆◆◆


「はぁ〜今日もたくさん殺れたな」

「あぁ。少しずつ夢に近づいてる…と思う」


魔獣には知能なんてない。襲いたい時に人や動物を襲って壊していく。知能がないのはずにあの時は…あの事件は一体何だったのか。あのせいで俺達は──


「おーお前ら!今日はこれで終わりだ!おつかれさん!」

「おっさん今日は元気だな。なんかあった?」 「いーや?なんもねぇよ!たまにはお前らをしっかり労おうと思ってな!」


そう言って袋に入ったお菓子を渡してくる。 「どっから貰ったんだよ」

「お得意様に決まってんだろ!また明日も頼んだぜ!」

「はいはい」


故郷を奪われてからの2年間。修行と魔獣狩りを続けて彼ら2人はかなりの強さを手に入れていた。そこまでの力があるのなら『WALL』に入って免許有りでの魔獣狩りをすれば良いのではないかと思われるだろうが欠点が1つある。それは自由に魔獣狩りができないということだ。


カイトとメガロが目指すのは魔獣の淘汰。絶滅である。チマチマやってたらずっと夢は叶わない。 仕事が終わる頃にはもう辺りは暗闇だ。彼らの1日は仕事と食事。それと修行の時間があるだけ。


「今日はとっとと寝ろよカイト」

「あぁ。もちろん」


これが嘘であることをメガロは知っている。カイトは仕事が終わった後、修行の時間が終わった後でも自主的に剣を振り続けるのだから。 明日がまたやってくると信じて夜は深くなっていく。


何が起こるかも知らず今日もまた、眠る。


     


       第1話  朝と夜

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