平民ゆえに、厳しい学園生活を送るセシル。
周りはお貴族様ばかり。
これ貴族の嗜みとばかりに平民をいびる。
彼女はひたすら耐えていた。
卒業後の人生のために、医術士になるために。
そんな彼女にだって我慢ならないこともある。
今は亡き兄から貰ったパラソル。
これは、これだけは、将来と引き換えにでも取り返す。
鼻息荒だて対峙するは伯爵令嬢。
固い意思で固めた拳は伯爵令嬢へと届くのか。
パラソル窃盗事件に端を発する物語。
影に潜んだ真実が白昼のもとに晒される。
喜怒哀楽、全てを感じさてくれる短編ファンタジーです。
コメディチックな序盤から始まり、そこからは予想がつかない展開の応酬。
手に汗を握ったかと思えば、ほろりとさせられる。
的確な描写が物語の世界へと誘う、没入感のある作品です。
本作に入り浸って、笑って、泣いてみてはいかがでしょうか。
医術士を目指す15歳の女の子セシルと、幼馴染の美少年セムヤザが、盗まれた日傘を取り戻すために、王子が主催する茶会に乗り込むお話——これだけ聞くと、「これは絶対にコメディに違いない!」と思われるかもしれません。
(実際、主人公セシルのパワフルさはコメディそのものでした)
しかし、その実、思うようにいかない人生を懸命に生き抜こうとするセシルと、彼女の奏でる音楽に魅せられ(セシルは昔、ギター弾きだった)、彼女を守り通そうとするセムヤザの、優しい愛の物語でもありました。
他の登場人物たちも魅力が詰まっております。既に亡くなった兄ユベール。日傘は彼が妹に送ったものです。そして、この日傘がとんでもないものであり、ユベールもただの兄貴ではないことが判明したとき、この物語がいかに豊かな発想に基づいて書かれたを、思い知らされました。
そして、その日傘を盗む悪役レディ・タイナ。
高飛車、他人の物は自分の物、貴族として平民を下に見る……気持ちいい位の悪党っぷりは必見です!
面白いかと思いきや泣かされる、絶妙な具合の物語を是非とも体験してみてください!