「壁の光、沈黙の中で」
三浦俳尚
第1話
I. 空と座る者
空が赤い。薄く、静かに広がる。男がベンチに座る。背は曲がり、手は膝に置かれる。空き缶が掌に冷たい。指が錆に触れる。血が滲む。血は落ちない。ただそこにある。
風が吹く。草が揺れる。音はない。男の目が空を見る。赤が灰に変わる。ゆっくり。ゆっくり。
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