036:青ゴブリン、スライムと接触す(前編)

 ◇


 おっ、10mぐらい離れた所が光って~……友達1人来た。


「ぅおー、こらおもとったよりすげぇわ……」


 色白、耳長、高身長。でもガタイの良さを感じさせる金髪男子。

 森人エルフのえすとっきゅー、略して“えすと”さんや。


 その目は、スライムまみれの噴水に向いてる。多分ウッキウキな顔してる俺と違って、彼の顔は引きつってる。


 えすと、ゼリー苦手なんだって。パッと見似てるスライムにも、ちょっと抵抗あるんだろな~……


「よぉ~、おっさき~」

「よぉー、早いな今日。ボーゼは?」

「まだや。まぁそのうち来るやろ~」

「……お? “呼ぶよりそしれ”やな」


 振り返れば奴がいる。青白い毛並みの狼獣人ウルフ・ビースター、ボーゼが。


「よぉお前ら、元気しとぉか?」

「見て分からん? 昨日の今日やぞ~ ?? 」

「せやせや、察せボケー」

辛辣しんらつぅ……」


 はい。お遊びはここからや~。

 ボーゼがえすとに一言。


「で、天然のゼリーはどない?」

「んー……寒天やったら平気やねんけどなー。あと葛餅くずもちとか」

「「知らんがなお前……」」



 ……とりあえず兎3羽を呼びます、えすとが。


「【召喚サモン】・ダイス!」


 いっつも通りのレティシアさん小っちゃい橙色ダイスくん小っちゃい牛柄とがの


「ぴすぴす!」

「……ぷう」

「ふんす」


 ……あれ、噴水のスライムらのほうへ飛んでったな?

 で、ダイスくんがお手しとる。小兎ミニラビやのにお手しとる。

 器用やね、どこで勉強したん?


 んでそこに、さっきのピカピカスライムくんの触手が伸びて~……


「知リ合イー」

「「1段ワンランク下げダウン !! 」」


 えすとお前、そこは“ドモダチ~”やろ。

 やれやれ……名作映画も、俺らの手にかかればこんなもんや。

 ……アホ! んな話ど~でもええねん。


「きゅいきゅい~」

「……ぷう」


 種族を超えた友情か、それとも狡猾こうかつな生存戦略か……?

 どのみち、草原まちのそとで知り合って、仲良くなったらしい。

 いつの間にか知らんけど。まぁ、そんなこともあるか~。



 ……お、連れてくるの? 「仲間にしますか?」てやつ ??


「ふす、ふんす」

「きゅいきゅい~」

「きゅえーい」


 俺の前に、牛柄の小兎とがのとスライム2匹。ピカピカくんともう1匹やな。


「ぴすぴす!」

「きゅきゅ、きゅ!」

「きゅえーい」


 ボーゼの前に、虎柄の黒兎レティシアさんとスライム4匹。リーダーくんはあっちか。

 ほんでえすとの前には、橙色の小兎ダイスくん


「……ぷう」

「ずるいぞお前ら! 何で俺ばっかりぃー !! 」

「「そういうとこやぞ」」


 動物は“鬱陶うっとうしいヤツ”を嫌がる、らしい。愛の重さゆえに、うるさくてベタベタするえすともそっち側や。


 ちなみに俺は普通。

 ボーゼはモテモテ。ちょっと怖いぐらいモテモテ。さすがイケメン。


 さらに余計なことを言っておくと、リアルではえすとにだけ、彼女がいます。


 ……ど~でもええな?



 動物園とかでも、いつもこんな感じだ。



 ◇


 さてまいった。スライム2匹も面倒見きれない。どうしよ……?


難儀なんぎやな。スライム4匹も面倒見れんど?」

「ボーゼ、お前もか……」

「……俺の時代来たー!」

「「りろワレェ……」」


 ……とか言いつつ。彼が3匹、ボーゼが2匹、俺が1匹、それぞれ見ることになった。

 ……え? 行けるんか、やて……?


「……きゅえー?」

「きゅえー?」

「「……きゅえーい!」」

「……きゅきゅ」


 ノリの軽い2匹と、リーダーくんが名乗り出たわ。ありがとうねぇ。

 ほな【テイム】……の前に、や。


「ちょ~っと失礼しまして。【鑑定】」


―――――

プチスライム(♂) Lv.8

(分類)魔物/??型

 まだ幼い、自然界の掃除屋。雑食。

 水と光を好み、明るい森林にむ。ただし、小さな体に無限の可能性を秘めている。その気になれば、どこへでも行けるだろう。


 HP:100%   MP:100%

―――――


 意味いみしんな説明だな~。

 ……いやいや、細かい所は後でじっくり。


「ありがとうねぇ~。ほなお待たせしました、【テイム】」

「きゅい!」


《「プチスライム」1体の【テイム】に成功しました。名付けやステータス画面の閲覧ができます》


「名前か~……“はっさく”とかどう?」

「きゅい~」


 大丈夫みたいやn……いや俺がアカン !!


《名付けに成功しました。以下の条件が満たされています》

《〈生活魔法〉〈従魔法〉両スキルがLv.3になりました》

《称号〈水玉の主〉を取得しました》

《MP不足により、状態異常【気絶】になりました。回復まで約55秒……》

《従者「はっさく」が、称号〈鬼族の従者〉を取得しました》


 通知来たけど、なーんもできん……


「あーまたか……起きろジンジュー」


 えすとに肩を揺すられて、秒数が減ってった。


「……ハッ !? おはようございました~ッ!」

「「おうお疲れー」」


 飛び起きたら、2人ととがの、はっさくが見とった。

 他の子は、それぞれで駄弁だべっとるみたい。楽しそうで何より。


「HAHAHA、ジンジュのここ、いてますよ?」

「ふす……」

「きゅい……」

「「きっっしょ……」」


 スベった! 第三部完 !!

 ……は置いといて、はっさくに一言。


「……グダグダやけどまぁ、よろしく~」

「きゅい~」


 彼の頭上から、触手がニュッと伸びて、小さい人の腕みたいな形をとる。見事な親指サムズアップだな~。



 ……ん !?



「はっさく、お前……ひだりきやったんか !? 」

「きゅい?」

「「ツッコむとこそっち ??? 」」



――――――――――――――――――――

(中編) に つづく ▶️▶️▶️



※次回更新は明日8/10(土)夜の予定です

 よろしくお願いします m(_ _)m


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る