[第1章]冒険 を 始めよう !

※まだ初日(土)――

008:青ゴブリン、街を出る

 はい、組合出ました~。ジンジュです。

 そんなわけで……帰ってきたぜ、中央広場!

 この時間になったら、さすがに人が減ったな~。小柄な今の俺にも、街並みがよ~く見える。


「カァ、カァ」

「んなぁ~」


 で、地味に多いな、猫と鳥。



 ここは“始まりの街” アインツ。欧州ヨーロッパの旧市街にありがちな石造りの街……って感じだな。

 ドイツっぽい名前の割に、それらしき赤屋根は見当たらない。むしろ白っぽい街並みだから、イタリアとかギリシャっぽい……?


 いやまあ……行ったことないから、地図帳とかの受け売りだけど。


「適当言うただけやのに、割と当たっとったんかい……」

「「何の話 ?? 」」


 友達ボーゼとえすとにツッコまれた。


 で、この中央広場は、噴水を中心に広がる円形広場だ。

 広場の周りには、8方向に延びる大通りと、役所・教会・冒険者組合など、街の主要施設が集まっている。


 噴水のおさらい。真っ白で立派な、石造りの噴水だ。

 で、そのど真ん中に、シトリー様の石膏像せっこうぞう。あのベーシスト女神様ね。


 またおがむ、のはやり過ぎか。気をつけ~、礼! ありがとうございま~す !!



 放射状に、8方向へと延びる大通りの先には、それぞれ城門が見える。小っちゃく、だけど。

 デカい街だな~。しかも城塞じょうさい都市とし、ってか? 街の周りが高~い石壁で囲まれてるやつ。



「よし、ほなこっち行くコ」


 ボーゼは南側の大通りを指差した。浜手の方言を漏らしながら。


「「りょ~か~い」」



 ◇


 大通りをまっすぐ南へ、小走りで約30分。“アインツの南大門”に、着いた~ッ !!


「うわ~、また並んどるな~……」

「ほんまやなー……」


 そそりたつ城壁に、ぽっかりいた四角い穴。

 ……そんな門の両脇に、おっちゃんが1人ずつ立ってる。門番さんだ。

 顔だけ出した全身鎧フルプレートに、両手用のデカい槍で、いかにも……って感じだ。


 で、左に見えるおっちゃんのほうに、列ができてる。

 検問か~。ってことは……


 おっちゃんのさらに左に、城壁と一体化した建物がある。それが詰所つめしょ、ってとこかな?


「問題なし、通ってよし!」


 威勢のいい声がしたけど、どっちのおっちゃんでもなかった。門の向こう側にもいるのかな?


 ……お、当たり~。商人さんご一行が門をくぐってきた。


「しばらくかかりそうやなー」

「せやな……ほなジンジュ、スキル埋めとけ」

「……ほえ?」


 急に言われても困る。


「オススメある~?」

「「ん~……」」


 考え込むボーゼとえすと。


「〈顕示アピール〉〈解体〉〈器用強化〉〈筋力強化〉〈挑戦者〉あたりか?」

「全部は無理~」

「やろな」

「俺からは〈従魔法テイム〉と〈精神強化〉もオススメしとく。魔法が苦手? ほな得意なヤツにぶん投げろ! ……てのもアリかと」

「そんな都合のええ子、近場におるん……?」

「……まー、当分先の話やな」


 ん~……ならこの組み合わせで。


《〈従魔法〉〈解体〉〈筋力強化〉以上3スキルを取得しました》

《条件が満たされたため、〈鑑定〉の技【目利き】を取得しました》

《初期スキル10枠が確定したため、残りの初期スキルが取得不可となりました。なお、条件を満たして開放し、必要なSPスキル・ポイントを消費することで、それぞれ取得できます》

《種族スキル〈土魔法〉が開放されました。SP:2で取得できます》

《条件が満たされたため、〈刀剣〉〈水魔法〉〈顕示〉など7スキルが再び開放されました。それぞれSP:3で取得できます》


 通知爆撃、再び。


 ……はい。じゃあ行きましょ~、人生初の検問。

 門番のおっちゃんが、前の一団を見送っとる。


「次! ……は君らか」


 2人の知り合いやったか~。まあ、目立つ狼獣人と森人くみあわせやし、嫌でも覚えてまうやろな~……


「「「お願いします!」」」


 一礼してから、それぞれの冒険者組合員証シーカーズ・カードを提出する。

 3人分確かめてから、おっちゃんがこっち見た。


「君は新入りかい?」

「はい、異人の冒険者シーカーです」

「そうか、頑張れよ。 ……ご協力、感謝する」


 そう言うて、おっちゃんは組合員証を返してきた。


「問題なし、通ってヨシ !! ……気をつけてな~」

「「「ありがとうございます !! 」」」


 ほな出よか、アインツ市。

 大門をくぐると、反対側にも門番のおっちゃんがおる。


「「「こんにちは~」」」

「おう、気を付けてな!」


 知り合い多いな ???

 で、その先も街道が延びてる。清々すがすがしいほど、まっすぐ南へ。


「お~、ええ風やな~……」

「せやなー……」


 道の両側は草原。左へ。

 草原の奥に、森が見える。街道の上に、伸び放題な木の枝がかぶさってる。

 道がついてない所は、ずいぶん鬱蒼うっそうとしてんな~。


 んで、草原ここいっぱいいるな~……異人プレーヤーと、足元の毛玉。白・黒・茶色……って、結構彩り豊かカラフルだ。


 たぶんウサギ……なんだ。跳ねてるし、草食べてるし。

 でも体は小さいし、耳も短い。天竺鼠モルモットって言われても違和感ないくらいだ。


「……【斬りつけ】! おっしゃー、倒せた!」

「食らえ新技、【火の破魔矢ファイア・アロー】!」

「……一発だ。 ……」


 ………

 ……

 …


 異人たちよそさまの剣とか、弓矢とか魔法とかで、小兎がガンガン倒されとる。異人側は半分実験……みたいなノリの人、多そうだな。


 対する小兎のほうは、逃げ回るか体当たりするか、って感じ。けど、その体当たりを食らってける人も、ちょくちょくいるな~。


「……ヒャッハーする前に、観察に徹するその姿勢。嫌いやないでー」

「割り込む余地がなかった、とも言う」

「誰目線で何言うとんの、お前ら~ ?? 」


 合ってるから別にいいけど……ど~でも。

 じゃあ、大盾出しておいて。まずは……


「お、りやすそ~な石ゲット。あとその辺の草~、【鑑定】」

「「安定のマイペース」」


―――――

ウィード

(分類)植物

 平原に自生する草。

 どこにでもあると言えるし、そうでもないとも言えるね。


 HP:―  MP:―

―――――


 ツッコミ所が多すぎる。とりあえず……


「“ウィード”て、英語で“雑草”やんけ! せめて“グラス”にしたれよ……」

「「そこツッコむん?」」

「はい。世の中に雑草という草はございません」

「昔の天皇か!」


 ボーゼのツッコミに、えすとはポカーンとしている。


「植物学者かもよ?」

「「そういう問題ちゃうねん」」


 ツッコミが心地いいね。

 ……んで、この草をむしって、【鑑定】。


「なんか約1名、面倒めんどくさい検証しだしたでー?」

「はい、ですね」

「「お前や」」


 えすとにガンガンツッコませるの巻、|《ウィズ》with Bボーゼ


「手短にな?」

「りょ~か~い、すぐ終わる」


―――――

ウィードの葉(極小)

(分類)素材

 平原に自生するウィードの葉。用途不明。

 葉の途中でちぎれており、素材としてはいまいち。

―――――


 ……でしょうね。じゃあ次行こう。



「お待たせしました~」

「おうお疲れー」


 とか言ってたら、茶色い小兎が駆け寄ってきた。思わず頭をでる。


「よしよし、なかなか可愛いyい゛っっっ !! ……コイツ噛むんか!」

「「お前アホやろ……」」


 は~い、アホで~す。

 Lv.3、って俺より強い……なつくわけねぇな。それ見落としちゃダメなやつ……。



 何してんだ俺ェ~ ??



《「ミニラビット」1羽と交戦中です》




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