【正典】関西人とツッコむ! VRMMO ~電脳世界も “鬼” ばっかり !! ~

あいお明

[序章]“ファンフリ” を 知ろう !

――初日(土) ――

001:青ゴブリン、女神様に会う

 ◇


「健康で文化的なゴブリン・ライフ」


って、興味ある?



 俺は興味ある。

 何かで見たこの1行が、ずっと気になってた――――



 ◇


「よっしゃ、初期設定終わり~! は〜長かったァ……」


 はじめまして、ジンジュです。「ミニゴブリン」って種族で、今話題のゲームを始めま~す。

 タイトルは「FANTASIAファンタジア OFオブ FREEDOMフリーダムOnlineオンライン」、略して「ファンフリ」。


 熱心な友達に誘われて、面白そうだからやってみる。現場からは以上です。

 “健康で文化的なゴブリン・ライフ”とか、送れたらいいね。知らんけど。



 さて、何がどうなるんだろ? だな~……



……と、いうわけで。

 選んだ種族は「ミニゴブリン」。特徴的な緑色の肌は、“人間やめました”感が半端はんぱない。

 愛嬌あいきょうはあるけど、不細工な顔。その上、おでこの左右に、とんがったこぶもある。

 そのうちつのとかえてきそう。



 いかにもファンタジーの、序盤の悪役って感じだ……! ええやん !!



 そんな小鬼が、華奢きゃしゃ足軽あしがるふんしている……というのが、今の俺です。

 青い着物の上から、黒いよろいけている――――はい、趣味に走りました。


 ……能書のうがきはもういいか。まずは友達と合流しよう。



 ◇


『【通常スタート】「アインツ・中央広場」が選ばれました。転移を始めます』


 そんな字幕テロップが、目の前に現れた。

 少し遅れて、どこからか響く女性の声が、それを読み上げる。


「はい、お願いしま~す」


 そう答えて一礼すると、何やら映像と音楽が流れだした。


『この世には、実に多くの「不思議」が満ちあふれています。見たことない風景に、初めて聞く言葉や、謎多き生き物たち。そして、知る人ぞ知るじゅつ……なんてものも』


 何かいいね、こういうの。“始まった~!”って感じで。


『そんな新たな世界で生きていくための、最大の鍵。それはあなたの心、好奇心です。“これは何だろう?” “知りたい” “気になる”……その気持ちを大事にしてください』


 部屋の扉が開いて、その向こうが白く光りだした。

 ……ん !? 待て、このBGMは!


『あ、やりすぎて周りの迷惑にならないようにだけ、気をつけてくださいね。それでは、よき第2の人生セカンド・ライフを!』

「ちょお待った~! そのベース、シュピーゲルの『生存競技』ですよね !? 」


 思わず大声を出してしまった。いかにもクソガキ、って感じの声だ。

 で、白い光に全身すっぽり……と思ったら、元の部屋に戻った。



 ―― い や キ ャ ン セ ル で き る ん か い 。



 ……ヤバい、固まった。どうしよう、これ…… ??



 ◇


 そんなわけで、初期設定してた謎の部屋。白い光に全身すっぽり……から20秒ほどで、動きがあった。


 目の前の天井に、ぽっかり穴が空いた。音とか光とか、何の前触れもなく急に。直径1mちょいぐらいで、中は真っ暗……ってか、墨のように真っ黒。超真っ黒。


 そして、中から……


「あら、バレましたかぁ……よっと」


って声がした。と思ったら、白い服の人がストン、って降りてきた。

 この声、さっきの案内役ガイドさんかな? 同じ人でも、マイクのオン/オフで声が変わるからな~……分からん!


 あ、立った。いろじろびじん~!

 ……いやそれより、銀髪に緑色の黒目だ。な~んか意味ありげだな~。


 で、この真っ白な服と帽子は、修道服ってやつ? よく分かんないけど。

 あと、ギターか何かを抱えている。ぶっとい弦4本……


「エレキ・ベースですか?」

「いえ、魔素マナトリックベースです。最近ハマってまして」

「あ、そうなんすか~」


 マナトリック・ベースか~。電気エレキの代わりに、魔素マナってとこ?

 で、しゃべりながら1フレーズいてる……上手うま~ !!

 え、今のウォーキング・ベースってやつ? しれっとやっちゃダメでしょ、そんなの……


※法的には問題ない技術です



 ……違う違う、そこじゃない。あのベース弾いてたのもこの人? 何者なの ??


「おっと、申し遅れました。わたくし、シトリーと申します。ジンジュさんですね?」


 “シトリー”? どっかで見たなm……いや待て神様だ! 取扱説明書とりせつで見た !!

 ジンジュー! 土下座だーッ !! 頭が高いぞワレェ~ !!


「……へへぇ~ッ !! 」

「あぁ~いえいえ、あまり気にしないでくださいね」


 そう言われて、思わず顔を上げた。“笑って許す”っていうよりは、何かワクワクしとってみたい。

 んで、部屋の真ん中に歩いてって、丸いテーブルの横で一言。


「立ち話もなんですし……ここ座りませんか?」

「あ~、ありがとうございます~……ほな失礼します」



 テーブルの下に、イスが3つ。

 シトリーさm……


「あ、ここでは“シトリーさん”でお願いしますねぇ」

「人の心読まんといてください……」


 神様~? 何でもありだな~ ??

 シトリーさんがイス出して、座るのを待ってから、俺は向かいのイスに座った。

 で……失礼だけど、即、こっちから話しかけた。


「あの~、失礼な言い方ですんませんけど……僕ごときに、神様が何のご用で?」


 別に転移キャンセルさっきのアレ、神様直々じきじきに出てこなくても……って感じだし。


「先程の件もお気になさらず。むしろこちらが始めたことですので」

「マジすか、何でまた……?」

「そうですねぇ……一言でいうなら、“人外プレーヤーさんへのサポート”って所でしょうか」

「サポート、ですか?」

「ええ」


 シトリー様は即うなずいた。


「こちらでは“プレーヤー”ではなく“異人”って言うんですが……私たちのほうからお招きした以上、異人の皆さんには是非楽しんでもらいたい! と考えています。が……」


 あ、なんか寂しそうな顔しとってや……


「どうしても、途中で心折れて辞めちゃう方々かたがたがいらっしゃるんですよねぇ……。それ自体は仕方ないんですが、問題はそこからです。そもそも、人外種族って“あとで強くなる代わりに、最初は大変だよぉ?”ってコンセプトなんですが……」


 ん? 俺に話振ってきた ??

 ……もしかして。


「……その“最初が大変”すぎて、辞めちゃう率高い、とかですか?」

「そうです。しかも“分身アバター作り直してやり直すぞー!”って方も少なくて。だから何かしらお手伝いできないかなぁ……? と思いまして」


 なるほど……


「かといって、人外種を選んだ人全員にお声掛けする、というのも違うなぁ……と。“どーでもいいから、早く次行かせろ!”って言う人もいますからね。 ……結果こうなりました」

「いや、そうはならんやろ?」

「なっちゃったので諦めてください。 ……というわけなんですが、質問とかあります?」


 ん~、特には……いや待て。


「何であの曲弾いとったんすか?」

「そこ掘り下げるんですね」

「今しかないと思いまして」

「……単に、お好きなのかなぁ? と。“生き残れ~♪”とか口ずさんでおられましたし」


 急に暴かれる黒歴史! ……マジか、自覚なかった。顔あっつ……


「他には?」

「特にないっす……」

「わかりました。では、こちらをどうぞ」


 ぴろーん! って能天気そうな音が鳴って、視界の真ん中にこんな文章が出てきた。


《条件が満たされたため、称号〈副神シトリーの祝福〉を授与されました》

《これにより、スキル〈幼鬼ミニゴブリン〉に、個体特性【福耳】が追加されます》


 これが“通知”なんだって。

 ……ほんとだ。耳が~、でっかくなっちゃった(物理)


「転移、再開しますか?」

「……はい、お願いします!」


 危ねぇ、ボーッとしてた……

 ドアの向こうから、また光りだした。

「では、よい旅を」

「ありがとうございます」


 こうして俺は、また白い光に包まれた。



――――慣れねぇ~ !!



 ◇



 光が消えたら、そこは噴水の前。

 活気あふれる石造りの街、その熱気が……



―― い や 暑 い 、 暑 す ぎ る わ ッ !!



 初期装備、初期装備と初期装備、ときどき上級者? って感じ。

 ようはこれ、



 みつ で す 。



――――――――――――――――――――

 お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m


 こんな風にゆるゆる(?)やっていきます。

 よろしくお願いします~!



【追記】

 フォローありがとうございます!

(2025/07/12)


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