ベスト・フレンド

 俺は、昨日のつばさとの会話で、膨大な情報を手に入れた。

 まず、彼女らに繋がりは無く、みんなが俺に対して嘘をついたのは、偶然だったのだという。

 そして今、俺は昨日親父が買ってくれた新しいスマホで、友達に電話をかけている。


プルルルル...


 中々出ない。


「あ、はい佐藤です」


 と思っていたら出た。

 俺がかけたのは佐藤和明さとう かずあきという友人。同じ大学に通っていて、よく一緒に酒を飲んでいたそうだ。


「えーと...無月です。あなたが友人だったと聞いて、電話をかけたんですけど...」


「蓮!?マジか!意識戻ったのかよ!えー!久しぶり!ちょっと今度一緒に居酒屋いこうぜ!俺奢るからよー!」


 聞こえてきたのは、男にしてはやけに高い声だった。

 佐藤は重要な情報を持っている可能性が非常に高い。ならば居酒屋は情報集に最適。


「分かった。俺はあと1週間で退院できるらしいから、火曜日は大丈夫か?」


「もちろん!いくらでも飲んでけ!」


 そうして通話は切れた。

 そして俺は残りの入院生活を孤独に過ごした。

 それと、事故のダメージが大きすぎて完治は不可能と言われ、超人的な筋力を持ってはいるものの、それを使えば四肢がまた動かなくなると言われた。

 つまり、激しい運動はするなということ。



居酒屋にて――


「なるほど...お前の事情は分かった。すまんがお前に彼女がいたのは知っていたが、交際期間も、相手の顔も名前も全く分からない」


 外れだった。


「だが、調べることはできる。俺の特技は地味な調査でな。ひたすらに情報に穴が無いか確認し、徹底的に調査する。最近は暇してたとこだ。いい暇つぶしを持ってきてくれてありがとうな」


「ありがとう」


 その後、俺と佐藤は、ゲロを吐くまで飲んだくれた。それは、どこか懐かしい感じがして、心地よく、気づけばあっという間に時間が過ぎてった。


「じゃあまた大学で会おうな」


「嗚呼」


 俺は上りゆく朝日の中、佐藤と別れた。

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