第4話 常識の違い
さて、なんとかお家に帰って来たわけですが、今日一日でこの世界が如何に危険なのかが分かった。
まさか痴女一人に抗えない程度の腕力しかなかったとは・・・正直ショックです。
そしてあの後、警官の山口さんや坂崎さんに護身の為、武装することを勧められた。
と言うか、普通は男性が外出する際は何かしらの武器を携帯するのが普通との事。
毎回手ぶらで出歩いていた身としてはそうなの?と言う驚きしかなかったが、その事を伝えたら何故か怒られてこちらの治安状況を教えられた。
なんでもこちらの治安については特に男性が少ない事もあり、女性が男性を襲うケースが結構な頻度であるとか。
その為、男性は女性に対して警戒心、と言うより嫌悪感や敵愾心と言った悪感情を持っている人がかなり多いらしい。
その所為で男性から女性に近付くことがほぼ無いので更に女性からのアプローチが増え、余計に女性嫌悪が広がると言う悪循環に陥っているのだとか。
そして女性側もそれ等の状況に耐えられなくなり、ブチ切れて襲ってしまったり、性癖を拗らせて犯罪に走る傾向があると言う。
前世の男女が逆転したような話で吃驚したが前世では法で締め付けた結果、男性の草食化が進んだのでこの世界の結果とは大分乖離していると思う。
それと山や森にも無暗に入らないようにと注意された。
なんでも人があまり踏み入らない場所には未発見のダンジョンが出来ていることがあり、そこから魔物が出てくることがあるそうだ。
中でも富士の樹海や奥多摩、白神山地、熊野古道や鞍馬山と言った前世で有名どころの山深い地域はこちらでは野生の魔物が跋扈する領域と化しているそうで、かなりの危険地帯として有名とのこと。
そんな感じで子供に言い聞かせるような感じで注意された。
その上でよくもまぁ、今まで無事だったものだと呆れられ、序でとばかりにお勧めの武器屋さんも紹介された。
『警察官が勧める武器屋』と言う、なんと言うか、物凄い違和感が拭えないパワーワードが頭に浮かんだ。
まぁ、そんな感じで色々と時間を取られた為、帰宅も日が暮れてからになってしまったが、改めて思った。
自衛出来る位には強くならねば、と。
と言う事で修仙行を選んだ俺は正しかったようです。
この世界が危険であることを犇々と体感した俺は真面目に修仙行に励むことにした。
でも、体力の限界に挑むような夜中のランニングはキッツい!
その後の強制空気椅子はもっと嫌ぁぁぁ!
せめて食事の時だけでも座らせてぇ~
そんな弱音を吐きつつも輪廻は修仙行に精を出す。
「おはようございます新さん」
そう言って声を掛けて来たのは武丸さんだった。
今日はお友達も一緒のようで、少し身構えてしまう。
「あぁ、おはよう武丸さん。
今日はお友達も一緒のようですね」
そう返すと武丸さんは少し驚きの表情を浮かべ、お友達は驚愕の表情に変わる。
なんで?返事しただけじゃん。
「え、えぇ、あ、ご紹介しますね。
こちらお友達の哀川さんです」
「初めまして、哀川 まどかです。
武丸さんと同じDT学部です。
これからもよろしくね」
そう言って手を出されたので反射的に握手をしながら自己紹介をする。
・・・グラサン、いや、Like or Love?
こちらはロングの髪で可愛いと言うより綺麗と言う言葉が似合う美人さんでした。
「初めまして、新 輪廻です。
お二人と同じくDT学部です。
よろしくお願いします。」
そう言って軽く握った手を振ると哀川さんの表情が笑顔で固まる。
なんか悪い事したか?
そう思い武丸さんの方を見ると、そちらの表情も笑顔で固まっていた。
「もしもーし」
声を掛けるが返事はない。
只の屍のようだ。
二人が動きそうにないので俺は手を離し、改めて書類に向き直るとうんうんと唸り始める。
「はぁ、履修科目の選択って面倒だな。
前は連れが居たから選択はお任せで楽だったのに・・・」
そんな事を呟いているとまたも声が掛かる。
「あ、新さん、何かお悩みですか?」
お、復活したか。
「そうですね、履修科目の選択に悩んでるんですよ」
「あぁ、なるほど」
「DT学部は校外実習が殆どじゃないですか?
出来るだけ校外実習を減らしたいんですけど、中々難しいんですよ。
何かいい方法ないですかね?」
ダメ元で聞いてみる。
あ、因みにDT学部が何の略称か昨日ようやくわかりましたよ。
DT学部はダンジョン探索学部の略でした。
こっちの世界の日本の成人は昔から18歳となっており、ダンジョン探索は死と隣り合わせのお仕事なので保護される側の未成年は就労できない法律となっています。
まぁ、当たり前っちゃ当たり前だよね。
未成年者が死んだら誰が責任取るんだって話だよ。
なのでダンジョン探索を始められる年齢も18なのでそれに合わせて学べるのも大学からとなったそうです。
俺、ダンジョン探索なんて危険な職業に就きたくないんですけど!
でも、虚空蔵菩薩様のお導きなので受け入れるしかないんです。
それに修仙行もなんだかんだで実戦経験を積むのも修行に含まれているっぽいし・・・
はぁ、死にたくない。
けど、この世界で生きて行く為には強くなることも必要だし、あぁー、もぅ!ホントにもぉー!
そんな感じで頭を掻き毟っていると、武丸さんが提案してくれる。
「あの、それでしたら、私達と同じカリキュラムにしませんか?」
「え?」
「私とまどかは同じ科目を履修する予定なので、よかったら一緒の科目を履修しませんか?
そうすれば試験の時でもお互い助け合う事が出来ると思うんですが・・・どうでしょう?」
「いいんですか?」
そう聞くと武丸氏の隣の哀川氏は首を縦にブンブン振って肯定してくれる。
「勿論ですよ!」
「あ、ありがとうございます!」
俺はそう言って頭を下げると履修科目の選択について二人と話し合う事になった。
そして何故か周りがざわつき始めるのだが、この時の俺は履修科目の選択に必死で周りの事なんか全く気にしていなかった。
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