シジュウカラをツピる場所

翔太郎

第1話 別に僕が鳥になりたい訳じゃないって

 ~ 5歳の頃 ~



「良いかい?羽音、これを使って木の上を眺めてごらん」




「お父さん、これなーに?」


渡されたのは不思議なゴーグル


僕は不思議に思って聞いてみる




「それはね、双眼鏡っていうんだ、それで除いてみな」




僕は言われた通りに双眼鏡っていう不思議なゴーグルで木の上を除いてみた






するとそこには







「…!!わあ」




たくさんの小鳥が止まっている


ツピツピツピツピと可愛い音を立てながら木の枝を行ったり来たりする白と黒が混ざった小鳥、背中は少し緑がかっているようだ






「凄い!!あんな遠くの小鳥がこんな近くで見れる!!!!!」



基本僕は幼い頃から冷めていた方だろう、けどここまで自分の感情がはしゃぐ物に出会ったのは初めてだと思う






「あの鳥はね、【シジュウカラ】って言うんだよ」



お父さんが僕の肩に手を当てて優しく教えてくれる




「シジュウカラ…!!」




「可愛いかい?」




「うん!!すっごく!!」




自分の子供がここまで喜んでくれた事に嬉しいのかお父さんも良い笑顔だ!!




シジュウカラ…可愛い…可愛いすぎる



今にでも抱き締めてもふもふしたい





「……⬆️て事を考えてるみたいだけど勝手に捕まえたら鳥獣保護法でお巡りさんだからね🚓」




「え!?」




流石親、僕の考えがお見通し……いや、それ以前にそれだけで逮捕なのか……世知辛いぜ





「でも……可愛いなあ」





うっとりした眼差しをみたお父さんが僕に微笑み誘ってくれる







「やってみるかい?【バードウォッチング】



シジュウカラ以外にもたくさんの可愛い鳥がたくさん見れるよ」






「バードウォッチング……!!」





カタカナばかりで幼い僕にはよくわからなかったけど、なんかとても楽しそうだから僕は元気いっぱいに頷く








「うん!!僕バードウォッチングやる!!!!!」







これが、僕のバードライフへの分岐点だった 








 ~ 11年後 ~




「……ぐへへへへへ、可愛いなぁメジロ」




5歳の頃の僕ヘ、きっとあの頃の君はとても純粋だっただろう



あれから11年、僕は高校1年生になりました




16歳になったこの僕【文瀬羽音(ふみせはおん)】は








- 鳥しか愛せない変態になりました -



白髪とぶかぶかのパーカーを纏った僕はよく女子に可愛いと言われるけど僕は眼中にない、今は鳥にしか恋ができないから



「お次は」


5歳の頃父から授かった双眼鏡を使い校門前の木をぐるぐる見渡す




よだれを垂らしながら





「おー?彼処にいるのはカワラヒワかなあ、嘴が太くてとてもたくましさを感じる」



独り言がぶつぶつ出てくる、よだれを垂らしながら





「!? 彼処にいるのはルリビキタキ!!


ばっ、ばかな!!この地域にはいないはず!?



まさか……愛しのこの僕に会いに来てくれたのか!? わざわざ渡って!!!!!


この!! 僕に!!!!!」



一人で恋にときめき、一人で感動している





よだれを垂らしながら



なるべく野鳥を警戒させないよう、あっちの茂みにホッピング!!


こっちの茂みにホッピング!!





ふふふ、どうだい?バードウォッチングで鍛えたこの瞬発力




そして!!




鳴き声が聞こえ反対方向の木へ双眼鏡を構える




「遠くを見つめ続け鍛え抜かれたこの視力!!!!!」





聞いた鳴き声はツツピー、ツツピーと可愛い声で泣いている





「はっ!? 君は……僕の初恋……」




白と黒のコントラスト、背中にかかった薄い緑


今にも抱き締めたくなるもふもふ感





「……びゃあああああああ!!!!!シジュウカラちゃあああああああん!!!!!」





感激のあまり泣き叫ぶ僕にびびる周りの生徒達





「(ねぇ、あいつキモい…キモくない?)」



「(ああ…キモいな)」




「(また鳥見てるし…絶対人の友達いないじゃん)」




「(顔は可愛いのに)」





ヒソヒソと悪口が聞こえるが気にしない





良いだろ





好きなんだから!!!!!




気を取り直して僕はまたシジュウカラを見上げる





「ああ、良いなあ♥️、可愛いなぁ♥️」




恐らく僕はうっとりしすぎて目がハートになっているだろう、それぐらい恋してる




そんなシジュウカラを見上げながら薄笑いを浮かべ呟く





「……シジュウカラになれたなあ」








そんな事をしながら時間が過ぎ家に帰宅



父と母は外国に行ってしまっているので今は僕と妹の二人暮らしだ




「ただいまあ」


と家のドアを開けると奥のリビングからドタドタと走ってくる音が






「このクソ兄ぃいいいいいい!!!!!!」




「ぐぼぉ!?」





妹が飛びゲリをしてきた。ヒクイドリより怖いケリだ





蹴られてうずくまる僕を見上げ妹はとてもカンカン怒っている






「またこんな時間まで鳥なんか見てたんでしょ!? 少しは家の手伝いしなさい!!!!!」




妹の名前は【文瀬琴(ふみせこと)】13歳の中学1年だ



僕と違い炊事洗濯全てできる万能な妹だ




毎回鳥ばかり見に行ってる僕にイライラしている様子




「ふっ…甘いな妹よ」



「え」




僕は蹴られたお腹を抱えながらよろよろと立ち上がる





「僕に家事なんてやらせたら……






丁度良い野鳥の出現時間に間に合わないでしょうがあああああああああ!!!!!」






「情けない事を熱く叫んでんじゃねええええええええええええええ!!!!!」





「ぐばあっ!!」





今度は頬に右ストレート、痛い






「私はねぇ!!速くお兄ちゃんに良いお嫁さんを見つけて貰っておしどり夫婦になって貰いたいの!! 鳥なんか見てたら一生女の人ができないじゃない!!!!」




「え……」



またよろよろと僕は立ち上がり妹に返答する






「おしどり夫婦って別にオシドリがおしどり夫婦って訳じゃないよ? オクサントッカエトッカエ」



「(ほんっっとクソうぜえなこの鳥マウント兄貴!!!!!)」





そんな僕に頭に来たのか琴は「もう知らない!!夕飯抜き!!」と自分の部屋に籠ってしまった




「あ…なんだよもう」




僕も渋々と階段を登り自分の部屋に戻る






「はぁ……」



でもまあ






「自分の部屋だけでも片付けておくか」




琴は外国に行った両親の代わりにいつも家の事をやってくれてるしなと



それが本人の前で言えないのは自分の悪い癖だ





反省しながら自分の部屋を片付け、琴が用意した夕飯を食べて自分が食べた分の食器を洗う





「………あいつ何も食べてないよな」




流石におにぎりぐらいは握れるので二つ握りラップをかけ、自分の部屋で寝ていた琴の隣にこっそり置いておいた





「……いつもありがとな」





なんでこれが本人の目の前で言えないのか、不器用すぎる





「はぁ…」



ため息をつきながら自分の部屋のドアを開ける


すると自分のベッドの上に1つの影が





「…………おん?」





影がはっきり見えてくる





その正体は1羽のドバトだ






「………なんでドバト?」





首を傾げる僕、すると突然、眠気が僕を急激に襲う






「う……何……?」




恐らく謎のドバトに睨まれたからだろう



僕はそのまま倒れて眠ってしまった







--------------------------------------------


 




「んんんんんんん!!!!!ワァンダホウ!!!!!ここは【霧ヶ湖、世界と世界を繋ぐコア】サ!!!!!」





「!?うわあああああ!!!!!」






目を覚ますと僕は手術台?みたいな所に乗せられていた。目の前にはあのドバト……てか





「気持ち悪!? 顔がドバトで体人間じゃん!!」





「oh!! ナーンセーンス!!この素晴らしき姿に文句をつけるとはガッッッデム!!!!!」




なんだそのしゃべり方




「……もしかしてドバトが元々【日本の鳥】じゃないから?💧」





ドバトは元々中東で家禽として飼われていたカワラバトが野生化した物である


けど実際中東の人ってそんな喋り方か!?知らん!!





「oh!!イエース!!さっすが僕の愛しの羽音君ダーヨ!!」





だからその喋り方やめろお!!




ドバト頭の男は胸に手を当てて自己紹介する



「申し遅れたーネ、私の名は【プロフェッサー、ドバートゥ】野鳥だけの世界【バールド】を作り上げ研究している管理人サ♪」





「バールド? 野鳥だけの世界…?」





何それ






すっげぇ魅力的じゃん✨✨✨✨






「!!いや!!でも!!」




首をぶんぶん横にふり僕は反抗する





「それは凄く行きたいけども、僕には大事な妹がいるんだ!! 琴をほっとくわけにはいかない!!!!!」




ちゃんと謝れてないし……



なんかようやくお兄ちゃんぽいことを言えた気がする


しかしプロフェッサードバートゥはとぼけたように





「あれれれれれ~?ホワッツ?けどおかしいねぇ、君の心の声と違うヨ~?」






ドバートゥは僕の耳元で語りかける





「うわ!?」





「本当~はぁ、【僕がいなくなれば琴も安心する、こんな駄目なお兄ちゃんなんかいない方が良い、何かあったらおじいちゃんとおばあちゃんが琴を面倒見てくれるだろう】


……てサ♪」






「!!こいつ……!!」





心の声が聞こえるのか!!……人の深層心理にはいってきて……!!





「後単純に僕は君が




大好きだ♥️♥️♥️」







「………は?」




寒気がやばい







「温めてあげるよ♥️♥️♥️」






「うおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!やめろおおおおおおお!!!!!!!鳩を抱くのは良いけど鳩の頭した人間に抱かれるのは嫌だああああああ!!!!!」





ドバトの雄の求婚はしつこいと言うけどあんた体男の人間じゃねーか!!





「ホーウ?なるほど?」







モフッ






「それじゃあモフモフになれば良いね」




全身が毛深くなった







「……だからきめえええええええ!!!!!」






「それでは、良い夢を…ネ♥️」






「いやあああああああああ!!!!!」







ああ…終わった、僕の人生終わった




目の前がドバト男の毛深いお腹で真っ暗になる




まさかドバトの姿をしたガチムチ博士に抱かれるなんて……僕のバードライフは終わりを告げた……





にしても結構温かいのが悔しい……







ごめんねぇ、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、これまで出会ってきた全ての野鳥……





…………





















「………ピ」





ピ?






「ツピ?」






ツピ?





なんだ?目の前が凄く鮮やかに見えるし体が縮んだようなってか視界が横に見えてなんか見にくい!!




後なんか凄く目の前の物がみんな大きく見えるんですけど!?





「oh!!グウウウウウレイト!!!!!


成功だア!!!!!」






なんか舞い踊り浮かれているプロフェッサードバートゥがいる



いや、それよりも!!






「ツピ!?ツピ!!ツピ!!ツピ!!」




まさか……







「ニヤリ」



こっち見てにやつくプロフェッサードバートゥ







「おめでとう🎉」





「今日から君は」











「【シジュウカラ】ダーヨ!!」







「!?ヂヂヂピーツピイイイイイイイイ!?」






僕……シジュウカラになっちゃった!?






 - 続く🕊️ -

































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