第2話:違和感って、あってもだいたい大したことない

 ガラガラガラ・・・

 楽なそうな依頼内容で内心るんるん♪ハッピーターイム!でいた。しかし、花園が見つかった?そんなものあるならとっくの昔に見つかっていそうだが...と思いつつ、少しセシリーに聞いてみる


「花園が見つかったのっていつ頃なんでしょう?大きいものならもっと早くに見つかってそうなもんですが」


 セシリーは記憶を呼び覚まそうと馬車の天井を少し眺めてから、


 「見つかったのは1月ほど前...だったかな?見つかってからしばらく放置されてたのですが、先週、冒険者さんの調査団が周囲の探索をされたそうですが、これと言って危険性は確認されなかったそうですよ」


 今までなかった物が突然現れる、そのような現象があるかないかと言うと...珍しいがあるにはある。だが、大抵発見されるものといえば不気味な像や、奇妙な祭壇などの人工物である。大体「あっ、頭のおかしいやつがなんか作って置いてったわ」程度の認識で雑に撤去される。ギルドも流石に初めての事案だろう、だからこそ冒険者に調査依頼を出して確認させる必要があったわけだ。今日の依頼って俺が再調査する依頼も含まれてるとかないよな?!俺は依頼内容以上のことはしねぇからな!そんなこんなことを考えていると


 「皆さん、森につきやしたぜ」


 どうやら色々考えてるうちに別れの森に着いたらしい。まぁ冒険者が一度調査してるし大丈夫だろ、うん。なんかあったら冒険者の調査不足って報告したら・・・いやそれはそれで別の火種が飛んできそうだから余計なこと言うのはやめておこう。


 「セシリーさん、森の入り口から花園への道はご存知でしょうか?」


 そう聞くと、セシリーは一枚の紙を渡してきて、


 「ギルドの方に行き方を教えていただきました。この紙の参考に移動していただければよろしいかと思います。」


 護衛依頼を出すはいいけど、依頼主側で全然情報を調べずこっちが全部用意してると思い込んでいる依頼主モンスターがたまにいる。

 それに比べて、さすが貴族のお嬢様、事前準備は完璧だ。と感心しつつ受け取った紙の内容を確認す・・・?


 「セシリーさん、これだれが書いたか分かりますか?」


 セシリーにもらった紙を見せる。セシリーは紙の内容を見た瞬間に青ざめた、と思い気や瞬時に顔を真っ赤にして


 「すみません!ギルド職員の方にもらった紙と間違えて持ってきてしまったようです・・・」


 よっぽど失敗が恥ずかしかったのだろう。いつ頭の上から蒸気が出てきてもおかしくない。そのやり取りを見てたシエラが何が起きているか気になってこっちに来た、すると


 「これね!サーチスさん!シエラが描いたんだよ!」


 自信満々に答えるシエラ。そうかそうか、おじさんを慕ってくれているようでうれしいよ。でも今じゃないタイミングで知ったならもっと嬉しかったかな・・・。まあ、ここで立ち往生していても仕方がない。


 「どうしましょうか?今から引き返しても今日中に花園に行って、見て、帰ってこれるかは分からないですし、別の日にしますか。」


 2人で相談して悩んでいる、貴族のお嬢様であるものおそらくそこまで暇ではないのであろう。子供のうちから自由が少ないのは、少し同情してしまう。


「まあ、あまりお勧めはしませんが、私がマッピングしながら探索してもよいです。ただ、本当に花園につくかもわからないですし危険に巻き込む可能性も・・・」

 「シエラも探索したい!!マッピング?しながら行こ!!」


 マズかった。同情して別の案を出してしまった。「探索」というワードが好奇心旺盛ガールの急所を突いてしまったらしい。目をキラキラさせながらこっちを見ている。セシリーさんもそれならいいかって顔しないでください。自分たちに危険があったら困ることを自覚してくれ。


 「じゃあそうしましょうか。ただ危ないと思ったらすぐに帰りますよ。御者さん、遅くても6時頃には戻るようにしますのでそのつもりでお願いします。」


 御者は「あいよ」と言い、近くの村で待ってると告げると馬車を動かしだした。


 「はぁ」


 思わずため息をつく。あのまま帰っていれば半日くらいは休暇になっていたのではないだろうかと思うととても残念だ。しかし、あそこまで嬉しそうにする2人を見るとそれはそれでよかったとも思う。普段我儘なんて言えないであろう。せめてやりたいことがあるときくらいは我儘でいてもらいたい。

 

「それじゃあ出発しますよ!言うこと聞かなかったら帰りますからね!」

 

 2人を連れて、森の中へ入っていく。頼むからさっさと見つかってくれよ、花園よ・・・


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勇者の苦労、皆知らず @miratoru

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