休日のひと
ヨートロー
第1話 つまりクソだということだ
人生はクソだ。
ただひたすらに垂れ流し、死というトイレに流すのだ。
だから俺はせっかくの休日に無意味に動画を聞き流し、飯もまともに食わずに時間を喰いつぶす。
明日から毎日残業だとか、ちょっと買い物と付き合いで金を溶かしたから切り詰めなきゃとか、結局のところ死んでしまえばどうでもいいことばかり考える。
だれかぶっ殺してくんねぇかなと、他力本願なくだらない祈りを捧げている。
しかも痛くないような苦しくないような方法で気づかないうちに殺してほしいとまで。
ここは飴の国ではないので銃殺事件はそうそう起きないし、通り魔的な事件も年間で数度あるかないかという程度。
消えていく。
若かった自分を徐々に失っていく。
やりたいこと。
挑戦したいこと。
夢。
それなりにあった。
ただ、叶えようという気力がない。
こんな俺のような人間に貴重な時間を費やさないでほしい。
関わらないでほしい。
誰かが見た俺は、俺が必死に取り繕った知らない俺だ。
本当はクソで、ごみで、愚図で、既に詰んでいる人間だ。
友達はいい。
そんな俺を受け入れてくれる。
そんな俺だと知って友達でいてくれる。
だから最大限の誠意を見せたいと思う。
彼らには彼らの人生があって、俺はその主軸に深く関わっているわけではないから、最悪俺がいなくなっても多少悲しむ程度の傷で済む。
より深い関係性はだめだ。
俺は誰かと共に過ごすことに耐えられないし、きっと相手も耐え切れなくなる。
常に嘘を吐き、相手の欲しい虚像で身を固める。
そんなの絶対に不可能だ。
そんな状態に耐え抜くことはできない。
だから嫌なのだ。
そういえば、窓の外では不思議なことが起きている。
窓から見える少し離れた山岳のうえに巨大な円盤が浮かんでいるのが見えるだろうか。
山岳よりもはるかに大きく、そして遠目からでも人工的な物体だと見てわかる。
朝起きてカーテンを開けたときにはすでにあった。
これはいわゆる、UFOというやつだろうか。
一度携帯から地震警報が鳴ったが、逃げるにしてもどこに行けばいいというのだろうか。
明日仕事に行きたくないし、あの物体から破壊光線が出るのであればいち早く浴びたいので残ることにした。
防災グッズの用意はある程度してあったが、こんな事態を想定したものではないので取っておくことにしよう。
来世とかに。
外は当然ながら騒がしい。
近くで見ようとする者、それを止めようとする警察。
誘導に従って、あるいは自己判断で町を離れていく者。
多分、俺や君のようにそれらを傍観してなにも行動を起こさずに部屋にこもっている者も多数いるだろう。
人生は何が起きるかわからないとは言うが、これはさすがに限度がある気がする。
しかし、だからなんだっていうのだろうか。
どうでもいい。
UFOなんぞ関係なしに俺の人生はクソだ。
変わりはしない。
逃げても、その先にあるのは死ぬまでただ無意味に生き続けることだ。
自殺する勇気がないだけのごみが絶好の機会を得た。
人生において最高の瞬間じゃないか。
君はどうする?
もちろん止めはしないさ。
なんなら防災グッズは君にあげたっていい。
通帳はだめだ。実家にあるし、親にあげたいから。
そうか、なにもいらないか。
でも行くんだね。
そうだね。
俺の眼には、他人には夢と希望があって祝福されて当然のように見える。
俺は自分のことは見えないから、夢も希望もない。
君は当然俺にとって他人な訳だから、夢と希望に溢れているように見える。
自信をもってくれ。
君はがんばれ。
俺はがんばらない。
じゃあね。
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