【ラノベ風少女小説】星降る教室の秘密結社 ~五つの魂の物語~
藍埜佑(あいのたすく)
ラノベ風少女小説】星降る教室の秘密結社 ~五つの魂の物語~
## プロローグ:運命の交差点
薄暗い教室。窓から差し込む夕日が、五人の少女たちの影を床に長く伸ばしていた。黄昏時の教室には、まだ誰も気づいていない何かが宿っていた。これから始まる物語の前触れのような、そんな空気が漂っていた。
放課後のこの時間、通常なら誰もいないはずの教室に、偶然か必然か、五人の少女たちが集まっていた。彼女たちは互いをほとんど知らない。同じ学年ではあるが、クラスも違えば、所属する部活動も異なる。そんな彼女たちがこの場所で出会うことになったのは、ひとえに「補習」という共通の運命によるものだった。しかし補習の担当教師は急な会議で不在。「一時間待って、それでも来なければ解散」というメッセージだけが黒板に残されていた。
窓際の席に腰掛ける黒髪の少女は、深紅のネイルに映る夕日をじっと見つめていた。その隣では、淡いラベンダー色の髪を持つ少女が黙って本を読んでいる。教室の中央では、鮮やかなピンクのスクランチーで結んだポニーテールの少女が落ち着きなく足を揺らし、その斜め後ろでは、暗い色のパーカーを深く被った少女が俯き加減で爪を噛んでいた。そして一番後ろの席では、厚い眼鏡をかけた少女がスマートフォンを熱心に操作していた。
教室の古い時計がカチカチと音を立てる。誰も話さない沈黙の中で、一人の少女が立ち上がった。
***
## 第一章:出会いの時
最初に声を上げたのは、深紅のネイルをした黒髪の少女だった。彼女は突然立ち上がると、右手を顔の前に掲げ、左手を腰に当て、どこか演劇的なポーズを取った。
「我が名は鈴木陽炎。この世界の闇の深淵を覗き込みし者なり。汝らとの邂逅は運命の女神が紡ぎし糸の必然。今宵、我らは星の導きの下に集いしのだ」
彼女の声は低く、どこか儀式的な響きを持っていた。教室に集まっていた他の少女たちは、一様に驚いたように彼女を見つめた。しかし鈴木陽炎と名乗った少女は、そんな視線にも動じることなく、黒いレースの付いた制服のスカートをひらめかせながら、ゆっくりと教室の中央へと歩み出た。
彼女の首元には銀色の鍵のペンダントが光り、左耳には小さな十字架のピアスが揺れていた。唇には暗めのボルドーカラーの口紅が塗られ、中学二年生とは思えない妖艶さを醸し出していた。
一瞬の沈黙の後、ラベンダーカラーの髪の少女が静かに閉じた本を机に置き、感情を一切表に出さない表情で立ち上がった。
「佐藤空。転校生。よろしく」
彼女の声は小さく、平坦だった。感情の起伏が全くないその声色は、まるで機械が話しているかのようだった。佐藤空の制服はきちんと整えられ、一糸乱れぬ様子だったが、よく見れば襟元に小さな星型のブローチが付けられていた。そのシンプルな銀のブローチだけが、彼女の個性を表すかのようだった。
佐藤空が再び静かに座ると、次の瞬間、教室に爆発が起きたかのような勢いで、ポニーテールの少女が飛び上がった。
「うわぁぁぁ!新しい友達だー!超嬉しい!私、田中花っていうの!空ちゃんも陽炎ちゃんも、友達になってくれるよね?ねえねえ、なってくれるよね?絶対だよ!約束だよ!」
田中花は両手を大きく広げながら叫び、その声は教室中に響き渡った。彼女の制服には、様々な色とりどりのバッジやキーホルダーが付けられ、まるで彼女自身の明るい性格を表すかのように、キラキラと光を反射していた。頬には健康的な血色が浮かび、唇にはピンク色のグロスが塗られていた。
田中花のエネルギッシュな自己紹介に、教室の後ろの方から小さな物音がした。全員がその方向を向くと、パーカーを被った少女が身をすくめるようにして立ち上がった。
「...私なんかと友達になりたいなんて...思わないよね...どうせすぐに嫌われちゃうんだし...山本雫...覚えなくていいよ...忘れられるのに慣れてるから...」
彼女の声は震え、言葉の合間には長い沈黙が挟まれた。山本雫の瞳は大きく、澄んだ水色だったが、まるで常に涙を浮かべているかのように潤んでいた。髪は黒く、不揃いに切られたようで、額に掛かった前髪が彼女の表情を隠していた。彼女の手首には何本ものブレスレットが重ねられ、チラリと見える素肌には薄いメイクで隠された傷跡らしきものが見え隠れしていた。
山本雫の言葉が教室に重たい空気を生み出したそのとき、後ろの席から明るい声が響いた。
「あっ、みんなこんにちは!小林理子です!今期のアニメ『異世界転生した私が最強魔法使いになったら周りの人がみんな私を崇拝し始めた件について』見てる人いる?いやー、第3話の展開マジですごくないですか?主人公のさくらちゃんが魔法陣を発動させるシーンの作画、めちゃくちゃ気合入ってましたよね!」
小林理子は厚い眼鏡の奥で輝く目を見せながら話し出した。彼女の制服の下には、アニメキャラクターのプリントが入ったTシャツが覗いていた。首にはアニメのキャラクターをモチーフにしたチョーカーが巻かれ、髪には小さなクマの形をしたヘアピンが複数留められていた。
鈴木陽炎は小林理子の言葉を聞くと、急に姿勢を正し、右目を手で覆うようなポーズを取った。
「汝、その禁忌の言葉...『異世界転生』...我が闇の瞳は既にその作品の真髄を見通している。だが、真の魔術師とは何か...それは己の内なる闇と対峙し得る者のみが知り得る秘匿の知識なのだ...」
鈴木陽炎はさらに声を低くし、まるで何か重大な秘密を語るかのように畳みかけた。
「しかしながら、汝の言う『さくらちゃん』の魔法陣発動のシーンは確かに見事であった。特に彼女の瞳に映る炎の反射が、内なる決意を表すようで見事だったのだ。我もまた、そのシーンでは思わず心の中で呪文を唱えずにはいられなかった...」
佐藤空は、そんな鈴木陽炎と小林理子のやり取りを無表情で見つめながら、小さく口を開いた。
「アニメ。見ない。小説原作。読んだ」
その短い言葉に、小林理子は目を輝かせた。
「えっ!?空ちゃん、原作読んでるの!?すごい!私、アニメから入ったから原作はまだなんだよね。どうだった?やっぱりアニメとは違う展開があるの?教えて教えて!」
小林理子は勢いよく佐藤空の元へと駆け寄った。その様子を見た田中花も、両手を挙げながら飛び上がった。
「わあ!理子ちゃんアニメ好きなんだー!私も大好き!でもその作品はまだ見てないの!今度一緒に見よう!ね!ね!空ちゃんも一緒に見よう!陽炎ちゃんも!雫ちゃんも!みんなで見たら絶対楽しいよ!」
田中花は教室中を駆け回りながら、一人一人の肩に触れては、まるで電流のような活力を伝えているようだった。その勢いに、山本雫は小さく身を縮めた。
「...私なんかが一緒にいたら...きっと空気が重くなるだけ...みんな楽しめなくなるよ...」
山本雫の言葉に、教室はふたたび静まり返った。しかし、小林理子はそれを聞くとすぐに山本雫の方へと歩み寄り、優しい笑顔を向けた。
「いやいや、雫ちゃん、そんなことないよ!むしろ私はね、『憂鬱な少女は世界を救う』っていうライトノベルの主人公、霧島しずくちゃんに雫ちゃんそっくりだなって思ってたの!あのキャラめっちゃ人気なんだよ!」
小林理子は熱心に話し続けた。
「あのね、霧島しずくちゃんって最初は全然自信なくて、いつも『私なんか』って言うんだけど、実は誰よりも繊細で、誰よりも深く物事を考えられる子なの。だから、最後は仲間たちを導いて世界を救うんだよ!」
鈴木陽炎はその会話を聞きながら、静かに山本雫に近づいていった。
「汝の言葉には深き痛みが宿る。されど、闇の中にこそ真の輝きは宿るもの。我もまた、内なる闇と日々対話せし身。汝の闇もまた、いつか光へと変わる時が来るであろう...」
鈴木陽炎はそう言うと、山本雫の肩に静かに手を置いた。その瞬間、山本雫の目に小さな驚きの色が浮かんだ。
佐藤空は言葉こそ発さなかったが、わずかに近づいて来ると、ポケットから小さな星型の飴を取り出し、山本雫に差し出した。山本雫は戸惑いながらもそれを受け取り、かすかに頬を紅潮させた。
田中花はそれを見て、再び飛び跳ねるように喜んだ。
「見て見て!もう私たち友達になってる!ねえ、これからも毎日一緒に話そうよ!教室でご飯食べるの、どう?私、お弁当作るの得意なんだー!みんなに作ってあげる!」
小林理子はそれを聞くと目を輝かせた。
「わあ、それ超いいね!私、お母さんが作ってくれるキャラ弁持ってくるからトレードしよう!あと、アニメの話もいっぱいしたいな。みんな好きなアニメとか漫画とか、教えてほしいな」
鈴木陽炎は腕を組んで、深く頷いた。
「我らが集いし『午後の秘密結社』の設立を、ここに宣言する。これより我らは共に闇を切り裂き、新たなる世界の扉を開くのだ...」
佐藤空はそのやり取りを聞きながら、ほんの少し、口角を上げた。山本雫も、パーカーの陰から小さな期待の色を目に宿した。
そして五人は、薄暗い教室で互いを見つめ合った。窓の外では、夕焼けが徐々に深まり、教室内に温かな光を投げかけていた。それは彼女たちの新たな始まりを祝福するかのようだった。
***
## 第二章:雨の教室
次の日の放課後、教室の窓を雨粒が叩く音が静かに響いていた。昨日話した約束通り、五人の少女たちは同じ教室に集まっていた。彼女たちは机を円形に並べ直し、それぞれが持ち寄ったお菓子や飲み物を中央に置いていた。
雨の音を聞きながら、佐藤空がふと口を開いた。
「雨。嫌い」
その短い言葉は、無表情のまま発せられた。しかし、彼女の目には何か深い感情が浮かんでいるように見えた。
鈴木陽炎は窓際に立ち、雨に濡れる校庭を見つめながら問いかけた。
「汝、それは何故だ?雨とは、天の涙。この世界の罪を浄化せんとする神々の慈悲。我はむしろ、その滴の一つ一つに宿りし魂の囁きを聞くのが好きなのだが...」
鈴木陽炎は右手を窓ガラスに押し当て、流れる雨粒を指でなぞった。その仕草は、まるで雨と対話しているかのようだった。
田中花は机の上のクッキーを頬張りながら、元気よく声を上げた。
「私も雨好き!だって家に帰る時、お母さんが傘を持ってきてくれるんだもん!それに、雨の音って超リラックスするじゃん!ねえ、理子ちゃんはどう?」
田中花の顔には笑顔が溢れ、その眼差しは潤んでいるようにも見えた。今日の彼女は髪を二つに分けて結び、それぞれに虹色のリボンを付けていた。その明るい色彩は、曇り空の下でも花のように輝いていた。
小林理子は手に持っていたスマートフォンの画面から目を上げ、少し考え込むように答えた。
「雨かぁ...『雨と傘と恋文と』っていうゲームでさ、雨の中で主人公が傘を忘れちゃって、ヒロインの七瀬さんが傘に入れてくれるんだよね。あのシーン、マジで泣けるんだよ...ていうか、プレイしたことある人いる?」
小林理子は目を輝かせながら周りを見回した。彼女の髪には今日も動物型のヘアピンが刺さっていたが、昨日のクマとは違い、今日はウサギの形だった。首元には「ゲーマーガール」と書かれたネックレスが揺れていた。
山本雫は静かに窓の方を見つめながら、震える声で言った。
「...私は...雨が好きかも...だって...みんな暗い顔をするから...普段の私と...同じになれる...そういう時だけ...少し安心できるの...」
山本雫の言葉には、どこか切なさが含まれていた。今日も彼女は大きめのパーカーを羽織っていたが、その色は昨日の黒とは違い、深い青だった。その色は、まるで今の雨空を映し出しているかのようだった。
鈴木陽炎は山本雫の言葉を聞くと、深くうなずいた。
「汝の言葉には深き真理が宿る。闇は時に光よりも優しき存在。我もまた、漆黒の闇に身を委ねる時こそ、己の魂の本質に触れ得るのだ」
鈴木陽炎は右目を手で覆いながら語った。今日の彼女は、昨日よりもさらに濃いメイクを施していた。アイシャドウは深紅色でシャープに引かれ、唇は漆黒のリップスティックで彩られていた。その姿は、まるで異世界から来た魔女のようだった。
佐藤空は、そんな二人の言葉を聞いて、首を傾げた。
「理解できない。感情の表現。無駄」
佐藤空の言葉は、相変わらず短く、感情を排除したものだった。しかし、その目には小さな疑問の色が浮かんでいるようにも見えた。彼女の制服はきちんと整えられ、一糸乱れぬ様子だったが、今日は首元のブローチが昨日の星から月の形に変わっていた。
田中花はそれを聞くと、勢いよく立ち上がった。
「えぇー!そんなことないよ!感情って大事だよ!私はね、感じたことをそのまま言葉にしないと気が済まないの!だって、抑え込んだら爆発しちゃうじゃん!ねえ、陽炎ちゃんもそう思うでしょ?」
田中花は、テーブルの上のドーナツを手に取りながら話し続けた。彼女の爪には、今日もカラフルなネイルアートが施されていた。右手の爪には小さな虹、左手の爪には様々な色の水玉模様が描かれていた。
鈴木陽炎は深く考え込むような表情を見せた後、ゆっくりと口を開いた。
「感情とは...魂の炎。抑え込めば暴走し、放てば周囲を焼き尽くす。されど、その狭間にこそ真の力が宿る。我は常に己の内なる混沌と対話し、その均衡を保つことで未知なる力を引き出しているのだ...」
鈴木陽炎はそう言うと、ポケットから小さなペンダントを取り出した。それは黒い石をあしらった、複雑な模様の付いたものだった。
「このアミュレットは、我が内なる闇と光のバランスを司るもの。感情の均衡を保つ秘宝なのだ...」
小林理子はそれを見て、目を輝かせた。
「わあ、それってまさに『魔導の守護者』っていうゲームに出てくるダーククリスタルみたい!あれは主人公の感情を増幅させる力があって、怒りを力に変えるんだよね。でも使いすぎると闇に飲まれちゃうんだよね」
山本雫は、そんな会話を聞きながら小さく呟いた。
「...私の感情は...いつも...暴走ばかり...誰かを傷つけるだけ...だから...消えてしまいたいって...よく思う...」
その言葉に、教室は一瞬静まり返った。雨の音だけが、窓を叩き続けていた。
田中花は、その沈黙を破るように山本雫の隣に駆け寄り、突然彼女を抱きしめた。
「雫ちゃん、そんなこと言わないで!あなたの感情、素敵だよ。だって、そんなに深く感じられるんだもん。私なんて、すぐ忘れちゃうもん。でも雫ちゃんは、いつまでも心に留めておける。それってすごいことだよ!」
田中花の抱擁に、山本雫は最初驚いたように身体を硬くしたが、やがてゆっくりと力が抜けていくのを感じた。
佐藤空は、そんな二人を見つめながら、ポケットからハンカチを取り出して山本雫に差し出した。それはシンプルな白いハンカチだったが、端には小さな花の刺繍が施されていた。
「使って。返さなくていい」
佐藤空の表情は変わらなかったが、その声には、わずかに柔らかさが含まれているようにも聞こえた。
鈴木陽炎は、そんな光景を見つめながら、静かに口を開いた。
「汝の涙には価値がある。それは魂の浄化の証。恐れるな、その感情の奔流を。我らはここに在り、汝の側に立つ」
鈴木陽炎のいつもの大仰な言い回しにも、今は不思議な説得力があった。彼女は山本雫に近づくと、先ほど見せたペンダントを彼女の手に置いた。
「これを持つがよい。一時の貸与ではあるが、汝の心が安らぐまで...」
山本雫はそのペンダントを見つめ、かすかに頬を赤らめた。
「...ありがとう...みんな...」
小林理子は、そんな光景を見つめながら突然思いついたように声を上げた。
「あ、そうだ!みんなでシェアしたい曲とかない?私、雨の日にぴったりの曲、いっぱい知ってるんだ。特に『雨音のワルツ』ってゲームの主題歌、本当に心に染みるんだよ」
彼女はスマートフォンを取り出すと、小さなポータブルスピーカーに接続した。やがて、静かなピアノの旋律が教室に流れ始めた。その音色は、窓を打つ雨の音と不思議な調和を成していた。
五人の少女たちは、それぞれの場所でその音楽に耳を傾けた。窓際では鈴木陽炎が目を閉じて音に身を委ね、机の上では田中花が小さく体を揺らし、小林理子はスマートフォンでリズムを取っていた。山本雫は静かに鈴木陽炎のペンダントを握りしめ、佐藤空はわずかに頭を動かしていた。
教室の窓からは、雨粒が滑り落ちていた。しかし、その雫の向こうに、かすかに晴れ間が見え始めていた。
***
## 第三章:夕暮れの告白
数日後、夕暮れ時の教室。窓から差し込むオレンジ色の光が、教室内を温かく染めていた。五人の少女たちは今日も放課後の時間を共に過ごしていた。この数日で、彼女たちの間には不思議な絆が生まれ始めていた。
小林理子は、いつものアニメやゲームの話題とは違う、何か深いことを考えているような表情で、突然口を開いた。
「あのさ、みんなに聞きたいことがあるんだけど...人って、なんのために生きてると思う?最近プレイした『存在の証明 -Evidence of Being-』っていうゲームがあってさ、そこで主人公が「生きる意味がわからない」って言うシーンがあって...なんか考えちゃって」
小林理子の言葉に、教室に一瞬の沈黙が訪れた。彼女は今日もアニメキャラクターがプリントされたシャツを着ていたが、その表情は珍しく真剣だった。首元には「深淵を覗く者」と書かれたチョーカーが見えた。
佐藤空は、窓際の席から小さな声で答えた。
「生きる。それだけ。理由はない」
彼女の言葉は短く、いつものように感情がないように聞こえた。しかし、夕日に照らされた彼女の横顔には、何か言葉にできない感情が浮かんでいるようにも見えた。今日の彼女は髪を少しだけ結び上げ、小さなシルバーのヘアクリップで留めていた。
田中花はテーブルに広げられていたお菓子の中からクッキーを手に取りながら、明るい声で答えた。
「えっ、そんな難しいこと急に言われても...でもね、私は楽しいから生きてるよ!友達と話すの楽しいし、好きな音楽聴くの楽しいし、美味しいもの食べるの楽しい!小さな幸せがいっぱいあるから、生きてるんだと思う!」
田中花の言葉には、いつもの彼女らしい素直さがあった。今日の彼女はピンクのチュールがついたスカートを履き、胸元にはキラキラと光るブローチを付けていた。頬にはほんのりとピンクのチークが施され、唇はグロスで艶やかに輝いていた。
「フランスの哲学者アルベール・カミュは『人生に意味を見出す唯一の方法は、それを愛することだ』って言ったんだって。私、この前ネットで見つけたんだ。それってすごく素敵だと思わない?」
田中花の意外な言葉に、他の四人は少し驚いたような表情を見せた。
鈴木陽炎は、深く考え込むような表情で、ゆっくりと窓際から歩み出ながら話し始めた。
「生きる意味...それは永遠の問いなり。我々はこの世界に投げ出され、答えなき謎を背負わされし存在。されど、その答えを求める旅路こそが、生きることの本質なのではないか。我は常に黄昏の彼方にある真実を追い求め続ける...それが我が生の証なり」
鈴木陽炎の言葉には、いつもの仰々しさの中にも、何か真摯なものが感じられた。彼女は今日、通常の制服の上に黒いレースのケープを羽織り、首元には銀の十字架のペンダントを下げていた。髪は複雑に編み込まれ、その先端には小さな赤い飾りが付けられていた。
「ドイツの哲学者ニーチェはかつて言った。『自分の生きる理由を知る者は、ほとんどあらゆる〈いかに〉に耐えられる』と。我もまた、己の存在理由を探し求める旅の途上にあるのだ...」
鈴木陽炎が語り終えると、山本雫が小さな声で言葉を発した。
「...私には...生きる意味なんて...ないと思う...でも...死ぬ勇気もない...だから...ただ...流されてるだけ...」
山本雫の声は震え、まるで消えそうな炎のようだった。しかし、それでも彼女は言葉を続けた。
「...でも...最近は...少しだけ...みんなに会える時間が...楽しみだったりする...」
山本雫の素直な告白に、教室に柔らかな雰囲気が流れた。彼女は今日もパーカーを着ていたが、いつもよりも明るい色のグレーで、袖口には小さな星の刺繍が施されていた。髪も少しだけきちんと整えられ、顔を覆う前髪も少し短くなっていた。
小林理子は山本雫の言葉を聞くと、急に身を乗り出した。
「雫ちゃん...!そういえば『終わりなき空の果てに』っていうゲームでも似たようなセリフがあったけど...あのゲームはね、最後に主人公が「意味なんてなくたっていい、ただ、誰かと繋がっていることが嬉しい」って気づくんだよね...」
小林理子は熱心に話しながら、山本雫の方へと歩み寄った。
「私ね、そのシーンでめちゃくちゃ泣いたんだ。だって、人生の答えって案外シンプルなのかもしれないって思ったから。難しい哲学とか、壮大な使命とかじゃなくて、ただ、誰かと一緒にいる時間を大切にすることなのかなって」
小林理子の言葉に、山本雫は小さく頷いた。
「...繋がり...私にも...そんなもの...あるのかな...」
山本雫の問いかけに、田中花は椅子から飛び上がるように立ち上がった。
「あるよ!今、私たちと繋がってるじゃん!雫ちゃんがいないと、この輪は完成しないんだよ!」
田中花は勢いよく山本雫の元へと駆け寄り、その手を取った。
「ね、わかる?私たち五人、それぞれ全然違うけど、でもなんか不思議とぴったりハマる感じがするでしょ?それって運命みたいなものじゃない?」
その言葉を聞きながら、山本雫の目には小さな涙が光った。彼女は急いでそれを拭おうとしたが、田中花はそれを優しく止めた。
「泣いていいんだよ。感情って、出した方が楽になるんだよ。私なんて、悲しい映画見てるとわんわん泣いちゃうもん!」
田中花は笑いながら言った。その明るい笑顔に、山本雫も小さく微笑んだ。
鈴木陽炎は二人の様子を見ながら、静かに近づいていった。
「汝の涙...それは魂の浄化の証。恐れることなかれ。我らは皆、同じ星の下に生まれし魂の破片なのだから」
彼女は山本雫の肩に手を置き、静かに語りかけた。その言葉には、いつもの大げささの中にも真実味があった。
佐藤空もまた、静かに立ち上がり、五人の輪の中に加わった。彼女は言葉こそ発さなかったが、わずかに頷くその仕草には、確かな同意が示されていた。
夕日は徐々に沈み、教室内はさらに赤く染まっていった。五人の少女たちの影は、床に長く伸び、互いに重なり合っていた。
小林理子は、そんな光景を見つめながら、スマートフォンを取り出した。
「ねえ、この瞬間、写真に残さない?なんか、すごく特別な気がするから」
彼女の提案に、みんなが頷いた。山本雫だけが少し躊躇したが、田中花は彼女の手を引いて輪の中に入れた。
「大丈夫、絶対素敵な写真になるよ!」
小林理子はスマートフォンをセットし、自撮りモードで五人を画面に収めた。
「じゃあ、せーの!」
シャッター音が鳴り、一瞬の光が五人を照らした。画面には、夕日を背景に笑顔の五人が映っていた。田中花は大きく笑い、小林理子は平和サインを出し、鈴木陽炎は腕を組んでミステリアスな表情を浮かべていた。佐藤空は表情こそ変わらなかったが、かすかに口角が上がっていた。そして山本雫は、いつもの暗い表情とは違う、小さな微笑みを浮かべていた。
小林理子はその写真を見て、満足げに頷いた。
「うん、最高の一枚だね!みんなに送るね」
彼女は画像を共有し、それぞれのスマートフォンに通知が届いた。山本雫は自分のスマートフォンに届いた写真を見つめ、小さくつぶやいた。
「...私...笑ってる...」
その言葉には、驚きと小さな喜びが込められていた。
鈴木陽炎は窓の外を見つめながら、静かに言った。
「時は流れ、光は移ろう。されど、この瞬間は永遠に我らの魂に刻まれるであろう...」
佐藤空は、そんな彼女の言葉を聞きながら、ポケットから何かを取り出した。それは五つの小さな星型のキーホルダーだった。
「みんなに。お揃い」
佐藤空の突然の行動に、全員が驚いたような表情を見せた。彼女はそれぞれに違う色の星?田中花にはピンク、小林理子には緑、鈴木陽炎には赤、山本雫には青、そして自分には紫?を手渡した。
田中花は目を輝かせながら、そのキーホルダーを見つめた。
「わぁ!可愛い!空ちゃんありがとう!これでみんな繋がってるね!」
小林理子は笑いながら言った。
「まるでゲームの中の『絆のアイテム』みたいだね!仲間の証だよ」
鈴木陽炎は赤い星を手に取り、静かに頷いた。
「我らの盟約の証...この星の導きの下、我らは共に歩むのだ...」
山本雫は青い星を両手で大事そうに包み込み、小さく呟いた。
「...ありがとう...大切にする...」
佐藤空は何も言わなかったが、彼女の目には、普段見せない柔らかな光が宿っていた。
教室の窓からは、最後の夕日が消えようとしていた。しかし、五人の心の中では、新しい何かが静かに灯り始めていた。
***
## 第四章:星空の下で
週末の夜、学校の屋上。天文部が開催した星空観察会が終わり、ほとんどの生徒たちはすでに帰宅していた。しかし、五人の少女たちだけは残り、広がる星空の下、毛布を敷いて横になっていた。
夜空には無数の星が瞬き、天の川がかすかに浮かび上がっていた。都会の空としては珍しく、今夜は星がよく見えた。
小林理子は星空を見上げながら、突然思いついたように話し始めた。
「あ、星が出てきた!『星の海を旅する少女』っていうゲームでさ、星座にまつわる伝説がいっぱい出てくるんだけど...みんな、好きな星座とかある?」
小林理子は今夜、髪を下ろして星型のヘアピンを付け、普段よりも少し落ち着いた雰囲気を漂わせていた。彼女の横には大きなバッグが置かれ、その中からはスナック菓子やペットボトルが覗いていた。
鈴木陽炎は、夜空に向かって右手を掲げながら答えた。
「我が守護星座は蠍座。毒を持ちながらも、己の尾で自らを刺す覚悟を持つ孤高の存在...まさに我が魂の象徴なり」
鈴木陽炎は今夜、学校の制服ではなく、黒いゴシックロリータ風のドレスに身を包んでいた。首元にはチョーカーが巻かれ、手首には何本もブレスレットが揺れていた。月明かりを浴びた彼女の姿は、まるで物語から飛び出してきた魔女のようだった。
田中花は両手を広げて星空に向かって叫んだ。
「私はねー、太陽みたいにパーッと明るい獅子座!お父さんがね、私が生まれた時『うちの子は太陽みたいに明るく育つといいな』って言ったんだって!だからずっと明るくしてるの!」
田中花は、今夜も相変わらず明るい装いをしていた。パステルカラーのワンピースに色とりどりのブレスレットを身につけ、髪には光る星型のアクセサリーを散りばめていた。その姿は、夜空の下でも花のように鮮やかだった。
佐藤空は静かに空を見上げながら、簡潔に答えた。
「水瓶座。理由はない」
佐藤空は白いシンプルなワンピースを着て、髪を一つに結び上げていた。その姿には不思議な清潔感があり、月明かりを浴びて銀色に輝いていた。彼女の首元には、いつものように小さな星のペンダントが光っていた。
山本雫は膝を抱えるようにして座り、小さな声で言った。
「...魚座...二つの魚が...反対方向を向いてる...引き裂かれた心みたい...」
山本雫は今夜も薄いグレーのパーカーを着ていたが、中には淡い水色のブラウスを着て、いつもよりも少し明るい装いをしていた。髪も少し整えられ、小さな青いピンで留められていた。
鈴木陽炎は山本雫の言葉を聞きながら、深く頷いた。
「汝らの星座...それぞれに深き意味を持つ。我らはこうして星の導きによって集められし運命の子たち...今宵、この場所で交差せし我らの魂の軌跡は、遥か宇宙の彼方で既に定められていたのかもしれぬ...」
鈴木陽炎は星空に向かって両手を広げ、まるで宇宙と交信するかのような仕草を見せた。
小林理子はその言葉を聞きながら、興奮した様子で話し始めた。
「うんうん!それってまさに『星の巡り会わせ -Astral Connection-』っていうゲームの設定に似てるよね!あのゲームでは、主人公たちが実は前世で...あ、ネタバレになっちゃうか。ごめんごめん!」
小林理子は急に口を押さえた。それを見た田中花は、好奇心に目を輝かせて身を乗り出した。
「えー!気になる!今度教えてよ!」
佐藤空も、普段の無表情とは違い、わずかに関心を示すように顔を上げた。
「...興味ある」
山本雫もまた、小さく頷いた。
「...私も...少し...」
小林理子はみんなの反応を見て、嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ今度、一緒にプレイしよう!実はこのゲーム、マルチエンディングなんだけど、みんなで選択肢を選んでいくと面白いと思うんだ。特に雫ちゃんは、このゲームのヒロインの一人、水無瀬ルナちゃんに似てるから、きっと共感できるところがあると思うよ」
山本雫はその言葉に少し驚いたように目を見開いたが、すぐに小さく頷いた。
それからしばらく、五人は黙って星空を見上げていた。夜風が優しく吹き抜け、彼女たちの髪を揺らした。
田中花は突然立ち上がり、両手を広げながら叫んだ。
「あ!流れ星!」
全員が田中花が指さす方向を見上げると、確かに一筋の光が夜空を横切っていった。
「願い事をするの忘れないで!目を閉じて、強く願うんだよ!」
田中花の指示に、全員が目を閉じた。鈴木陽炎は両手を胸の前で組み、佐藤空は静かに頭を垂れ、小林理子は両手を強く握りしめた。山本雫もまた、小さな声で何かを呟きながら、目を閉じていた。
しばらくして全員が目を開けると、田中花は好奇心いっぱいの表情で尋ねた。
「ねえ、みんな何をお願いしたの?言える範囲でいいから教えてよ!」
鈴木陽炎は神秘的な微笑みを浮かべながら答えた。
「願いの言葉は、口にした瞬間に力を失う...それが古の魔法の掟。我が願いは、闇の中に封印しておこう...」
小林理子は少し照れたように頬を赤らめた。
「実はね、『星の巡り会わせ2』が発表されないかなって...あと、みんなとの友情がずっと続きますようにって」
佐藤空は短く答えた。
「秘密」
しかし、その言葉には珍しく柔らかさが感じられた。
山本雫は小さな声で呟いた。
「...私...このままでいられますように...って...」
彼女の素直な告白に、みんなは温かな視線を向けた。田中花は山本雫の隣に座り、肩を抱くようにして言った。
「私もね、みんなとこのままでいられますようにって願ったんだ。すごいね、雫ちゃんと同じだ!これって絶対叶うよ!」
その言葉に、山本雫の頬はわずかに紅潮した。
鈴木陽炎は不意に立ち上がり、両手を星空に向けて広げた。
「我らはこの星空の下、誓いを立てよう。如何なる困難が訪れようとも、我らの絆は永遠に続くことを...」
鈴木陽炎の言葉には、いつもの大仰さがありながらも、心からの誠実さが感じられた。
田中花も立ち上がり、鈴木陽炎の隣に立った。
「そうだね!約束しよう!どんなことがあっても、五人で一緒にいよう!」
小林理子もそれに続いて立ち上がった。
「うん、私たちは『五つ星の守護者』だよ!ゲームの中みたいに、それぞれの個性で助け合おうね」
佐藤空もまた、静かに立ち上がり、五人の輪に加わった。彼女は言葉こそ発さなかったが、その目には確かな決意が宿っていた。
山本雫は最後まで躊躇していたが、田中花が手を差し伸べると、小さくうなずいて立ち上がった。
「...みんな...ありがとう...」
五人は円陣を組み、互いの手を取り合った。その瞬間、まるで約束を祝福するかのように、再び一筋の流れ星が夜空を横切った。
「見た?もう一つ流れ星!これはきっと、私たちの約束が叶うってこと!」
田中花の言葉に、全員が空を見上げた。満天の星空の下、五人の少女たちの輪は、一つの星座のように輝いていた。
***
## 第五章:嵐の前の静けさ
数週間が過ぎ、夏休みが近づいていた。放課後の教室には、いつものように五人の少女たちが集まっていた。窓の外は曇り空で、遠くで雷鳴が響いていた。嵐の前の重たい空気が、教室内にも少し漂っていた。
今日は珍しく、全員が少し沈黙がちだった。テスト期間が終わったばかりで、疲れが出ているのかもしれない。あるいは、これから始まる夏休みに、それぞれが複雑な思いを抱いているのかもしれなかった。
山本雫が、いつもより小さな声で切り出した。
「...みんな...夏休みは...どうするの...?」
その質問には、彼女なりの不安が込められていた。山本雫は、この数週間で少しずつ変わっていた。いつものパーカーは、今日は薄い紫色のものに変わり、髪も少しだけ明るくなったように見えた。何より、彼女の目が、以前よりも少し輝きを増していた。
田中花は、そんな山本雫の質問に、いつもの元気さで答えた。
「もちろん、みんなで会おうよ!海とか、プールとか、花火大会とか...!あ、あと私の実家、田舎で農園やってるから、みんなで遊びに来ない?スイカ割りとかできるよ!」
田中花は、想像するだけで楽しそうにはしゃいでいた。彼女は今日、暑さに備えてか、髪を高く結び上げ、制服の上着を脱いで半袖ブラウスになっていた。首元には、いつも彼女が身につけている小さな花の形のペンダントが揺れていた。
小林理子は、田中花の提案に目を輝かせて返事をした。
「それいいね!田舎の自然の中でのスイカ割り...まるでギャルゲーの夏イベントみたい!あと、来週末には大きなアニメコンベンションがあるんだけど、良かったら一緒に行かない?」
小林理子は興奮した様子で話し続けた。
「コスプレコンテストもあるんだよ!私たち五人で、『魔法少女☆スターブリンカー』のキャラクターのコスプレとかどう?陽炎ちゃんは闇の魔法使いのレイヴン、空ちゃんは氷の魔法使いのフリーズ、花ちゃんは花の魔法使いのブロッサム、雫ちゃんは水の魔法使いのアクア、私は星の魔法使いのステラでさ!」
小林理子の提案に、鈴木陽炎は目を輝かせた。
「なるほど...闇の魔法使い...我にはまさにふさわしき役割。あの漆黒のドレスと深紅のマントを纏い、禁断の呪文書を携えし姿...想像するだに背筋に戦慄が走る...」
鈴木陽炎は、そう言いながら右目を覆うポーズを取った。彼女は今日も黒い長袖のブラウスにレースのスカートという出で立ちで、暑さを全く気にしていないように見えた。
佐藤空は、そんな三人のやり取りを聞きながら、珍しく少し迷うような表情を見せた。
「コスプレ...初めて。難しい」
佐藤空のその言葉に、田中花は急に彼女の隣に移動し、腕を組んだ。
「大丈夫だよ、空ちゃん!私、裁縫得意だから手伝うよ!空ちゃんの氷の魔法使いの衣装、作ってあげるね!」
田中花の明るさに、佐藤空はわずかに頬を赤らめた。彼女は今日、いつもとは違い、髪を少し巻いていた。そして、首元のブローチも星から雪の結晶の形に変わっていた。
山本雫は、そんな皆の様子を見ながら、小さく呟いた。
「...私も...やってみたい...かも...」
彼女のその言葉に、全員が驚いたように彼女を見た。山本雫は少し恥ずかしそうに俯いたが、それでも続けた。
「...水の魔法使い...素敵だな...って...」
小林理子は、その言葉を聞いて飛び上がるように喜んだ。
「やったー!雫ちゃんもやってくれるんだね!じゃあ決まり!私、今日にでも予約しておくね。あ、写真集も作りたいな。それから...」
小林理子が計画を立て始めたその時、遠くで雷鳴が鳴り響いた。窓の外は、急に暗くなったように見えた。
佐藤空が、窓の外を見ながら言った。
「嵐。近づいてる」
その言葉通り、空はどんどん暗くなり、風が強まっていた。鈴木陽炎は、窓に寄りかかるようにして、嵐雲を見つめた。
「大いなる力が天を覆いつつある...我らの前に、試練が待ち受けるのやも知れぬ...」
彼女の言葉には、いつもの中二病的な雰囲気と共に、何か予感めいたものが感じられた。
そんな会話の中、教室のドアが突然開かれた。現れたのは学年主任の高橋先生だった。彼女はいつもの穏やかな表情とは違い、少し緊張した面持ちで五人に向き合った。
「あら、みなさんまだいたのね。実は、少し話があるの」
高橋先生の声には、何か切迫した調子があった。五人は、何が起こったのか、互いに視線を交わした。
「実は...鈴木さんのお父さんから連絡があったの。家族の事情で、夏休み明けから転校することになったそうよ」
先生の言葉に、教室に衝撃的な沈黙が訪れた。
鈴木陽炎は、一瞬驚いたような表情を見せた後、すぐに無表情に戻った。
「...そうか」
彼女の声は、いつもの大仰な調子ではなく、静かで落ち着いていた。まるで、既に覚悟していたかのようだった。
田中花は、その言葉を聞いた瞬間、椅子から飛び上がった。
「え!?嘘でしょ!?陽炎ちゃん、本当なの!?」
彼女の声には、信じられないという気持ちと、深い悲しみが混ざっていた。目には、既に涙が浮かんでいた。
鈴木陽炎は静かに頷いた。
「...すまない。言おうと思っていたが...タイミングを見失っていた」
彼女の声には、いつもの中二病的な話し方ではなく、素直な後悔の色が浮かんでいた。
小林理子は、あまりの衝撃に言葉を失っていたが、ようやく口を開いた。
「どこに...転校するの?」
鈴木陽炎は窓の外の嵐雲を見つめながら答えた。
「北海道...父の仕事の都合で...」
その言葉に、皆の表情がさらに暗くなった。北海道は、東京から遠く離れた地だった。
山本雫は、震える声で言った。
「...やっぱり...続かない...んだね...」
彼女の言葉には深い絶望感が込められていた。まるで、自分の予想通りの結末が訪れたことに、哀しい確信を持ったかのようだった。
佐藤空は、いつものように無表情だったが、その目には何か複雑な感情が浮かんでいるように見えた。彼女はただ静かに立ち上がり、窓際に立っていた鈴木陽炎の側に立った。
高橋先生は、五人の様子を見て、申し訳なさそうに言った。
「もう少しゆっくり話し合う時間が必要よね。私は退出するわ。でも、あまり遅くならないように」
先生は小さく頷くと、静かに教室を後にした。教室には、再び五人だけが残された。
しばらくの沈黙の後、鈴木陽炎が深いため息をついた。
「我もまた...心の準備ができていなかった。父の仕事の都合とはいえ...あまりにも突然の決定だった」
彼女の声には、いつもの中二病的な調子がなく、素直な少女の困惑と悲しみが込められていた。
田中花は、涙を拭いながら鈴木陽炎に近づいた。
「いつ...決まったの?」
鈴木陽炎は窓の外を見つめながら答えた。
「先週末...父から告げられた。だが、皆に言うべき言葉が見つからなかった...」
小林理子も、ようやく立ち上がり、鈴木陽炎に近づいた。
「でも、連絡は取り合えるよね?LINEとかメールとか...それに、長期休みには会いに行くこともできるし...」
鈴木陽炎は小さく頷いた。
「もちろん...そのつもりだ。されど...」
彼女は言葉を切り、再び窓の外を見つめた。外では雨が降り始め、窓ガラスを打つ音が教室に響いていた。
山本雫は、静かに椅子から立ち上がり、鈴木陽炎に向かって小さな声で言った。
「...私...陽炎ちゃんに...言いたいことがある...」
彼女の声には珍しい決意が感じられた。通常なら人前で積極的に話すことのない山本雫だったが、今日は違った。彼女は鈴木陽炎の前に立ち、まっすぐに見つめた。
「...陽炎ちゃんのおかげで...私...変われた...気がする...だから...ありがとう...」
山本雫の素直な言葉に、鈴木陽炎の目に涙が浮かんだ。彼女は慌てて拭おうとしたが、間に合わなかった。
「...雫...」
その名前を呼ぶ声には、いつもの大げささはなく、純粋な感動が込められていた。
田中花は、二人の様子を見て、突然両腕を広げた。
「みんなでハグしよう!」
彼女は勢いよく鈴木陽炎と山本雫を抱きしめた。小林理子もすぐにその輪に加わった。佐藤空は少し躊躇したが、田中花が手を引くと、静かに輪の中に入った。
五人は、言葉なく抱き合った。窓の外では雨が激しく降り、時折雷鳴が轟いていた。しかし、教室の中には不思議な温かさが満ちていた。
しばらくして、鈴木陽炎が静かに口を開いた。
「我が剣と魔法を...皆に捧げん。たとえ体は離れても、魂は常に共にあらん...」
彼女の声には、再びいつもの中二病的な調子が戻っていた。しかし、それは彼女なりの感情表現方法だった。そして、それは彼女が本来の自分を取り戻したことを示していた。
田中花は、涙を拭きながら笑顔を見せた。
「そうだよ!私たちの友情は、どんなに離れていても続くよ!むしろ、もっと強くなるんだから!」
小林理子も頷きながら言った。
「『遠き星の約束』っていうゲームでも、離れ離れになった仲間たちが、星を見上げることで心を一つにするシーンがあるんだよね。私たち、毎晩9時に星を見上げて、お互いのことを考えるっていうのはどう?」
佐藤空も、珍しく言葉を添えた。
「いい提案」
山本雫も小さく頷いた。
「...素敵...」
鈴木陽炎は、深く感動したように皆を見回した。
「我ら『星の守護者』...離れていても、星の下では一つなり...」
彼女の言葉に、全員が頷いた。教室の外では、雨がさらに激しく降っていたが、彼女たちの心の中では、新たな約束の光が灯っていた。
***
## 第六章:別れの儀式
夏休み前の最後の登校日。朝から晴れ渡る空の下、学校は普段よりも賑やかだった。生徒たちは夏休みに向けての期待で胸を膨らませ、教室や廊下では笑い声が絶えなかった。
しかし、屋上に集まった五人の少女たちには、どこか物悲しい空気が漂っていた。今日は鈴木陽炎との最後の登校日だった。彼女の転校は夏休み明けからだが、明日から彼女は引っ越しの準備のため北海道へ先に発つことになっていた。
屋上の隅に広げられた大きなレジャーシートの上に、五人が円形に座っていた。周りには誰もおらず、彼女たちだけの空間が広がっていた。
田中花は、大きなバスケットを開け、次々と料理を取り出した。彼女が朝早くから作ったという手作り弁当の数々だった。
「はい、みんな!今日は特別にごちそう作ってきたよ!陽炎ちゃんの好きなミートボール、空ちゃんの好きなおにぎり、理子ちゃんの好きなたまご焼き、雫ちゃんの好きなサンドイッチ、そして私の大好きなフルーツサラダ!全部食べてね!」
田中花の弁当は見た目にも美しく、様々な色とりどりの料理が食欲をそそった。彼女は今日、特別に明るいイエローのワンピースを着て、髪には花の形のヘアピンを付けていた。
小林理子は目を輝かせて弁当を見つめた。
「うわぁ、すごい!まるでアニメの中の完璧な友情弁当みたい!花ちゃん、ありがとう!」
小林理子は飛びつくように弁当を手に取った。彼女は今日、「永遠の友情」と書かれたTシャツを着て、首にはみんなで撮った写真が入ったロケットを下げていた。
佐藤空は静かに頭を下げて弁当を受け取った。
「ありがとう。嬉しい」
彼女の言葉は短かったが、その目には明らかな感謝の色が浮かんでいた。佐藤空は今日、いつもよりも少し華やかな白いブラウスに水色のスカートという出で立ちで、髪も丁寧に結い上げていた。
山本雫も、小さな声でお礼を言いながら弁当を受け取った。
「...こんなに...私のために...ありがとう...」
山本雫は今日、珍しく明るい色の服装をしていた。薄いピンク色のブラウスに白いカーディガン、そして薄いブルーのスカート。髪も整えられ、小さな花のヘアピンで留められていた。彼女の変化は、この数ヶ月での内面の変化を物語っているようだった。
鈴木陽炎も、田中花からの弁当を受け取ると、深く頭を下げた。
「汝の心のこもりし料理...我が魂の糧となるであろう...心より感謝する」
鈴木陽炎は今日、いつもの黒い服装ではなく、濃い紫色のワンピースにレースのカーディガンという、少し明るめの装いをしていた。首元には、いつもの鍵のペンダントと共に、みんなからもらった星のキーホルダーも下げられていた。
五人は、おいしそうに弁当を食べながら、屋上から見える街の景色を眺めていた。空は青く澄み渡り、遠くには山々の稜線が見えた。鈴木陽炎が移り住む北海道は、きっとこれよりもさらに雄大な自然に囲まれているのだろう。
食事を終えた後、小林理子がバッグから何かを取り出した。それは、五人の写真がたくさん詰まったアルバムだった。
「みんなに見せたいものがあるの。私たちの思い出アルバム!出会ってからの全ての写真を集めたんだ」
小林理子は興奮した様子でアルバムを開いた。最初のページには、あの夕暮れの教室で撮った五人の写真が貼られていた。鈴木陽炎の中二病ポーズ、田中花の満面の笑顔、小林理子のピースサイン、佐藤空の無表情、そして山本雫の小さな微笑み。それは彼女たちの出会いの瞬間を切り取ったものだった。
めくられるページごとに、思い出が蘇ってきた。雨の日の教室での写真、星空の下での約束の写真、一緒に勉強した日の写真、校外学習での写真...。そして最後のページには、先週末に五人で撮ったプリクラが貼ってあった。それぞれがふざけたポーズを取り、笑顔で画面いっぱいに映っていた。
小林理子は、アルバムの最後に空白のページがあることを示した。
「このページは、これからの思い出のために取っておいたの。陽炎ちゃんが北海道に行っても、休みにはきっと会えるよね。その時の写真をここに貼るんだ」
鈴木陽炎の目に、再び涙が浮かんだ。彼女は慌てて拭おうとしたが、今回も間に合わなかった。
「...ありがとう...理子...皆...」
彼女の声は震え、いつもの中二病的な調子が消えていた。それは、素直な鈴木陽炎の感情だった。
田中花も、涙ぐみながらアルバムを見つめた。
「本当に...素敵...。陽炎ちゃん、これを持っていって。北海道で寂しくなったら、見てね」
小林理子は頷きながら、アルバムを鈴木陽炎に差し出した。
「私たちの思い出は、これからも続いていくから。だから、これは一時的な別れでしかないよ」
鈴木陽炎は、アルバムを両手で大事そうに受け取った。
佐藤空もまた、ポケットから何かを取り出した。それは小さな星型の音楽ボックスだった。
「みんなの思い。形にした」
彼女がゼンマイを巻くと、小さな星型の音楽ボックスから、彼女たちがいつも一緒に聴いていた「星の旋律」という曲のメロディが流れ出した。その優しい音色に、全員が耳を傾けた。
山本雫も、おずおずとバッグから何かを取り出した。それは手作りのブレスレットだった。五色の糸で編まれた五本のブレスレットは、それぞれに小さな星型のチャームが付いていた。
「...みんなに...作った...ペアブレスレット...」
山本雫の声は小さかったが、その目には誇らしさが浮かんでいた。彼女は一人一人に手渡し、その手が少し震えていた。
「...どんなに離れていても...私たちは...繋がってる...って...思って...」
鈴木陽炎は、ブレスレットを受け取ると、すぐに左手首に巻きつけた。
「我が魂の証...永遠に肌身離さず持ち歩こう...」
彼女の言葉には、再び中二病的な調子が戻っていたが、その目には真剣な想いが浮かんでいた。
五人は、それぞれ左手首にブレスレットを巻き、互いの手を重ね合わせた。五色のブレスレットが重なり、小さな星型のチャームが音を立てた。
鈴木陽炎が、静かに立ち上がった。
「最後に...我から一つ贈り物を...」
彼女はバッグから五つの小さな箱を取り出した。それぞれの箱には、受け取る人の名前が書かれていた。
「開けてみよ...」
四人が箱を開けると、中には小さな水晶のペンダントが入っていた。それぞれの水晶は異なる色を持っていた。田中花のはピンク、小林理子のは緑、佐藤空のは青、山本雫のは紫、そして鈴木陽炎自身のは赤だった。
「これは...我が魔力を込めし水晶。いや、冗談ではなく...私の気持ちを込めた、お守りのようなもの。色はそれぞれの個性を表している。いつも身につけていてほしい...」
鈴木陽炎の素直な言葉に、全員が頷いた。田中花は早速ペンダントを首にかけ、小林理子もすぐに装着した。佐藤空と山本雫も、静かにペンダントを身につけた。
鈴木陽炎も自分のペンダントを首にかけると、五つの水晶が太陽の光を受けて輝いた。
「我らの絆...永遠なり...」
彼女の言葉に、全員が黙って頷いた。言葉にはできない感情が、五人の間に流れていた。
そして五人は再び円になって座り、これからの計画を話し始めた。田中花は夏休みの予定を立て、小林理子はビデオ通話の時間を決め、佐藤空は文通の約束をし、山本雫は北海道に行く計画を立てた。鈴木陽炎も、冬休みには東京に戻ってくる約束をした。
太陽は徐々に西に傾き、屋上に長い影を落とし始めた。それは彼女たちの別れの時間が近づいていることを告げていた。しかし、五人の心の中には、別れの悲しみよりも、これからも続く友情への確信が芽生えていた。
***
## 第七章:友情の証明
夏休みも半ばを過ぎた8月上旬、東京は連日の猛暑に包まれていた。山本雫の小さなアパートの一室に、田中花、小林理子、佐藤空の三人が集まっていた。
山本雫の部屋は、彼女が初めて友達を招くということで、朝から掃除や片付けに追われていたようだった。部屋は小さいながらも清潔に整えられ、ベッドの上にはいくつかのぬいぐるみが並べられていた。壁には、五人で撮った写真が何枚か貼られていた。
田中花は山本雫の部屋を見回しながら、明るい声で言った。
「雫ちゃんの部屋、すごく可愛い!このぬいぐるみたち、全部雫ちゃんの?」
山本雫は少し恥ずかしそうにうなずいた。
「...うん...昔から...集めてた...」
彼女のベッドの上には、大小さまざまな動物のぬいぐるみが並んでいた。特に目立つのは、大きなクマのぬいぐるみで、その隣には小さなウサギやネコのぬいぐるみが置かれていた。
小林理子はそのぬいぐるみたちを見て、目を輝かせた。
「わあ、これって『魔法動物園』のキャラクターだよね!特にこのクマのモカくん、超レアなやつじゃない?」
山本雫は少し驚いた表情で小林理子を見た。
「...知ってるの...?」
小林理子は嬉しそうに頷いた。
「もちろん!私も大好きなんだよ。特にウサギのピピちゃんが推しなんだ」
彼女はスマートフォンを取り出し、自分の部屋にある『魔法動物園』グッズの写真を見せた。
佐藤空は、そんな二人のやり取りを静かに見守りながら、部屋の隅に置かれた小さな机に目を向けた。そこには、いくつかのスケッチブックが積み重ねられていた。
「これは?」
佐藤空の質問に、山本雫は急に顔を赤らめた。
「...あ...それは...」
田中花も好奇心いっぱいに机に近づいた。
「見せて見せて!雫ちゃんの秘密の宝物?」
山本雫は少し躊躇したが、ゆっくりとスケッチブックを取り出した。
「...私の...絵...」
彼女がページをめくると、驚くほど繊細で美しいイラストが現れた。そこには風景や動物、そして人物のスケッチが描かれていた。特に目を引いたのは、最近の日付が書かれたページに描かれた五人の少女たちの姿だった。鈴木陽炎の神秘的な雰囲気、田中花の明るさ、小林理子の知的な印象、佐藤空の凛とした佇まい、そして山本雫自身の繊細さが、見事に捉えられていた。
三人は、その絵に息を呑んだ。
「すごい...雫ちゃん、こんな才能があったなんて...」
田中花の言葉に、小林理子も熱心に頷いた。
「本当に素晴らしいよ!まるでプロのイラストレーターみたい!」
佐藤空も、普段は無表情なのに、明らかに感心した様子で絵を見つめていた。
「才能がある。素晴らしい」
山本雫は、そんな三人の反応に戸惑いながらも、嬉しそうな表情を浮かべた。
「...ありがとう...実は...イラストレーターに...なりたいって...思ってる...」
彼女の小さな告白に、三人は励ましの言葉を投げかけた。
そんな会話を楽しんでいると、小林理子のスマートフォンが鳴った。画面には「鈴木陽炎」の名前が表示されていた。
「あ、陽炎ちゃんからビデオ通話だよ!」
小林理子は急いで応答ボタンを押した。スマートフォンの画面に映し出されたのは、北海道の新しい家からの鈴木陽炎の姿だった。
「我が魔術によりて、汝らに通信を開始せり...みな元気であったか?」
鈴木陽炎の声は、相変わらず中二病全開だったが、その顔には明るい笑顔が浮かんでいた。背景には、新しい部屋の様子が見えた。壁には既に彼女らしい飾りが施され、机の上には水晶やカードが並べられていた。
田中花は画面に顔を寄せて、大きな声で答えた。
「陽炎ちゃん!元気してる?北海道はどう?寒い?美味しいものある?学校は?新しい友達は?」
質問の嵐に、鈴木陽炎は少し圧倒されながらも笑った。
「北海道の地にて、我は新たなる試練に直面しておる。されど、この地の大自然の力は我が魔力を増強させるには最適の環境...とにかく、景色が美しく、食べ物も美味。特に、乳製品と海の幸が絶品だ」
彼女は画面の向きを変え、窓の外の景色を映した。そこには、広大な空と緑の平野が広がっていた。鈴木陽炎の新しい家は、どうやら郊外の静かな場所にあるようだった。
「新しき魂の寄り処にも、慣れてきた。されど...皆の存在は常に我が心の中に...」
彼女の言葉には、わずかな寂しさが感じられた。首元には、山本雫が作ったブレスレットと、彼女自身が贈った水晶のペンダントが見えた。
小林理子は、山本雫のスケッチブックを画面に向けた。
「ねえ、陽炎ちゃん、見て!雫ちゃんの秘密の才能が発覚したんだよ!」
鈴木陽炎は、画面越しにスケッチブックの絵を見て、目を丸くした。
「これは...驚きだ。雫よ、汝には神秘的な表現力が宿っている。まるで魂を描いているかのようだ...」
山本雫は恥ずかしそうにうつむいたが、鈴木陽炎の言葉に小さく頷いた。
「...ありがとう...陽炎ちゃんも...描きたいな...」
佐藤空は、静かに話に加わった。
「提案がある。雫の絵。陽炎に送る」
その提案に、全員が賛同した。山本雫は照れながらも、鈴木陽炎のポートレートをスケッチすることを約束した。
それから五人は、夏休みの出来事を語り合った。田中花は家族で行った海水浴の話を、小林理子は先日行ったアニメコンベンションの様子を、佐藤空は読んだ本のことを、山本雫は描いている絵のことを、そして鈴木陽炎は北海道での新生活について語った。
会話が弾む中、鈴木陽炎が突然深刻な表情で言った。
「実は...伝えねばならぬことがある」
その言葉に、全員が緊張した面持ちで画面を見つめた。
「北海道の新たなる学校にて...我を嘲笑う者たちが現れた」
鈴木陽炎の声には、珍しく弱さが滲んでいた。彼女は移動してきたばかりだったが、新しい学校ではすでに「変わり者」として浮いてしまっているようだった。
「我は...動じぬ。されど...」
彼女の言葉に、田中花が食い入るように画面を見つめた。
「陽炎ちゃん、大丈夫?いじめられてるの?」
鈴木陽炎は首を振った。
「いじめというほどではない。ただ...理解されぬ孤独感は否めぬ...」
小林理子は熱心に画面に向かって言った。
「でも、陽炎ちゃんはそのままの陽炎ちゃんでいいんだよ!『本当の魔法』は、自分を偽らないことだって『魔法少女の真実』っていうアニメでも言ってたじゃん」
佐藤空も、珍しく長い文章で励ました。
「個性は強み。隠す必要はない。理解者は必ず現れる」
山本雫は、小さな声ながらも力強く言った。
「...私...陽炎ちゃんの...その個性が...大好き...だから...変わらないで...」
鈴木陽炎の目に、涙が浮かんだ。彼女は急いで拭いながら微笑んだ。
「皆...感謝する。汝らの言葉は、我が魂を癒す霊薬...もう少し忍耐を持って、真の理解者を見つけよう」
彼女はさらに付け加えた。
「実は...絵を描く部の存在が此の地にもあることを発見した。明日にでも見学に行こうと思っている」
山本雫は、その言葉に目を輝かせた。
「...素敵...きっと...才能が...認められるよ...」
五人の会話は、それからも続いた。やがて外は暗くなり、部屋の明かりを点けた。それぞれのいる場所は違えど、彼女たちの心は確かに繋がっていた。
ビデオ通話を終える前に、五人は左手首のブレスレットを画面に向かって掲げた。五色の糸と星のチャームが、それぞれの場所で輝いていた。
「我ら『星の守護者』...離れていても魂は一つ。いつの日か、再び集えるその時まで...」
鈴木陽炎の言葉に、全員が頷いた。そして、笑顔でビデオ通話を終えた。
ビデオ通話の画面が消えた後も、四人の心には鈴木陽炎の存在が強く残っていた。彼女との距離は遠くなっても、絆は深まっていくような感覚があった。
田中花は伸びをしながら立ち上がった。
「よーし!陽炎ちゃんのためにも、私たちも頑張らなきゃ!」
彼女の明るい声に、全員が力づけられた。
「そうだ、みんなでお手紙書かない?陽炎ちゃんに送るの!それぞれの思いを込めて!」
田中花の提案に、小林理子が目を輝かせた。
「それいいね!私、可愛いレターセット持ってるよ。みんなでメッセージを書いて、雫ちゃんの絵と一緒に送ろう!」
佐藤空も静かに頷き、山本雫も小さく同意した。
こうして四人は、山本雫の部屋で、鈴木陽炎への手紙を書き始めた。それぞれが思い思いの言葉で、遠く離れた友人への思いを綴った。
部屋の窓からは、夕暮れの空が見えた。空には、まだかすかに残る青さの中に、最初の星が瞬き始めていた。
***
## 第八章:再会の瞬間
秋も深まりつつある10月下旬の週末。東京駅の新幹線ホームは、行き交う人々で賑わっていた。Platform 12の前には、四人の少女たちが集まっていた。
田中花はピンクのコートに身を包み、首には大きなチェック柄のマフラーを巻いていた。彼女の手には「陽炎ちゃん、おかえり!」と書かれた手作りの横断幕が握られていた。
小林理子は緑のジャケットに黒いスカート、首には「星の守護者」と書かれたペンダントを下げていた。彼女の手には小さなデジタルカメラが握られ、カメラのストラップには五つの星型のチャームが付けられていた。
佐藤空は白いコートに水色のベレー帽という出で立ちで、いつもの無表情ながらも、どこか期待に満ちた様子だった。彼女の手には小さな紙袋が握られ、そこからはかすかに甘い香りが漂っていた。
山本雫は薄紫のワンピースに白いカーディガン、首元には鈴木陽炎からもらった水晶のペンダントが輝いていた。彼女の手には、厚い封筒が握られていた。それは彼女が描いた絵と、この数ヶ月で撮りためた写真がいっぱい詰まったものだった。
四人は、新幹線の到着を今か今かと待っていた。鈴木陽炎は、学校の連休を利用して三日間だけ東京に戻ってくるのだった。
田中花は、足踏みしながら興奮した様子で言った。
「もうすぐだね!三ヶ月ぶりに陽炎ちゃんに会えるなんて、すっごく楽しみ!」
小林理子も頷きながらカメラの設定を確認した。
「楽しみだね!再会の瞬間、絶対に写真に残さなきゃ。まるでゲームのスペシャルイベントみたいだよね」
佐藤空は静かに時計を見た後、小さく言った。
「定刻通り」
山本雫も、小さな声ながらも期待を込めて言った。
「...楽しみ...」
そして、アナウンスが流れた。もうすぐ新幹線が到着するという内容だった。四人の心臓は、期待で高鳴った。
やがて、新幹線がホームに滑り込んできた。車両が停止し、ドアが開き始める。乗客が次々と降り始める中、四人は鈴木陽炎の姿を探した。
そして、黒い長いコートを着た少女の姿が見えた。彼女の黒髪は以前よりも長くなり、顔立ちもやや大人びていた。しかし、その神秘的な雰囲気は変わっていなかった。
鈴木陽炎は、四人を見つけると、まっすぐに歩み寄ってきた。彼女の左手首には、山本雫が作ったブレスレットが光っていた。
「我、帰還せり...」
そう言った彼女の目には、涙が浮かんでいた。田中花は手にした横断幕を放り投げると、一目散に鈴木陽炎に駆け寄り、強く抱きしめた。
「おかえり!陽炎ちゃん、おかえり!」
田中花の行動に、小林理子も続いた。彼女もカメラを手に持ったまま鈴木陽炎に抱きついた。
「本当におかえり!会いたかったよ、陽炎ちゃん!」
佐藤空と山本雫は二人の後に続いた。四人に囲まれた鈴木陽炎は、もう涙を隠そうともせず、嬉しそうに微笑んだ。
「皆...会いたかった...」
彼女の言葉には、いつもの中二病的な調子がなく、素直な少女の喜びが溢れていた。
小林理子は一歩下がり、カメラを構えた。
「さあ、記念写真!みんな集まって!」
五人は肩を寄せ合い、カメラに向かって笑顔を見せた。シャッター音が鳴り、彼女たちの再会の瞬間が永遠に記録された。
駅を出た五人は、以前よく行っていたカフェに向かった。カフェの窓際の大きなテーブルに陣取った彼女たちは、早速話に花を咲かせ始めた。
鈴木陽炎は、北海道での生活について語り始めた。
「北の大地にて、我が魂は新たなる成長を遂げつつある。絵を描く部にて、仲間とも出会えた。彼らもまた、独自の闇と光を持つ魂の持ち主たち...」
彼女はスマートフォンを取り出し、美術部のメンバーとの写真を見せた。写真の中の鈴木陽炎は、笑顔で仲間たちと肩を組んでいた。
「もはや、我を嘲る声も気にならぬ。己の道を行くことの尊さを、より深く理解したのだ」
その言葉に、山本雫は小さく頷いた。
「...素敵...自分らしさを...認められるって...」
鈴木陽炎は山本雫に向かって優しく微笑んだ。
「雫よ、汝もまた、変わりつつあるようだな」
山本雫は少し恥ずかしそうに頷いた。確かに彼女は、以前よりも表情が明るくなり、少しずつ自分の言葉で話せるようになっていた。彼女は小さな声で言った。
「...美術部に...入ったの...」
その言葉に、鈴木陽炎は目を輝かせた。
「それは素晴らしい!汝の才能、必ずや花開くであろう」
田中花は、山本雫の肩を抱きながら嬉しそうに言った。
「雫ちゃん、すごいよね!先生にも才能を認められて、次の文化祭では雫ちゃんの絵が展示されるんだよ!」
小林理子も興奮した様子で付け加えた。
「しかも、雫ちゃんが描いた『五つの星』っていう絵は、もう完成してるんだよ。これがまた素晴らしくて...」
鈴木陽炎は、好奇心いっぱいの表情で山本雫を見つめた。
「見せてはくれぬか?」
山本雫は、持ってきた封筒から一枚の写真を取り出した。それは彼女が描いた絵の写真だった。キャンバスには、夜空を背景に五つの星が描かれていた。それぞれの星は、彼女たち五人をイメージした色で表現されていた。赤、ピンク、緑、青、紫の五つの星は、互いに光で繋がれ、一つの星座を形作っていた。
鈴木陽炎はその絵に見入った。
「これは...まさに我らの魂の象徴...素晴らしい」
山本雫は、照れながらも嬉しそうに笑みを浮かべた。
佐藤空もまた、変化を見せていた一人だった。彼女は紙袋から手作りのクッキーを取り出した。
「みんなに。手作り」
その言葉に、全員が驚いた表情を見せた。佐藤空が料理をするなんて、想像もしていなかったからだ。
「最近。料理教室。通ってる」
彼女の短い言葉には、いつもの無表情とは違う、小さな誇らしさが感じられた。
小林理子は、佐藤空のクッキーを一つ取って食べると、目を見開いた。
「うわぁ、すごく美味しい!空ちゃん、こんな才能があったなんて!」
田中花も一つ食べて、頬を赤らめた。
「本当に美味しい!私、お菓子作りには自信あるけど、これは負けちゃうかも!」
鈴木陽炎もクッキーを口に入れ、満足げに頷いた。
「まさに魔法の味...心が温まる」
佐藤空は、そんな友人たちの反応に、珍しく頬を赤らめた。
小林理子もまた、自分の変化を語った。
「私ね、ゲーム制作部に入ったんだ。プログラミングを勉強し始めて、いつか自分でゲームを作りたいなって思って」
彼女はスマートフォンを取り出し、作り始めたゲームの画面を見せた。それはまだ単純なものだったが、「星の守護者 -Five Stars-」というタイトルが付けられていた。
「みんなをモデルにしたキャラクターで、物語を作りたいんだ。もちろん、許可をもらってからだけどね」
田中花は、それを聞いて飛び上がるように喜んだ。
「すごい!私も登場人物になれるの?どんなキャラクター?何ができるの?」
小林理子は嬉しそうに説明を始めた。
「花ちゃんは『光の守護者』で、周りの人を元気にする特殊能力があるんだ。陽炎ちゃんは『闇の守護者』で、強力な魔法が使えて、空ちゃんは『氷の守護者』で、時間を止める力があって、雫ちゃんは『水の守護者』で、感情を読み取る能力があるの」
鈴木陽炎は、そのゲーム設定に深く頷いた。
「なるほど...我らの本質を良く捉えている。このゲーム、完成が楽しみだ」
そして田中花も、自分の変化を語った。
「私ね、学校の合唱部に入ったんだ。歌うの、すごく楽しいよ!みんなで声を合わせると、なんだか一つになれる感じがして...」
田中花は、明るい声でそう言ってから、少し恥ずかしそうに付け加えた。
「それに...将来の夢ができたんだ。音楽の先生になりたいなって。子供たちに歌の楽しさを教えたいなって思って」
彼女の素直な告白に、全員が温かい視線を向けた。
鈴木陽炎もまた、自分の変化を語った。
「我もまた...変化の途上にあり。北の地にて、文学の魅力に深く触れ、詩作に励み始めた。いつか、己の魂の叫びを言葉に乗せて世に問いたいのだ」
彼女はノートを取り出し、自作の詩を少し読んでくれた。それは以前の彼女の言葉遣いとは違い、より洗練された表現で、彼女の内面を映し出すものだった。
五人は、それぞれの変化と成長を喜び合った。離れていても、彼女たちは確実に前に進んでいた。そして、その成長を共有できる関係が続いていることが、何よりの幸せだった。
カフェを出た後、五人は街を歩いた。秋の夕暮れは、街を柔らかなオレンジ色に染めていた。彼女たちは、昔よく行った公園に向かった。
公園のベンチに座った五人は、夕日を見つめながら、これからの夢や希望を語り合った。山本雫はイラストレーターに、小林理子はゲームクリエイターに、佐藤空はパティシエに、田中花は音楽の先生に、鈴木陽炎は作家になりたいという夢を持っていた。
それぞれの夢は違えど、彼女たちの心は確かに一つに繋がっていた。
日が落ち、星が見え始めた頃、五人は公園の小高い丘に立った。鈴木陽炎が空を指さした。
「見よ、あれが我らの星座だ」
全員が空を見上げると、確かに五つの星が、山本雫の絵のような配置で輝いていた。それは偶然かもしれないし、彼女たちの強い絆が呼び寄せた奇跡かもしれなかった。
五人は、左手首のブレスレットを空に向かって掲げた。五色の糸と星のチャームが、夜空の星と共鳴するように輝いた。
「我ら『星の守護者』...永遠なり...」
鈴木陽炎の言葉に、全員が頷いた。彼女たちの友情は、これからも星のように輝き続けるだろう。たとえ離れていても、心は一つに繋がっているのだから。
***
## エピローグ:五つの星の下で
10年後の春。東京の某美術館では、若手芸術家の特別展が開催されていた。その中心的な展示は「五つの星」という大きなキャンバスの絵だった。山本雫という新進気鋭のイラストレーターの作品だった。
展示室には、四人の女性が集まっていた。
長い黒髪を持つ神秘的な雰囲気の女性は、黒いドレスに身を包み、首には銀の鍵のペンダントを下げていた。
「雫の魂の輝き、遂に世に認められたのだな...感慨深い」
鈴木陽炎の言葉には、かつての中二病的な調子は影を潜め、より洗練された神秘的な雰囲気に変わっていた。彼女は今、北海道の高校で国語教師をしながら、小説家としても活動を始めていた。
明るいピンクのスーツを着た元気な女性は、周囲の人々に笑顔を振りまきながら展示を見て回っていた。
「雫ちゃんの絵、やっぱり素晴らしいね!あの子の才能、ついに花開いたね!」
田中花は、今では小学校の音楽教師として、子供たちに歌の楽しさを教えていた。彼女の明るい性格は変わらず、周りの人々を元気づける存在だった。
スマートタブレットを手にした眼鏡の女性は、熱心に展示を記録していた。
「雫ちゃんの絵の構図と色使いは、本当に独特だよね。私のゲームのビジュアルも、雫ちゃんに協力してもらってるんだ」
小林理子は、独立系ゲーム開発者として成功し、彼女の作る「星の守護者」シリーズは、インディーゲームとして高い評価を受けていた。
シンプルな白いスーツに身を包んだ凛とした女性は、静かに絵を見つめていた。
「雫の才能。素晴らしい。誇りに思う」
佐藤空は、今ではパティシエとして自分のケーキショップを持ち、その独創的なデザインと繊細な味わいで人気を博していた。
そこに、主役である山本雫がやってきた。彼女は薄紫色のワンピースに身を包み、以前の暗い雰囲気はすっかり消え、落ち着いた女性の佇まいに変わっていた。
「みんな...来てくれたんだね...嬉しい...」
彼女の声は小さいながらも、以前のようにぎこちなく途切れることはなくなっていた。
田中花は飛びつくように山本雫を抱きしめた。
「当たり前じゃない!雫ちゃんの大切な日に、来ないわけないでしょ!」
小林理子も笑顔で近づいた。
「私たち『星の守護者』だもん。一人が輝く時は、みんなで祝うんだよ」
佐藤空は静かに頷き、山本雫の肩に手を置いた。
「おめでとう。誇りに思う」
鈴木陽炎は、山本雫の目をまっすぐ見つめながら言った。
「汝の魂の輝き、ついに世に認められたのだな。おめでとう」
山本雫の目に涙が浮かんだ。彼女はそれを拭いもせず、素直な気持ちを言葉にした。
「みんなのおかげ...みんながいなかったら...私...ここにいない...」
五人は、美術館の中央に展示された「五つの星」の前に立った。そこには、10年前の彼女たちの出会いから生まれた絆が、美しい色彩と光で表現されていた。赤、ピンク、緑、青、紫の五つの星は、夜空の中で互いに光で繋がれ、一つの星座を形成していた。
小林理子は、スマートフォンを取り出した。
「さあ、記念写真!」
五人は肩を寄せ合い、カメラに向かって笑顔を見せた。彼女たちの左手首には、今も山本雫が作ったブレスレットが光っていた。10年経っても、彼女たちは大切にそれを身につけていた。
シャッター音が鳴り、その瞬間が永遠に記録された。
展示会の後、五人は屋上レストランで夕食を共にした。東京の夜景を見下ろしながら、彼女たちは10年の歩みを語り合った。
鈴木陽炎は、北海道の高校で教鞭を執りながら、『星の囁き』という小説でデビューしたこと。田中花は、小学校の音楽教師として子供たちから「花先生」と慕われていること。小林理子は、独立系ゲーム開発者として国際的な賞を受賞したこと。佐藤空は、自分のケーキショップを開き、テレビ番組にも出演したこと。そして山本雫は、イラストレーターとして多くの作品を手がけ、今回の個展に至ったこと。
それぞれが異なる道を歩みながらも、彼女たちの絆は10年の時を経てもなお強く、深くなっていた。
夕食を終え、レストランの屋上テラスに出た五人は、満天の星空を見上げた。
鈴木陽炎が静かに言った。
「あの日...雨の教室で、我らは出会った。運命とは不思議なものだな」
田中花は笑顔で答えた。
「その日、補習が急になくなって、みんなが集まったのも偶然だったよね。でも、その偶然が私たちの人生を変えた」
小林理子も頷いた。
「『星の巡り会わせ』っていうゲームみたいだね。偶然の出会いが、必然的な絆になる...」
佐藤空は静かに言った。
「偶然ではない。必然」
山本雫は小さく微笑んだ。
「...みんなと出会えて...本当に...良かった...」
五人は、左手首のブレスレットを星空に向かって掲げた。10年経っても、それは彼女たちの絆の象徴として輝いていた。
鈴木陽炎が静かに呟いた。
「我ら『星の守護者』...永遠なり...」
その言葉に、全員が頷いた。彼女たちの友情は、これからも星のように輝き続けるだろう。たとえ離れていても、心は一つに繋がっているのだから。
夜空には、五つの星が優しく瞬いていた。それは彼女たちを見守るかのように、静かに、そして力強く光を放っていた。
**終**
次の更新予定
2025年12月25日 10:00
【ラノベ風少女小説】星降る教室の秘密結社 ~五つの魂の物語~ 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi
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