第十五章 シクラーデに眠るもの

 小型のランタンが零す灯りを掲げ、サクロヘニカとフランマは鉱山へと踏み入った。

 鉱夫たちの遺体があった場所を通り過ぎ、さらに奥へ向かう。


 冬空から降り注ぐ陽光がすっかり届かなくなった頃。闇を縫うように歩くサクロヘニカのコートが、不意に後ろへ引かれた。

 驚いて振り向くと、フランマが小瓶のようなものをサクロヘニカの方へ差し出した。その中には、どうやら灰緑色のふわふわとしたものが入っている。

「サクロヘニカ、これを」

「これは?」

「・・・・・・石壁などに自生する、フェルシカゴケです。微かに光る胞子を出すので、それを目印に残しながら進みましょう。それから、有害な毒素を感じ取ると急激に枯れるので気を配っていてください」

「苔・・・・・・?」

 小瓶を受け取れば、その振動でひらりと胞子が舞った。それは部屋を舞う埃のような淡い光を放ち、床に付着するとより一層眩く輝いた。

 そういえば、フランマは植物の分布を調査するための道具を持参していたような。いつの間に採集していたのだろう。ともあれ、あるに越したことはない。

「へぇ、便利だね。ありがとう」

「気にしないでください」

 澄まし顔で応え、彼は小瓶を首から吊るした。キラリと胞子が舞い、二人の足跡の上に落ちる。

 淡く輝く道標となったそれをしっかりと確認し、サクロヘニカは再び闇の中へと足を進めた。


 静寂と岩に包まれながら、深く、さらに深く歩みを重ねる。

 二つの靴音と滴る水滴の音が、どこまでも反響している。

 サクロヘニカは、徐々に空気が重く澱んでいくのを感じた。通気孔や排水溝が崩れて塞がっているのかもしれない。

 停滞した空気の中に居ては、やがて呼吸が苦しくなるだろう。もしそうなれば、フランマが酸欠で倒れかねない。

 サクロヘニカは周囲を確認し、風魔法を発動した。そよ風のように緩流な魔力の流れを辿らせ、閉塞的な坑道に空気の循環を創り上げる。

 ――しかし少しの間を置いて、底冷えするような酷しい冷気が通路の奥から溢れ出てきた。

 肺が凍てつくような、極寒の空気。サクロヘニカはコートを引き寄せ、顔を歪めた。

「・・・・・・どうして、雨雪もない坑道がこれほど冷え込んでいるんだい?外の方がずっとマシだった気がするけど」

「もしかすると、暗澹たる夜の時代に閉じ込められた空気が未だここに残っているのかもしれませんね」

 平然と語るフランマに、サクロヘニカはどこか憐れむような目線を向けた。

「これほど寒かったのかい?良く生きてたね、フランマ」

「もちろん、何度も死にかけましたよ」

 フランマは眉根を下げて苦笑すると、少し足を早めてサクロヘニカの前に出た。

「寒さには慣れていますし、俺が先導しますよ。少しは風避けにもなるでしょう」

「・・・・・・ちょっと待った。君を風避けにしたと知ったら、先生がもう君を貸してくれなくなる。お願いだから後ろに居てくれるかな」

 フランマを手で制し、サクロヘニカは再び前に歩み出る。冷たい風が体に沁みたが、先生に怒られる方がもっとヒヤリとするだろう。


 小瓶の中身を確認しながら、サクロヘニカは極寒の坑道を進んだ。分岐路に差し掛かった時はフランマに道筋を尋ね、浸水や崩落の無い方へ進む。

 代わり映えしない景色に、サクロヘニカは何の気なしに独り言を零した。

「この鉱山の中って、なんだか土竜もぐらの巣みたいだね。直線的だけど入り組んでいて、所々に休憩室がある」

「・・・・・・土竜の巣の構造を知ってるんですか?貴方は魔法以外に興味が無いものと思っていましたが」

 不思議そうな声色のフランマに、サクロヘニカは気ままな返答をする。

「あぁ、先生の部屋でそのような内容の本を見掛けてね。する事も無かったから少し拝借してたんだよ」

「・・・・・・原初の天使様が目を通している最中の本を、勝手に持ち去らないでください」

 サクロヘニカは一旦口を閉ざした。どうやら、フランマの琴線に触れかけているようだ。

「・・・・・・いつも持ち去ってる訳じゃないよ?」

「同じことです。あの方の仕事を妨害するようなら、書斎への立ち入りを禁止します」

「魔法以外に興味を持つべきだと言っていたのは君だろう・・・・・・」

 つらつらとフランマからの小言を聞きながら、突き当たりの角を曲がった時。

 ふと、サクロヘニカの視界の隅で何かが輝いた。誘われるままに視線を流せば、無垢な煌めきが網膜へと飛び込んでくる。


 ――それは、星のように眩い青色をした鉱石の粒だった。

 ランタンを掲げてみれば、さらに奥へ続く闇の中でも小さな瞬きがチカチカと明滅する。荒削りな岩壁に埋もれた小さな鉱石たちが、遙か往時の記憶を蘇らせる。


 鉱脈が残っているということは、ここは比較的新しい通路なのかもしれない。

 サクロヘニカが鉱石を魔導品に使えないかと思案する一方、フランマはその正体へ思い至ったように口を開いた。

「これは、リルフロータですね。加工が難しいため市場には流通していませんが、月煌石げっこうせきのように魔力に反応して光ることがあると言われています」

「へぇ・・・・・・綺麗な鉱石だね」

 リルフロータと呼ばれたそれらは、呼応するかのように一際明るく輝いた。サクロヘニカは、ゆっくりと星の幕の中へ足を踏み入れる。

 コツコツと靴音が鳴る度に、青白い光が瞬いて広がっていく。リィィンと甲高い反響音が、どこからが響いてくる。

「もしかして、私の魔力に反応してるのかな」

「そうかもしれませんね」

 何気ないやり取りをしていると、ふとフランマの足音が聞こえなくなった。

 振り返れば、彼は影になっているか細い通路のような場所をじっと見つめている。どうやら、分かれ道があったようだ。

「あぁ、こっちにも通路があったんだね。気付かなかったよ」

 少し引き返して、サクロヘニカは細い通路の方を覗き込む。ランタンの灯りに照らされ、通路の奥はより一層深い暗影に包まれた。

 少し目を凝らせば、そこには――満天の星空のような、リルフロータの瞬きがあった。

 今いる通路とはまるで違う、煌々とした輝き。どれもが一等星ほどの明るさで、ゆったりと明滅を繰り返している。少し下り坂になった通路は、そのずっと先の方まで星の光が続いていた。


 どこか底知れない、深い闇夜。連なった星彩は、まるで獲物を釣るための餌だ。


「・・・・・・ねぇ、確かリルフロータは魔力に反応するんだよね?」

「えぇ、そのはずですが」

「だったら、魔法鉱石の鉱脈に反応することもあるんじゃないかな?」

 サクロヘニカが問えば、フランマは難しそうに眉をひそめて小さく唸った。

「どうでしょう・・・・・・魔法鉱石があったとしても、これほど強い反応を示すでしょうか。魔法鉱石はあくまで魔力を保持する鉱石であり、魔力を生み出すことはできません」

 彼の言う通り、魔法鉱石が独りでに魔力を放出することは有り得ないだろう。

 とはいえ、長い時の間に魔力を溜め込んで、溢れ返ったそれが流れ出しているという可能性もある。


 サクロヘニカは感覚を研ぎ澄ませた。もし僅かでも魔力の流れがあれば、感じ取れるだろう。

 冷たい空気と共に、体内を巡る魔力の反響を坑内に張り巡らせる。

 強い魔力の流れは感じない。しかし、強いていえば――


「・・・・・・魔法の気配がする」


 サクロヘニカは、通路の奥深くを探るように目を細めた。

 それはどこか不安定な、封印魔法のようにも思える。しかし、近付かなければ詳細は分かりそうにない。

 ランタンを掲げ、サクロヘニカは通路へ一歩踏み入った。

「行ってみよう。罠だとしても、私たちならば即死はしないだろう」

 その言葉にフランマは一瞬躊躇したようだったが、サクロヘニカが一人歩みを進めれば、渋々といった様子でその後に続いて坂を降り始めた。

 シクラーデ鉱山を彷徨う二つの影は、深淵の中へと溶け込んで姿を消した。



 細い通路を、リルフロータの輝きを辿るように進む。

 これまで通ってきた坑道とは違い、通路は酷く狭隘きょうあいで荒削りだった。サクロヘニカは薄氷に覆われた壁に手を付き、闇に足を取られないよう低所を照らす。

 冷水の伝う壁はあっという間に体温を奪い、ヒリヒリとした不快感が現れ始めた。

 魔法を用いて手早く通路を暖めたい所だが、氷解に伴って坑道が支えを失い崩落することは避けたい。

 冷えた掌をそっと庇うサクロヘニカに、フランマは気遣うような声を掛けた。

「サクロヘニカ、大丈夫ですか?氷に足を取られるようなら、今から引き返しても構いませんよ」

「・・・・・・心配性だね。君こそ、足を滑らせないように気を付けた方がいい。未知の空間まで一直線に転がり落ちるなんてごめんだ」

 僅かな緊張感が漂う中、星の瞬きは一定のリズムで明滅しながら光度を増していく。

 傾斜が緩やかになってきた頃、遠く煌めくリルフロータの光が揺らめいていることに気が付いた。薄ぼんやりとした青い揺らぎが、壁や天井に纏わりついている。

「・・・・・・水があるみたいだ」

 通路の先は、水に浸かっていた。とはいえ膝下程度の水嵩で、残りの通路は平坦なようである。

 半分ほど凍った水に濁りや異臭はない。ただ、水底にどこからか流されてきたであろう鉱石やロープが堆積している。

 サクロヘニカは意見を求めるようにフランマを見遣った。考え込むように目を伏せると、彼は微かに眉根を寄せる。

「・・・・・・恐らく、毒や罠の類はないでしょう。まだ先に進みたいと言うなら、俺も付き合いますよ」

「本当かい?それは良かったよ。ここに君を一人残していくというのは、些か不安だからね」

「最初から行くつもりだったんですね・・・・・・」

 彼はため息を零し、前方を見つめた。リルフロータの輝きはさらに彩やかになって、道を指し示している。

 サクロヘニカは少しの迷いもなく、氷水に踏み入った。


 足元の氷水をかき分けて、幻想的な隘路を進む。冷気が皮膚を刺し、靴の中に染み込んだ水が骨の髄まで凍らせにかかってくる。

 不意に、何かが靴先に触れる感覚がした。崩れた木材か、道具か、それとも。

 ゆっくりと呼吸するように明滅するリルフロータは、まるで地下に閉ざされた空の星座のようだった。水面に揺れるその光が天井や壁に映り込み、通路全体が淡い星光で満たされる。


 静寂の中、水の飛沫が小さく跳ねた音さえどこか遠くで聞こえるように思える。

 サクロヘニカは遠くにリルフロータの輝きが途絶えたことを認め、足を早めた。ぽっかりと口を開けた深淵に迷わず突き進む様は、やはり人智を超えた学者のそれを思わせる。

 星々の絶え間に辿り着くと、息が詰まるような隘路が少し広がった。高さも幅も、主要採掘路の入口ほどのゆとりがある。

 とはいえ相変わらず浸水しており、サクロヘニカは足元を確認するためにランタンで周囲を照らした。

 その途端、水中の何かがキラリと光を反射する。揺らめく水面の下に目を凝らせば、それはツルハシの残骸だった。金属部分はボロボロになり、柄の部分は折れている。付近にも幾つか採掘用の道具が散見されたが、どれも酷く損壊している。

 仄かに嫌な予感を感じながらも、サクロヘニカは前を見据えた。

 目を凝らすと、前方にぼんやりとした影が浮かび上がってくる。


 ――空気すら凍てつくような静寂の中に現れたのは、灰鉄の門だった。

 固く口を閉じる鉄扉は霜に覆われ、その輝きを完全に失っている。ささくれだった継ぎ目は、まるで何者かが扉を突破しようと叩き続けた痕のように歪んでおり、静寂と共に不気味な威圧感を放っている。

 扉の中央には、黒く焼き付いたような魔法式が刻まれていた。先程感じた魔法の気配は、間違いなくこの門から放たれている。

 水の滴る音だけが、孤独な鉄扉を慰めるかのように反響する。


 サクロヘニカは扉に近付き、魔法式に蔓延る霜を拭った。露わになった魔法式は、その構造や理論から古い時代の魔導書を想起させる。

「これ、かなり古い形式の封印魔法だね。少なくとも最近のものじゃない。オルティカーナが亡国でなかった頃に施されたもので間違いないだろう。・・・・・・でも、その時代のものが何故今も発動されているのかな」

 魔法使いの腕にもよるが、一度発動した魔法の効果が持続する期間は長くても数年、短くて数分だ。さらに術者が離れたり死亡したりすれば、強固な魔法式があろうと時と共に消え去る事が多い。

 この魔法を施したものが人智を超えた何かである可能性もあるが、人間の統べる国でそのような痕跡が見つかるだろうか。

「・・・・・・まぁ理由が何であれ、これを解くことに変わりはないんだけどね」

 艶やかな瞳を煌めかせ、サクロヘニカは魔法式に手を添えた。冷えきった鉄扉の温度が、じわりと手に伝わる。

「さぁ、中を見せてもらおう」

 緩やかに魔法が展開する。水面が波打ち、壁際に追いやられた冷水が戦慄く。

 すっかり弱りきった魔法式を破壊することなど、造作もない。

 ピシリと音を立てて、扉を封じる魔法が割れ始めた。霜が溶け去り、扉は本来の輝きを取り戻していく。


 ――手に力を込める訳でもなく、灰鉄の門は独りでに開き始めた。

 驚いたサクロヘニカが一歩引けば、警戒するようにフランマが前へ出る。激しい水の揺らめきのせいで、身体中が濡れている。

 しかし二人の視線は、扉の奥に釘付けられていた。


 門の奥に広がっていたのは、渺渺びょうびょうたる広大な地下空間。

 魔導品であろうランタンが壁際に羅列し、未だ蒼い輝きを放っている。それだけで、この空間の異様さはいとも容易く感じ取れた。

 さながら冥界の様な風貌でありながら、空間全体は仄かに明るくなっている。そのため、ずっと遠くまでがぼんやりと見通せた。

 大小様々な輪郭が薄く、怪しげに揺らめく。壁際や地面、天井付近に至るまで、水晶のように透き通った鉱石の数々が岩影から顔をのぞかせている。

 青紫色に淡く発光し、魔力を含有しているそれは――紛れもない、魔法鉱石だ。それも、膨大な数の。


 眼前に広がる蜃気楼のような光景に、サクロヘニカは思いがけず瞠目した。

 これだけの魔法鉱石があれば、一体どれほど魔導品が創れるだろうか。少なくとも、魔導品開発においてもはや不可能はないだろう。

 どんな魔法を編み出そう。防衛魔法を普及させたら、次はもっと身近な品が良いかもしれない。きっと、エイミの言っていた窯の温度を調整する魔導品だって創れる。


 サクロヘニカは弾かれたようにフランマへ振り返り、大きく両手を広げて高らかに声を発した。愉しげに彼を見据えるラヴェンダーには、興奮が見て取れる。

「どうだい?来て良かっただろう。これだけの魔法鉱石があれば、魔導品製作に大いに役立つ。次なる魔法を編み出しておきたいし、時間が惜しいね。早く戻ってグロウナーシャに伝えよう」

「待ってください、サクロヘニカ」

 足早に通路へ引き返そうとしたサクロヘニカを、フランマが強く制した。群青色の瞳が、鋭くサクロヘニカを射抜いている。

「どうしたんだい?」

「・・・・・・この空間の存在が外部に漏れると危険です。グロウナーシャさんに伝えるのも、折を見てからの方が良いでしょう」

「うん?」

 怪訝な顔をするサクロヘニカに怯むことなく、フランマは至って冷静でいる。灰鉄の門の眼前で、二人は静かに睨み合う。

「この場所は厳重に守られ、そして隠されていました。かつてのオルティカーナの住民が、ここを『隠蔽するべき』だと判断したからでしょう」

「何故、この場所を隠す必要があるんだい?」

「その理由には、魔法鉱石の特別な性質と・・・・・・類稀なる付加価値が関わっています」

 フランマは足元に視線を流した。揺らめく水面の下には、砕けたツルハシが沈んでいる。

「恐らく、かつてのオルティカーナでは魔法鉱石を求めた争いがあったのでしょう。入口付近で亡くなっていた者達が略奪者だったのかも知れません。ですが、今はそれよりも恐ろしい敵がいます」

「果たしてそれは、私が恐れるような相手なのかい?」

 ラヴェンダー色の瞳を細め、苛立ちを顕にする。しかしフランマは一歩も引かなかった。

「――それは、大地の国です。かの国は魔法鉱石の主産地で、その輸出量を制限することで大きな利益を得ています。もしこの鉱脈の存在が知られれば、彼らの富を脅かす・・・・・・もしくは新たな財源として莫大な利益を成すものと捉えられるでしょう」

「・・・・・・つまり、彼らがこの鉱脈を奪おうとするってことかい?」

 彼は深く頷いた。思慮深さを感じさせる群青色は、ランタンの光に照らされて今は紫がかっている。

 地下空間に、しばし沈黙が降り注いだ。

 ――先にそれを破ったのは、サクロヘニカのため息だった。

「・・・・・・分かった。たしかに、彼らを敵に回したくはないし、この場所を放棄するつもりもない。このことは暫く黙っておくとしよう」

 その答えに、フランマは安心したように目元を緩めた。

「分かっていただけて幸いです。貴方が争いに巻き込まれると、原初の天使様にも火の粉が飛びかねませんから」

「・・・・・・私の身を案じていた訳じゃないんだね」

「当然です。俺の主人は貴方ではありませんから」

 いつも通りの辛辣さを取り戻すと、彼は緩やかに元の隘路へ歩き始めた。

 大した光源もないのに、良く転ばないものだ。

 ぼんやりとその背を眺めるサクロヘニカに、フランマは呆れたような声を掛ける。

「・・・・・・早く戻りましょう。今すぐ服を乾かさないと、絶対に風邪をひきます」

 サクロヘニカの返答も待たず、彼はリルフロータの海へ潜ってしまった。水を吸って重みの増したコートと氷水が、サクロヘニカの足をその場に縫い付ける。

 ・・・・・・次に来る時までに、水を切り開く魔法を考案しておこう。

 そう決意し、サクロヘニカは重い足を動かした。





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【オルティカーナの調査記録―抜粋】

 サルベール歴一年十月二八日。オルティカーナ領に到着。

 被害の規模は壊滅的。生存者は見つからず。

 死因は様々で、凍死、餓死、自殺、他殺体も多く見られた。

 シクラーデ鉱山の採掘路入口は鉄扉と■■魔法によって固く閉ざされ、突破は困難。街中に張り巡らされたシクラーデ鉱山へ繋がる地下道から調査したところ、鉱山内は雪解け水により完全に水没しており、再興は厳しいと考えられる。

 考察――採掘路に施された通気孔や排水溝は何らかの要因で塞がった、もしくは何者かによって塞がれたと考えられる。

 また、採掘路入口に施された魔法は都市内にもう一箇所確認された。それはグリュッツェ工房の大型路裏に隠された、地下通路の入口扉である。

 このことから、グリュッツェ工房の工房主であったラヴィーナ・コルネリアによって施された魔法である可能性が高い。そして、彼女の遺体は未だ発見されていない。


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