♯01 マギアリセット

秋月灯

第1話

 「臓器は高値で売れる。それだけじゃ足りんと思うが、さぁ答えなさい。私と入れ替わるか、今ここで死ぬか。」

 もう一人の俺がナイフを首筋に突き立て問う。幕張のとある事務所に俺と俺に瓜二つの女がいる。元はといえば俺の親父が借金を残したのが原因なわけで、俺は黒スーツの巨漢たちに追われるまで借金の存在すら知らなかった。

 「や、やります!やらせてください!」

 俺は土下座して宣言した。してしまった。明日の運命は生と死どっちに転ぶか。


 席は一つだけ


 天音白亜(あまねはくあ)。20歳。中卒。住所不定で求人サイトを使って日雇いバイトで食いつないでいる。両親は中二の冬、失踪した。高校受験を控えている息子の俺を置いて。

 「天音さん。それ列に並べてください。」

 今回のバイトは倉庫整理だ。言われた場所に指定の段ボールを運ぶだけの簡単な仕事。前は友達の実家に居候させてもらっていたが、出張で海外に飛んでしまった。スマホはある。居候時代にいたバイトには2年ちょっと働いていて、その時に知り合った先輩のお下がりを貰った。だが、外で使うには公共Wi-Fiがないとネットが使えない。なにせ通信会社と契約を結べないからだ。部屋を借りられなければ満足に生活するのは程遠い。

 今日のバイトが終わり、日給は大体12000円くらい。貯金は4000ちょっと。日雇いバイトは週に5,6回で月収は平均5,6万。貯金が一向に貯まらないのは、

 「ありがとうございました。」

 袋いっぱいに焼き鳥や缶ビールが両手にある。まさに豪遊。俺は仕事疲れを食事で発散するのだ。今回の豪遊の総額は4870円。貯金が一向に貯まらないのはこういうことだ。河川敷で夜空を眺めながら焼き鳥にかぶりつく。不安定な生活だが、俺は概ね満足している。将来とか老後とかそんなのはならなきゃ解らないことは考えないようにしている。ただでさえ今の生活が不安定なのに未来なんか考えてられない。

 酔いが回ってふらつく足取りで町中を俳諧する。ボサボサの髪の後頭部を掻いて、欠伸をする。路上で寝るのは流石に無理だから何とかして寝床を探さないと。ぼやけた視界を映す瞼を擦ると目の前にはサングラスを掛けた黒スーツの巨漢達が僕を囲んでいた。

 「天音白亜だな?」

 「へ。」

 「お前には多額の借金がある。ともに来てもらうぞ。」

 「は。?」

 スーツの男の問いに間抜けな返事をした。間抜けなのは自分だと知らずに。この後巨漢達にボコボコにされ、車にブチ込まれる。しばらくして幕張のとある事務所に運ばれた。至る所に引き出しや掛け軸があり、質素で生活感が少ないのにどこか不気味で魔境に来た感覚に陥る。ある個室に通された。そこには、

 「お嬢。例の男を連れてきました。」

 まるで鏡を見ている気分になった。そこには俺そっくりな顔を持つ人物が机に座っていた。

 「ご苦労様。下がっていいよ。」

 中性的な声に性別の判別ができない。胸の膨らみが見られないことから男の可能性が高いと思った。髪は俺のボサボサの状態とは天と地ほどの差があり、艶やかで滑らかで整った少し長めの髪型をしていた。スーツの男達が部屋を出た後、会話が始まる。

 「初めまして、屑親の息子さん。僕は可憐。白鳥可憐。ちなみに君と僕の血縁はないよ。」

 可憐?男にこんな名前つけるか?コイツ女なのか?こんな絶壁で?

 「君には2つの選択肢がある。一つは僕の影武者として生きる。もう一つはここで死ぬか。」

 可憐はナイフを首筋に突き立て問う。

 「臓器は高値で売れる。それだけじゃ足りんと思うが、さぁ答えなさい。私と入れ替わるか、今ここで死ぬか。」

 選択肢なんかないような選択肢に文句を言いたくなったが、凶器で脅されて発せられる言葉はこれしかなかった。

 「や、やります!やらせてください!」

 俺は土下座して宣言した。可憐はクスりと笑ってナイフを下ろす。

 「交渉成立だ。これからよろしく、白亜。」

 俺の人生はこれからどうなっていくんだろうか。苦痛で満ちているんだろうか。苦味で満ちているんだろうか。


 「キモいんだよ。死ね。」

 俺は今、いじめを受けている。宝生高校2年の白鳥可憐として初めての高校生活をしている。可憐は1年の一学期で不登校になり、現在の可憐が出来上がっている。可憐の学力は非常に高く、出席点以外は何の問題はない。しかし、彼女を不登校たらしめたのはおそらくこのいじめが原因だと考えられる。俺の初登校、つまり2年に上がった初日のホームルーム終了後、先生が消えた瞬間。

 「おい。」

 女子高生は俺の机に座り、椅子に座っている俺のセーラー服の胸ぐらを掴む。左右には女子高生の味方のように振る舞う女子高生が二人。

 「お前何しに戻ってきやがったんだ?」

 ドスの効いた声に周りのクラスメイトがひそひそと話し始めた。俺の机に座っている女子高生は清水聖花(しみず せいか)。右の女子高生は来栖杏奈(くるす あんな)。左の女子高生は赤羽京子(あかばね きょうこ)。

 「何って勉強しに来たのだけれど。」

 俺は毅然とした態度で答えた。その態度が気に入らないのか怒鳴り声を上げる。

 「人の男振っておいていいご身分だな!!!」

 バチン。と音とともに右頬に強い衝撃が伝わる。周りのクラスメイトに聞こえるくらい大きな音なのに、皆見て見ぬふりをする。男は萎縮し、女は同調するように俺を睨む。この場に俺の味方はいない。

 「言いたいことはそれだけ?」

 無表情で答える。痛がるそぶりは一切せず、落ち着いた声色に気味悪がったのかあっさりこの場から引いた。

 「お前ら行くぞ。」

 三人は教室から出て、他のクラスメイトも次々と帰宅する。心配の声は一切なく、どうやらいじめはこの教室では、いやこの学校では許容されているようだ。2年初日でこの荒れ具合なのだから、1年でもこんな感じだったことが伺える。俺もそろそろ帰ろう。つーか、ビンタすることはないだろ。ヒリヒリするんじゃ。可憐の態度を再現する為に可憐の行動を観察したが、こりゃ友達できねーやって思うような態度でこのいじめも起こるべくして起きたことと言える。あの三人は可憐に初恋の相手を取られたらしい。取られたというか全員降ったから、そのあとに手に入られなかったのは自分のせいだろと思うのだが、これは逆恨みだろう。これは理屈じゃ解決できない問題。かったるいなぁ。

 「か、可憐ちゃん。」

 声の方向に振り向く。ボブカットの小柄な少女が居た。髪色は黒髪で右側をヘアピンで止め、スクールカバンには可愛い猫のストラップが付いている。声は可愛らしいソプラノボイスで、上目遣いで見つめてくる姿は、まさに小動物そのものだった。あまりの可愛さにこの子を娘にしたいとさえ思ったが、それをすると俺の首が飛ぶ(物理)と思って踏みとどまった。

 「あなたは?」

 「えっと、一緒のクラスの小鳥遊 優芽(たかなし ゆめ)って言います。あの、ほっぺ大丈夫ですか?」

 その目には心配の色しかなく、本心だとわかる。

 「少しヒリつくけど問題ないよ。」

 「あ、あのもしよろしければ、あ、あたしがお手当てしてもよろしいでしょうか?」

 友達は多いに越したことはない。何より彼女と仲を深めたい。そうすれば可憐も少しは学校に馴染めると思った。

 「そう?ならお願いしようかな?」

 「は、はい!よろしくお願いします。」

 ぱぁ、と笑顔になり元気よく返事した。俺は彼女に連れられ近くの公園に着く。彼女はカバンを開け消毒液とガーゼとサージカルテープを取り出した。そして丁寧に手当てをしてくれた。

 「ありがとう。手先器用なんだね。」

 「あ、こちらこそありがとうございます。」

 多分可憐ならお礼など言わないだろうが、多少本人の言動からズレても問題ないだろう。

 「どうして僕を助けたの?」

 「そ、それは。え、えっと。その、s、s、好き!だ、だから、です。」

 なんで彼女は可憐のことが好きなのだろう?可憐からは彼女の話は一切なく、今日初めて知り合ったレベルだと思うのだが、もしかしたら彼女はそうじゃないかも知れない。

 「失礼だけど君と何処かで知り合ったっけ?」

 「い、いえ。一目惚れ、です。」

 可愛い。俺も一目惚れみたいな感覚だからめっちゃ共感する。

 「そっか。一目惚れなら仕方ないね。でも今は君と付き合うことはできないんだ。」

 「それはど、どうしてですか?」

 「知っての通り、僕は今、少々厄介事に巻き込まれているからそれを解決してからじゃないと。」

 「そ、それをどうにかできれば、付き合える、てこと、です、か?」

 「うん。だからさ。僕に協力してくれないかな?」


 事務所に帰る。スーツの人が沢山、働いている。事務所は小規模なビルでどうやら金融関連の仕事を生業にしているらしい。

 「お嬢、いや、白亜殿か。お帰り。お茶を用意しよう、疲れただろう。」

 「ありがとうございます。榛葉さん。」

 榛葉 武彦(しんば たけひこ)。この事務所で一番優しい人。この人が事実上可憐の親で、俺と可憐の面倒を見てくれている。

 「学校は、まぁ大変だったろう。」

 紅茶を持ってきて話始めたが、学校の単語を聴いた途端に暗い表情になった瞬間に察してくれた。正直思っていることが顔に出てしまうのは治したいんだが、役に成りきっている時でないと中々できない。

 「可憐本人はどうしたいんでしょうか。」

 「それは本人に直接聞きなさい。それが最も効果的でしょう?お嬢にとってもあなたにとっても。」

 榛葉さんは的確なアドバイスをくれて本当に有難い。早速彼女がいる部屋に向かう。

 「白亜、僕になんか用?こう見えて忙しいから、短く簡潔にお願い。」

 キーボードをカチカチと鳴らし、ノートパソコンを動かす。コーヒーの匂いが部屋に充満し、ポットがお湯の出来上がりを告げる。

 「白亜。コーヒー。」

 「はいはい。」

 俺は彼女にインスタントコーヒーを出した。

 「可憐は学校に行きたいのか?行きたいなら、あのいじめっ子をどうにかする。興味ないなら俺は学校には行かない。」

 そう言うと、鋭い目つきで俺を見上げる。

 「へー。奴隷の分際で随分な物言いだね。まぁいいよ、答えてあげる。学歴は欲しい。だけど学校には学べるものがない。だから学校には行かない。」

 なんだか彼女の感覚は、ステータスを得るための最短ルートを走っているように思えた。おそらく俺がいなかったら学校を中退していただろう。

 「仕事の邪魔だからさっさと出てって。」

 俺は素直に引き下がる。答えは得たし、策も思いついた。ポケットのスマホを取り出し、通販サイトを開く。


 学校生活二日目。俺は清水聖花、来栖杏奈、赤羽京子の3人を校舎裏に呼び出した。

 「こんなとこに呼びつけてなんのつもり?」

 清水が口を開く。腕を組み、偉そうな態度を取る。他2人も威嚇の表情を崩さない。

 「まずはあなた方の恋路を僕の美貌で台無しにしてしまったことについての謝罪を。」

 「テメェふざけてんのか?それが許しを請う人間の態度かぁ!?」

 清水が激昂する。がやがやと他二人も怒号を飛ばす。

 「事実でないことがあったなら訂正します。」

 「お前が裕君を誑かしたんだろ。!!!」

 「誑かしたというには具体的にはどのように?」

 「色仕掛けとか思わせぶりな言動をしたんだろ!!!」

 「それは本人から聞いた情報ですか?」

 「聞かなくたってわかるだろ!裕君と何年一緒にいると思ってんだよてめぇ!!!」

 知るかよそんなの。

 「それはあなたの想像が含まれています。アプローチをかけてきたのはあの3人からで、こちらからアプローチをかけたことはありません。そもそも3人とも振っているのですから、その後彼等を物にできなかったのは単純にあなた方に興味が無いだけです。」

 「なんだと!?」

 「くだらないいじめをする暇があったら、大人しく意中の彼を落とす為に自分磨きでもしt」

 右頬を思いっきり殴られた。

 「黙れ!!!お前に何が分かる!!!お前なんかに!!!」

 他二人の静止を無視して俺の胸ぐらを掴む。

 「おい!こんなところで何をしている。」

 先生が窓から叫ぶ。3人は処分を恐れてすぐさま現場を退く。全て筒抜けとも知らずに。

 「ちゃんと取れたかい?」

 「は、はい。ばっちりです。」

 「助かったよ。ありがとうね。」

 優芽の頭を撫でる。幼児みたいな外見だがれっきとした高校生というのが急に犯罪感が増す。いやそもそも高校生に欲情している時点で犯罪だという正論はやめてくれ。俺に効く。


 学校生活三日目。清水聖花、来栖杏奈、赤羽京子の3人は教室には来なかった。そして15:30。帰りのホームルームは真剣な表情の先生が教室に入ってきて始まった。

 「突然だが、清水、来栖、赤羽の三人は昨日、停学処分が決まった。理由は白鳥へのいじめだそうだ。」

 周りがざわざわと話し始め、憶測が飛び交う。

 「みんなは白鳥へのいじめを知っていたのか?」

 皆俯いて押し黙る。それは無言の肯定。優芽はキョロキョロして戸惑いの表情をこちらに向ける。困り顔の彼女をもっと見たいがそろそろ仕上げといこう。手を挙げ、口を開く。

 「先生。この場で皆に話したいことがあります。」

 先生は教卓を明け渡し、近くの学習椅子に腰かける。俺は教卓に立ち、クラスメイトを見下ろす。気まずそうな表情を浮かべて指いじりをする女。関係ないと信じたくてそっぽを向く男。そもそもどうでもよくて机に突っ伏して堂々と寝ている男。見渡せば本当に色々な人がいる。息を整えて、言葉を繋ぐ。

 「今回、清水聖花、来栖杏奈、赤羽京子の3人からいじめに遭い、いじめの証拠を市の教育委員会と校長先生に提出し、彼女達を停学処分まで追い込みました。いじめの原因を突き止め、該当者に聞き込みをし、本人に真偽を確かめさせた結果です。やりすぎと思う人もいるかもしれませんが、そう思う人はそもそもいじめに関して見て見ぬふりを続けた、先生と小鳥遊優芽以外の人が該当者だと思っています。」

 クラスメイトは反論せず、そのまま聞く姿勢を取り続ける。

 「本当はいじめを見て見ぬふりを続けた全員を停学にさせたかったけど、処分に足る理由にはならなかった為、報告はしませんでした。」

 クラスメイトは怯えてビクついている。おそらく俺に何されるか分からないから。

 「高校は義務教育ではなく、自分で選んで入った人生の転換点です。それはつまり、道を間違えたら自分で修正しなければなりません。高校を出た後の進路が不安定な今、自分の行動一つで行きたい進路が無くなるかも知れないことを覚えておいてください。」

 これくらいでいいかな。きっと明日には皆忘れていると思うが。

 「いじめの件に関して質問があるなら挙手をどうぞ。」

 しばらくして一人のツインテの女子高生が手を挙げる。

 「清水ちゃん達は好きだった子を白鳥さんに取られたんだから停学処分には納得できない、です。」

 「清水さん達の恋路を不可抗力とはいえ邪魔してしまったのは申し訳ないと思っています。しかし、アプローチをかけてきたのは他でもない清水さん達の意中の相手。そして、僕は彼等の告白にはっきりと断っています。その後に彼らを物にできなかった彼女達が取った行動が、今回起きたいじめなわけです。そして、学校初日のいじめで僕は右頬を打たれました。これは立派な傷害事件です。彼女たちは高校生で命拾いしましたね。成人していたら逮捕されて人生詰んでましたから。」

 「そ、そんな言い方ないでしょう?」

 「ならどう言えばいいんですか?」

 ツインテの女子高生は黙ってしまった。

 「まぁ黙って当然ですね。だって遭遇したことがないんだから。他に質問はありますか?」

 誰も手を挙げず、この演説みたいな、説教みたいな俺(可憐)の一人話が終わる。その後は、簡潔に先生が話をまとめて生徒を帰らせた。俺と優芽を残して。

 「いじめのこと気づけなくて本当にすまなかった。」

 頭を下げ謝罪をする。

 「もっと注意深く見ていれば未然に防ぐことができたはずなのに。」

 これはかなり予想外な反応だ。先生なんて薄給なんだからもっと適当にしてるのかと思ってた。

 「別に先生が謝罪する必要はありませんよ。いじめは本来、先生に見つからないように行うものです。それに第三者からはいじめかいじりか、区別することなんてできませんから。」

 「そ、そうですよ。これは仕方ないこと、です、よ。」

 優芽は言い切る前に俯いてしまった。

 「所詮思春期のガキがやった遊びです。それを金と科学技術で解決したに過ぎません。」

 「ちなみにどうやったんだ?」

 当然の疑問だろう。この先生になら問題ないだろう。

 「誰にも言わないなら。」

 「あぁ。教えてくれ。」

 「今回のいじめは原因がはっきりしていました。なので優芽と協力して彼女ら三人の証言を僕が、意中の相手ら三人の証言を優芽が集めました。そして、念のため、彼女ら三人が初日のように手を上げる可能性があるので、スマホで動画を撮りました。証言は、高音質のボイスレコーダーで録音しました。」

 「そ、そこまでしていたのか。」

 少し引いている感じだ。顔が引き攣っている。

 「はい。海外の警察に比べればマシですが、所詮証拠が無ければ司法も警察も動きません。教師も同じですが。とまぁ、こんなところです。」

 「そうか。教えてくれてありがとう。辛かったよな、大変だったよな。本当によく頑張ったな。」

 その顔は慈愛の目で我が子を見るような、そんな顔だった。涙が頬を伝い、自分のことのように悲しみを浮かべる先生を見て、俺を捨てた親ならどんな反応を示すのだろうか?


 俺は優芽と二人で公園のベンチに座り、お菓子を食べていた。

 「ねぇ、優芽。告白の返事だけど。」

 「ん、ごほぅ!!!!」

 お菓子を喉に詰まらせ、女の子が出しちゃいけないような声を出した。

 「げほっげほっ。す、すみません。突然なもので。」

 「それにしても驚きすぎだよ。準備いいかい?」

 「ちょ、ちょっとまってください。すーーーーーはーーーーー。は、はい!お願いします!」

 「それじゃ、目、閉じて。」

 優芽は目をギュッと瞑る。頬を赤く染め、キス待ちの表情が可愛い過ぎてブチ犯したくなるが、豚箱に入れられるのは嫌なので、おでこにキスをした。優芽は目を大きく開いておでこを抑える。頭から湯気が見えるような気がするくらい真っ赤な顔が最高に可愛い。

 「僕でよかった喜んで。」

 「ん~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!こ!こちらこそ!!よろしく!!!お願い!!!!します!!!!!」

 この子に真実を告げるのはかなり先かも知れないが、大人になって気持ちが変わらなかったら、その時はぜひとも結婚したいものだ。


 「お帰り。白亜殿。学校はどうだったかい?」

 「ただいま。とりあえずは一件落着って感じです。」

 ソファに腰掛け、脱力する。肩の荷が降りてどっと疲れが来たような感覚が全身に広がる。

 「それで今後はどうしていくんだい?」

 「おそらく俺が引き続き可憐として通うことになると思います。」

 「そうか。まぁ、あの子が決めたんなら私が言うことは特にない。これからも影武者としてよろしく頼むよ。」

 初めての高校生活。まさかこんな形で始まるなんて思っても見なかったが、世界に振り回されるのは慣れている。将来のことは考えない。考えられるほどの余裕がないから。

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♯01 マギアリセット 秋月灯 @akiduki-tomori

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