幼なじみの男の子は男らしい女の子で女っぽい幼なじみは男でした《加筆改稿修正版》

常陸之介寛浩◆本能寺から始める信長との天

プロローグ:温泉での再会と混乱

「おい、何恥ずかしがってんだよ! 童貞ならさ、俺と済ませちまおうぜ。俺の処女、もらってくれるよな?」


 幼なじみの千陽ちはるがニヤリと笑いながら俺に迫ってきた瞬間、頭の中が真っ白になった。


 離れて暮らすようになって9年。久しぶりに会った親友と温泉旅行に来たはずが、なぜこんな状況に陥ってるんだ? 俺の理解が追いつかない。


 千陽は男らしくタオルを肩に引っかけて隠す素振りもなく、堂々と風呂場に踏み込んできた。湯気の中、俺の視線は自然とそいつの股間に落ちる。そこには……あるはずのものがない。


「えっ?」


 俺と同じチンコが付いてるはずなのに、ない。


 ない!


 思わず風呂の隅に逃げ込んで、


「きゃーーー!」


 と情けない悲鳴を上げてしまった。


「ははっ、可愛い声で鳴くなよ。いいじゃねぇか」と千陽は笑う。


「待て、待て、本当に待ってくれ、千陽。チンコはどこ行ったんだよ? 海外にいる間に性転換でもしたのか?」


 混乱しかない。


 唯一無二の親友に付いてるはずのものが、忽然と消えている。しかも千陽はそれを仁王立ちで隠す気もなく、惜しげもなく見せつけてくる。男らしさなんて言葉じゃ収まりきらない大胆さだ。


 よく見ると、薄い毛が綺麗に整えられていて、「埋もれてるだけかも」という淡い期待すら打ち砕かれる。そこにあるのは、紛れもなく女の証だった。


 初めて目にするその「丘」。思春期の男なら誰もが夢に見る、あの憧れの丘が目の前に堂々と存在している。


「何言ってんだ、リュウちゃん? 俺、生まれたときから女だぜ?」


 千陽は湯船に膝まで浸かりながら、平然と言い放った。


「はあ?」


 俺の声が裏返る。


「ほら、ちゃんと見ろよ。ないだろ?」


 腰に手を当て、大股を開いて腰をクイッと突き出す千陽。お腹はほどよく引き締まり、あと少しで腹筋が六つに割れそうなほどだ。そして下は……確かに「二つ」に割れている。


 見たい。見たくない。見たいけど、見れない。


 凝視なんてできるわけがない。恥ずかしさが俺を支配する。


「バカ、そんな見られるかよ!」


 声を荒げて抗議すると、千陽はニヤニヤしながら続ける。


「恥ずかしがるなって。俺とリュウちゃんの仲だろ? 初めて見る女の性器、どうだ? 入れてみたいだろ? 思春期の男ってさ、穴ならなんでも入れてみたいって雑誌に書いてあったぞ」


「どんな雑誌読んでんだよ! それより、俺とお前は親友だろ? 親友同士でそういうことしないんだよ!」


 背を向けて必死に言い返す俺に、千陽は勢いよく湯船に飛び込んできた。


「うりゃ~! 誰がそんなルール決めたんだよ? 別にいいじゃん!」


「うわっ、抱きつくな!」


 ダイビングしてきた千陽に背中からがっちり捕まれる。背中に当たるのは、ぷにゅりとした柔らかい感触。小さめだけど確かに主張する二つの「山」。女の胸だ。


 おっぱいだ。サイズは……Aカップくらいか? それでも柔らかさが背中に伝わり、全神経がそこに集中してしまう。


 そして、まずいことに、俺の股間が反応し始める。


「俺、出る!」


 慌てて叫ぶと、千陽はニヤリと笑って、


「おっ、出すか?」


「違うーー!」


 温泉の滑りやすい床を利用して、なんとか千陽の腕から抜け出し、俺は湯船から飛び出した。


 背後から聞こえてきたのは、


「ちっ、失敗したか」


 という千陽のハスキーな声だった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る