無気力で実は最強剣士な俺はヤンデレ姉妹に囲まれてとことん愛される
赤城京間
第1話 剣道部に入部してきたのは最強の女剣士?
千葉県館山市阿鼻高校、満開の桜、新入生たちの笑顔と笑い声、去って行った生徒を想い、新たに迎え入れた生徒たちを見守る教師たち。そんなどこか浮ついた空気の流れていたこの高校に、一人だけつまらなそうに漫画を頭に乗せながら寝ている男の姿があった。
蛍「部長! ま~たさぼりですか!」
一年生の剣道部員である八剣蛍(やつるぎほたる)は部室の端で上手い具合に防具入れを組み合わせて造られた秘密基地で眠る宮本剣影(みやもとけんえい)にそう呼びかけた。
剣影「…………うるさいなぁ、もう少し寝かせてくれよ。」
蛍「駄目ですよ! 二人しか部員が居ないんですから!」
剣影「お前もサボっていいから。」
蛍「もう…………(は~今日もかっこよ過ぎる~寝顔も最高だけど起こさないと練習できないしな~)」
袖雪「たのも~!!!」
突然部室に響いたのは時代錯誤もいいとこの怒号、体育館の方から聞こえた様だが……………
剣影「おいおい、今は2025年だぜ? 一体誰が………………」
蛍「お姉ちゃんの声だ………………」
剣影「お姉ちゃん?」
ドドドドドドッ
剣影「何の音だ?」
蛍「ぶ、部長! 逃げて!」
剣影「逃げる?」
蛍「あ、あのお姉ちゃんが部長を見たら………………」
バンッ!!!
剣影「うおっ!?」
鉄製の扉が弾け飛ぶんじゃないかと思う程の勢いで扉が開き、ずかずかと白い道着を着た黒髪の美人が現れた。
袖雪「剣道部部長を出せ!」
蛍「お、お姉ちゃん! 剣道部には入らないって約束でしょ!」
袖雪「ぬるい! 部員が二名とはどういう事だ! 少なすぎる!」
蛍「そ、それは剣道自体が人気無くて………………」
袖雪「それに! 県大会どころか、市民大会でも一回も勝つ事ができてないそうじゃないか!」
蛍「まあ弱小だから………………」
袖雪「いいから部長を出すんだ蛍!」
剣影「(何なんだこいつは…………めっちゃ美人だが声がでかいし、偉そうだな…………無視して寝よ。)」
剣影は無視して寝る事にし、毛布を頭まで被ったが、袖雪が近づき、毛布をはぎ取った。
袖雪「貴様が部長だな?」
剣影「ち、違いますぅ。」
袖雪「部員は二人、一人は蛍。じゃあお前は?」
剣影「し、しがない野球部ですぅ。」
袖雪「何で野球部が此処で寝ている?」
剣影「ここが一番日当たりがよくってぇ………」
袖雪「表へ出ろ、私と勝負だ。」
剣影「ええ? 道着だって来てないし、竹刀の手入れだってな………」
袖雪「何? 最後に竹刀を握ったのは何時だ?」
剣影は少し体を起こし、近くにあった竹刀を一瞬触った。
剣影「二秒前。」
袖雪「………………私を馬鹿にしてるな?」
剣影「いや~?」
蛍「もう! 喧嘩は止めて下さい!」
袖雪「寝ながら話すなんて失礼な奴だ! 先ずは起きろ!」
そう言いながら袖雪は剣影の体を無理矢理起こした。
蛍「(触らないでよお姉ちゃん、うちの部長なんだから……)」
剣影「お前は何なんだ! 入部しに来たのか!」
袖雪「そうだ! 私が叩き直してやる!」
剣影「却下! 部長権限で入部を却下する!」
袖雪「決めるのは顧問だ! いいから勝負しろ! 私が負けたら大人しく引き下がってやる! だが、貴様が負けたら部長の座を譲ってもらうからな!」
剣影「はぁ………分かったよ。先に体育館に行っててくれ。」
袖雪「なるべく早く来るんだ。」
そうして袖雪はドアも閉めずに部室から出て行った。
剣影「何だったんだ………………」
蛍「ごめんなさい、あの人うちのお姉ちゃんで、厳しい性格してるんです。後でうちから言っときますから………………」
剣影「まあ負けたら大人しく引き下がるって言ってるし、ちょっと行ってくるわ。」
蛍「お姉ちゃん、強いですよ?」
剣影「俺も強い。」
剣影は風呂敷の中から道着を取り出し、近くにあった竹刀をざっと点検した後、着替えようとした。
剣影「おい、着替えるから出てってくれ。」
蛍「え? は、はい!」
蛍は部室を出て、体育館に歩いて行くと見せかけて直ぐに部室の
ドアの前に戻り、ドアに耳を当てた。
蛍「(はぁ……はぁ………部長がこの中で着替えてる…………そう考えるだけで………はぁ…………)」
袖雪「な、何をしてるんだ蛍?」
蛍「お、お姉ちゃん!? 体育館に居るんじゃ!?」
袖雪「いや、審判を蛍に頼もうと思って旗を取りに来たんだが…………」
蛍「な、何でもないの! ちょっと暑くてひんやりしたドアに顔を付けてただけで!」
袖雪「そ、そうか、じゃあ旗を持ってきてくれ。」
蛍「わわ、分かった!」
バンッ!
蛍「あっ。」
蛍は勢いで扉を開けてしまい、中には剣影が上裸で今にもズボンを脱ごうとしていた時だった。
剣影「な!? 何で開けてんだよ!」
蛍「すす、すみません~!!!」
蛍はそのまま顔を真っ赤にしながら体育館の方に走って行った。
剣影「今日は厄日だぜ……………おい、早く扉を閉めてくれ。」
剣影はそう頼んだが、袖雪は構わず入って来て、旗を探し始めた。
剣影「旗なら俺が持ってくから。」
袖雪「気にするな。」
剣影「気にするなって………………」
袖雪は旗を見つけると手に取り、部室を出ようとしたが、道着のもつれが気になり、その場で袴を脱いで直し始めた。
剣影「な、何で脱いでんの!?」
袖雪「朝から着ているせいでずれてた様だ。」
剣影「俺が居るんだけど!?」
袖雪「だから?」
袖雪は袴を直すと部室を出て体育館に向かった。
剣影「(パンツ見えた……………)」
剣影は頭を切り替えて着替え、胴とたれを付けて面と小手と竹刀を持って体育館に向かった。
蛍「この線が試合場で、こっちの線が開始線ね。」
体育館に行くと蛍が袖雪に試合場の説明をしており、袖雪は既に面を被っていた。
蛍「あっ! 部長! もう準備できましたよ!」
剣影「ああ。」
剣影は正座し、竹刀を置いて面を付け、小手も付けて竹刀を持って立ち上がった。
剣影「色は?」
蛍「部長が赤で、お姉ちゃんが白です。襷は付けるのが面倒なので、覚えてください。」
剣影「分かった。」
剣影と袖雪は位置についた。
蛍「三本先取で、時間は3分。いいですか? では、赤! 剣道部部長! 宮本剣影!」
剣影「はい。」
蛍「白! 八剣袖雪!」
袖雪「はい!」
二人は試合場に入り、一礼した後、三歩歩いて開始線で竹刀を構えながら蹲踞した。
蛍「始め!」
先ず仕掛けたのは袖雪、間合いを確かめながら速攻を決めるべく、面を打った。
袖雪「(悪いが、速攻でいかせてもらう。)」
バンッ!
袖雪「(なっ!?)」
剣影はその面が放たれる瞬間に出ばな小手を打ち、そのまま袖雪に体当たりしてふっ飛ばし、残心をした。
剣影「油断したな。」
蛍「小手あり~!」
袖雪「そ、そんな……………」
袖雪は動揺しながらも立ち上がり、二人は位置についた。
袖雪「(まぐれだ。そうに決まってる……………)」
蛍「始め!」
袖雪は様子を見る事に決め、剣影を誘いだそうとした。
袖雪「(どうでる? 絶対に返してやるからな。)」
ずっ
袖雪「っ!」
剣影が何かしらの技を打とうとしたのを察知した袖雪は、即座に出ばな技を打とうとしたが、誘い込まれたのは逆に袖雪の方だった。
バンッ!
剣影は袖雪のはなった面に対して返し胴を放ち、胴に当たった竹刀は快音を奏でながらその先を床に滑らせた。
蛍「胴あり~!」
袖雪「そ…………んな………………」
二人は開始線に戻り、袖雪は震えながらも所作をきちっとこなして試合場を出た。
剣影「ふう………………」
剣影はさっさと面を外し、防具も雑に取ってその場を去ろうとした。
袖雪「待ってくれ!」
袖雪が剣影を引き留め、駆け寄ってきた。
袖雪「はぁ………はぁ…………私の負けだ。」
袖雪は息を切らしながら汗で濡れた髪を整えてそう言った。
剣影「ああ、じゃあな。バスケ部とかおすすめ。」
剣影はそう言って立ち去ろうとしたが………………
袖雪「た、頼む! せめて剣道部には入れさせてくれ!」
剣影「約束が違うが?」
袖雪「な、何でもする! 色々聞きたい事もあるんだ!」
剣影「やだ。」
ぐっ
袖雪「は、離さない!」
袖雪は剣影を拘束し、離さなかった。
剣影「は、離せって!」
袖雪「た、頼む、何でもするから!」
剣影「じゃあ諦めろ!」
袖雪「それ以外で!」
剣影「と、取り合えず戻らせろ!」
剣影は何とか逃げ、袖雪はそれを追った。
蛍「(お姉ちゃん、部長とあんなに楽しそうに…………うちの部長なのに。なんとかお姉ちゃんを剣道部に入れない様にしないと…………絶対に。)」
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