第11話 ただの人間が、魔法使いを殺しただと……?

 八谷と対峙する。八谷は鋭い目で、ぼくを見ていた。たまにチラチラと割葉をみていたが、あくまで標的はぼくのようだ。考えてみれば、あいつはぼくが谷を殺したと思っているのだから、それは当たり前かもしれない。

 ぼくと八谷とは10mほど距離があった。これだけ離れていれば、大抵のことが対処できるはずだ。

 八谷は特に距離を詰めることなく、そのまま、直立したまま声を発する。

「お前、名前は」ドスを効かせたいのか、低めの声だった。

「深椎木 言誤。キミは、八谷 引鉄で間違いないかな」

 八谷は答えない。こっちは答えたというのに、無作法な奴だ。これだから最近の若者は嫌いなんだ。男女問わず。


「お前、谷を殺したのか」

 ……せっかく名乗ったというのに、お前で呼ばれるとは。

「うん。そうだけど」

「どうやった」

「轢き殺した」

 八谷の目が、一層険しくなる。知らないのか、と思いつつ、ぼくは説明してあげる。

「ああ。簡単だったよ。後をつけて、一人になったところを背後から」

 ドーンと、ジェスチャーをつけてあげると、もう八谷の怒りは限界のようだった。怒気が見えてきそうだ。


「谷は、あいつは、魔法使いだったんだぞ」

「知っているよ? 空間創造の魔法を使うことも知ってる。だから、即死させたんだ」

「お前は魔法使いか?」

「残念ながら、違う」

 違う。その言葉を聞いた瞬間、八谷の顔が間抜けなまでに崩れた。はあ? と全身で表現していた。


「ただの人間が、魔法使いを殺しただと……?」

「別におかしいことじゃないだろ。魔法使いだっていっても、もとは人間だ。轢き殺せば死ぬ」

「あいつは、魔法使いだったんだぞ!」

「五月蝿いなあ。だからなんだってんだ。魔法使いがあれだけ人間を殺しておいて、人間が魔法使いを殺すのは間違ってるっていうのかい?」

 八谷が黙る。反論も返ってこない。『だからなんだ、こちらは魔法使い様だぞ』ぐらい言ってくれれば、まだキャラが立ったというのに。

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