お好きな方をお選びください。

ゆーま(ウェイ)

プロローグ:お選びください。

その日を境に、この国は地獄と化した。もちろん比喩なんかじゃない。本物の地獄になったんだ。

学校会社家庭友人仲間家族。当たり前だった幸せな日常は一瞬にして崩れ落ちた。そんな現実を誰も受け入れようとしなかった。俺だってこれは夢なんじゃないかって思ってる。兄弟を奪われてなお受け入れられない自分に腹が立つ。だけど、国に政治に司法に社会に支配されている俺達国民は受け入れざるを得なかった。この現実を嚙みしめて生きなければいけなかった。

それが、この『権利』のルールだから。


         *****


爽やかな朝、鳥たちの元気な鳴き声、身体を包む温かな毛布。そんな当たり前は当たり前じゃない特別だってことに普段の生活で気付けるわけがない。でも知ってほしい、お腹が空いたらご飯を食べて、眠たくなったら寝て、欲しい情報がすぐ手に入って、それが特別で有難いことなんだって。だって自分の生まれてくる環境が少しでも違ければ…なんてこと考えるのはやめましょうか。とにかくいつも通りのいつもを大切にしてくださいね。

どうしてこんなことを語るのかって…?

まだ気づかれていないんですか?でしたら相当お花畑な脳みそなんですね。今回だけ特別に教えてあげます。あっ、これも当たり前じゃない特別ですね。感謝してください。

まず、ここはもうあなた方の知る日本じゃありません。外に出れば銃弾が飛び交い、道路には地雷が埋まってるかもしれない。あなたの頭上に爆弾が落ちるかも!!

って言うのは冗談です。あっはは、怒らないでください。ほんの悪ふざけです。

ですがここは、それ以上ですよ。どうですか?当たり前が崩れるのは怖いですか?今なら引き返せます。元の日本に戻って当たり前に生きていてください。しつこい早くしろ…これは失礼しました。私もったいぶって話すのが好きで。

この日本国民の生活はあなたたちと変わりないでしょう。食べ物もあるベッドもある夜には灯りをつけれるし学校にだって行きます。何が恐いかって、日常のすぐ隣に死が潜んでること。全ての動作中も死に怯えて過ごすこと。朝起きてから睡眠中まで常に狙われているんですよ、”権力を得た”方々に。

登校中退勤中御食事中睡眠中排便中勉強中電話中読書中感傷中御話中行為中四六時中あなたは殺されるかもしれない。”有権者”共に。

そんな日本…いえ、地獄にあなたはもう片足突っ込んでいますよ。共に味わいましょ。不可視で息を殺して命を奪う恐怖の日本を。


さて、よく分かっていませんね。それでいいんです。このお話はあくまでフィクションですから。

ここまで読んでいただきありがとうございます。ここでリタイアしていただいて構いません。ですが、まだ付き合ってくれる方には次からのお話を読んでいただければ幸いです。

フィクションの、地獄と化した日本を生き抜いた六人の勇者たちのお話です。彼ら彼女らがどのようにして地獄を恐怖を切り抜いたのか、是非ともご覧あれ。

さあさあ始まります!!勇ましい勇者どもの英雄譚、開演!!


あれ?なんか一匹違うのが混ざってるな…まあいっか。

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