第13話:深まる絆と忍び寄る影

真壁基氏と真壁碧純は、つくば市のアパートで新たな日常を続けていた。


 朝、リビングで朝食を食べながら、碧純が笑顔で言った。


「お兄ちゃん、今日の味噌汁、ちょっと自信作だよ。どう?」


「あぁ、美味いよ。お前、ほんと料理上手くなったな」


「でしょ? お兄ちゃんの専属シェフ目指してるからね」


「頼もしいよ。お前、俺の大事な女だからな」


 碧純が顔を赤らめ、基氏の手を握った。


「お兄ちゃん、私、毎日幸せだよ」


「俺もだよ。お前がそばにいるからな」


 二人は笑い合い、学校と執筆の忙しい一日をスタートさせた。


 碧純が学校へ行くと、基氏は原稿に向かった。


 新作の妹キャラは、碧純の影響を色濃く反映していた。


「お前のおかげで、こんな話しか書けねえよ」


 苦笑しながらも、締め切り前に原稿を仕上げ、編集者に送った。


 その日、碧純は学校でクラスメイトと話していた。


「真壁さん、最近楽しそうだね。何かいいことあった?」


「うん、家族と仲良くしてるからかな」


「お兄ちゃんとも? いいなぁ、私もお兄ちゃん欲しいよ」


「うん、お兄ちゃん、大好きだよ」


 笑顔で返す碧純だが、心の中では「恋人でもあるんだよ」と呟いていた。


 昼休み、図書室で本を整理していると、クラスメイトが近づいてきた。


「ねえ、真壁さん、『茨城基氏』の新作読んだ?」


「う、うん、読んだよ」


「やっぱり妹物最高だよね。お兄ちゃんが素敵すぎる!」


「……そうだね。お兄ちゃん、優しいよね」


「真壁さんのお兄ちゃんもそんな感じ?」


「うん、優しくて、ちょっと変だけど、大好きだよ」


 クラスメイトが目を輝かせた。


「いいなぁ。私、『茨城基氏』のお兄ちゃんみたいな人に会いたいよ」


 碧純は苦笑しつつ、心の中で複雑な気持ちを抱えた。


「お兄ちゃん、私のことモデルにしてるって、バレたらどうしよう」


 夕方、アパートに戻ると、基氏がリビングでコーヒーを飲んでいた。


「お兄ちゃん、ただいま。原稿終わった?」


「お帰り。あぁ、さっき送ったよ。お前、夕飯何にする?」


「うーん、実家の猪肉まだあるから、シチューにしようかな」


「いいな。頼むよ、専属シェフ」


「うん、お兄ちゃんのために頑張るね」


 碧純がキッチンに立つと、基氏がスマートフォンを手に取った。


 編集者からの返信が来ていた。


『茨城先生、新作最高です! 読者の反応も楽しみですね。次の企画、どうします?』


「……次か。妹物以外も考えてみるか」


 返信を打ちながら、基氏は呟いた。


「お前がいるから、妹物しか書けねえけどな、碧純」


 夕飯のシチューを食べながら、碧純が切り出した。


「お兄ちゃん、私、今日学校で『茨城基氏』の話聞いてたよ」


「そうか。どうだった?」


「みんな、お兄ちゃんの書くお兄ちゃんが素敵だって。私、ちょっと嫉妬しちゃった」


「嫉妬? お前、何だよそれ」


「お兄ちゃん、私だけの恋人でいいよね?」


「あぁ、いいよ。お前、俺の大事な女なんだから」


 碧純が笑顔で寄り添った。


「お兄ちゃん、私、ずっとそばにいるよ」


「俺もだよ。お前と一緒なら、なんでもやれる」


 その夜、二人は寄り添って眠りについた。


 だが、平穏な日常に影が忍び寄っていた。


 翌日、基氏のもとに知らない番号から電話がかかってきた。


「もしもし、茨城基氏さんですか?」


「あぁ、そうだけど、誰だよ」


「私、出版社の者なんですけど、ちょっとお話ししたいことがあって」


「……何だよ」


「実は、読者から噂が立ってるんです。茨城先生の妹キャラが、実在の人物に似てるって」


 基氏の心臓がドクンと跳ねた。


「何!? 何だよ、その噂」


「ネットで話題になってて、『茨城基氏の妹キャラは実妹がモデルじゃないか』って。ファンの間で盛り上がってるんですよ」


「……冗談だろ」


「本当なんです。もし事実なら、面白い企画になるかなって」


「事実じゃねえよ! フィクションだよ、あれは!」


「そうですか。でも、読者の興味を引くなら、少し乗っかってもいいかもですよ」


「ふざけんな! 俺のプライベートに首突っ込むな!」


 電話を切り、基氏は頭を抱えた。


「碧純がモデルだって、バレたらどうなるんだよ……」


 その夜、碧純が帰宅すると、基氏の様子がおかしかった。


「お兄ちゃん、どうしたの? 顔色悪いよ」


「……ちょっと仕事で揉めてな」


「何!? 大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だよ。お前、心配すんな」


「うん。でも、お兄ちゃん、私に隠し事しないでね」


「……分かったよ」


 基氏は黙って碧純を抱き寄せた。


「お前、俺の大事な女だよ。守るからな」


「お兄ちゃん、私もお兄ちゃんを守るよ」


 二人は抱き合い、不安を共有した。


 だが、ネットの噂は広がりつつあった。


 数日後、碧純が学校でクラスメイトから聞かされた。


「ねえ、真壁さん、知ってる? 『茨城基氏』の妹キャラが実妹モデルだって噂だよ」


「え!? 何!?」


「ネットで話題になってるんだって。ほんとかなぁ」


「……分からないよ。そんなことないと思うけど」


 笑顔でごまかしたが、碧純の胸はざわついた。


 帰宅後、基氏に尋ねた。


「お兄ちゃん、ネットで噂になってるってほんと?」


「……あぁ、出版社から聞いたよ。読者が勝手に騒いでるだけだ」


「私、モデルだって言われてるの?」


「そうらしい。けど、事実じゃねえよ。フィクションだって説明した」


「うん。でも、私、ちょっと怖いよ」


「怖がるな。俺がなんとかするから」


 基氏が碧純を抱きしめた。


「お前、俺のそばにいればいいよ。なんでも乗り越える」


「お兄ちゃん、私も頑張るよ。お兄ちゃんと一緒なら、大丈夫だよね」


「あぁ、大丈夫だよ」


 二人の絆は深まったが、外部からの影は忍び寄っていた。


 ネットの噂がどこまで広がるのか。


 世間の目が二人の関係にどう影響するのか。


 それは、まだ誰も知らなかった。

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加筆修正新バージョン☆『お兄ちゃんのためならパンツもあげるよ』って絶対あげないからね!現実の妹を見てよ!お兄ちゃん 常陸之介寛浩◆本能寺から始める信長との天 @shakukankou

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