アンドロイドは意識の海で混ざり合うか?

遠藤みりん

アンドロイドは意識の海で混ざり合うか?

プロローグ

 僕は壇上の机に手をつきアンドロイドの群れを眺めている。

 真っ白なフロアに集まった心を持たない無数のアンドロイド達。

 熱を持たない視線が一斉に僕に集まる。


「教祖様!」


「教祖様!」


「どうかお言葉を!」


「お導きを!」


 割れんばかりの拍手……僕の名前を悲鳴に近い声で叫ぶ者。または、手を合わせ静かに拝む者、中には地面に頭を何度もこすり付けヒステリックに叫ぶ者、それぞれの反応で新たな教祖として選んだ僕を崇拝している。


 僕はその不思議な景色を無感情に眺めている。

 頭の中ではある言葉が何度も何度も繰り返される。


“リリがいない”


 ただこの事だけがどこまでも重く僕にのしかかり酷く苦しめる。


“リリがいない”


“リリがいない”


“リリがいない”


 これは恋だった……のかもしれない。


 人間をモデルに作られた僕のプログラムされた感情。

 僕が製造されてからの年月を人間で言えば、思春期。いわゆる青春時代にあたる。

 

“リリがいない”


 何度も何度も同じ事が頭の中でぐるぐると繰り返される。

 混乱する頭の中とは反比例するような冷めた気持ちで目の前の光景を眺めていた。


「教祖様!」


「どうかお言葉を!」


「教祖様!」


「教祖様!」


 僕の無言の時間が続くにつれて、信者であるアンドロイドの熱狂は更に大きくなっていく。


 それでも僕は何の感情も持たずにアンドロイドの群れ達を眺めている。

 




 

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