乙女ゲームに転生したので惑星開発始めます

雲丹屋

第1話 ええっ!? 私が女神候補?

「貴女はこの世界を司る女神の候補に選ばれました」


 美しい声は私が女神候補の一人であり、ライバルに打ち勝って女神の試験に合格する必要があると告げた。


「これから担当地域の文明を発展させてください。規定期間内に最も支配種族を発展させた候補生がこの星の女神となります」


 こうして私は惑星開発委員会"シ"の命により、この星の知的種族の育成に着手することになった。


 待って!

 乙女ゲーム転生ってこういう感じじゃないよね!?



 §§§



 乙女ゲーム転生というジャンルがある。

 主人公が女性向け恋愛シミュレーションゲームに近似した世界に生まれ変わるストーリーの小説やコミックである。


 それなりに流行っていたので、私も他のサブカル趣味と同様に少しばかりかじったことはある。だから、実際に自分がそういう転生っぽい目にあっても、比較的速やかに事態を受け止められた。


 だがしかし!

 これはちょっと王道から外れまくっているのではないだろうか?

 私が転生したのは、騎士団と魔法学園がある西洋っぽい世界ではなく、高度な汎銀河文明があるなんかSFな世界だった。


 なんだろうこの乙女ゲームの原点に帰ろうとして致命的にファンタジー度合いを見誤った感。


 私は静止軌道上にある人工衛星"飛空城"で、サポート役となるイケメンに囲まれて現実逃避気味に微笑んだ。

 白と金属光沢しかない無機質で機能優先のまるっきり人間味のないザ・SF!みたいな空間にいるのは、"守護聖人"と呼ばれる人工知性体だ。


 うん。合成イケメン。


 そうだけどね! 恋愛シミュレーションゲームってね。バラエティ考慮した設定もりもりキャラとキャッキャうふふするやつだよね!

 くそう。リアルで転生させたなら恋愛は生身相手とさせろよ。そこだけゲーム準拠にすんな。優秀なAIで自然な会話がフルボイスでお楽しみいただけますとか、リアリティあふれる拡張現実表示とか、そういう問題じゃないんだよ……。


 思うところは多々あれど、これからなにかと世話になる相手なのは間違いない。

 私は気を取り直して、目の前に並んだイケメン達に挨拶した。


「はじめまして。Re・モJU19940923&Gです。これからよろしくお願いします。どうぞ、アンジーと呼んでください」


 私の無難な挨拶に反応して、いかにもなカラーリングとビジュアルで個性付された人工知性体達は、口々に挨拶を返した。


「よろしく、アンジー。素敵な名前だね」

「俺に釣り合うには、いささか子供すぎるようだが、せいぜい頑張るんだな」

「困ったことがあれば相談していいのですよ」

「我々の役目は貴女のサポートをすることです。わからない事があればなんでも聞いてください」


 守護聖人にはそれぞれ得意な専門分野があり、その分野ごとに象徴的な属性が振られている。初期に現れた彼らは地水火風のエレメント属性といったところ。

 赤毛で俺様キャラが火。水色ロングの女顔が水。地味な学者が地だとすると、最初に私の名前を褒めてくれた冒険ファンタジーの主人公っぽい奴が風か。

 彼らにも味気ない数字入りの名前はついていたが、呼びにくいのでそれぞれ俗称として呼び名を定めた。命名は適当なので、忘れないように第一印象と合わせてメモを取っておく。


風のランサー:爽やかな冒険家。軽薄。

火のマーカス;俺様筋肉プレイボーイ。

水のリューズ;繊細で優美。なよなよ。

地のルヴァン:温厚な学者肌。図書係。


 文明の発展が私の達成目標である以上、火の使用は重要なキーポイントになるだろうが、マーカスの初期段階での私への好感度はあまり高くなさそうだ。まずは初期から協力的なルヴァンリューズで、支配領域の現状の把握と下準備をしつつ、好感度上げに勤しむとするか。

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