第26話 人身御供
北海道の松前郡・福島町と上磯郡・知内町の境である。津軽海峡の大海原にポコンと突き出るような矢越岬(やごしみさき)が、生贄の舞台となる。
一帯は、海抜30mという断崖絶壁の絶景地である。この岬を境として潮流が変わるため、航海の難所としても知られているところであった。
ノンノが生きた100年以上昔、恐ろしい事件が起こった。海が大荒れになる事に危惧した松前守護大館館主により、この蝦夷地のアイヌ少女たちは人身御供として度々差し出され、海の神の祟りと信じ海に沈められていた。
蝦夷地の統括者に任ぜられていた安東(藤)氏の配下で、松前守護大館館主となった安東恒季(あんどう・つねすえ)は、中々の暴君として知られていたが、海が荒れて漁ができないことに思案に暮れていた。そんな時に、とある修験者(断食、瞑想、経典の唱え、滝の下で. の祈りなどの禁欲的な修行を行う修行者)の勧めるまま、若い女性たちをかき集めて、人身御供として矢越岬に沈めたのだが、それ以来、海中から若い女性の泣き声が聞こえてくるようになったというのだ。
そしてその次に命ぜられたのが相原季胤(あいはら・すえたね)である。安東恒季が配下に攻められて自害した後、松前守護職となったのが相原季胤だった。
海が荒れて漁ができない日々が続いて、嘆いていた季胤だったが、これを海の神の祟りと信じた季胤は、なんとアイヌの娘10数人(あるいは20数人か)を海の神の怒りを鎮めるために、犠牲として海に沈めた。怒ったアイヌの人々が押し寄せ、季胤は二人の娘と共に、愛馬に乗って落ち延びようとしたが、館を逃れて大沼の湖畔にまで追い詰められ、とうとう二人の娘が入水。それを見届け、自らも入水して果てた。
因果応報とは、正にこの2つの事件を如実に物語っている。人はよい行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるということ。
今までいろんな少女たちの波乱に満ちた半生を【過去・現在・未来】と辿って来たが、時をかける少女たちは生贄の餌食となった少女たちの復讐の為に、この世に生を受けた神の落とし子だったのだろうか?
人間を人間とも思わない自分勝手な娘生贄の儀式で、あの世に葬られたアイヌの名も無き少女たち。
神の落とし子とは「霊的なものから生まれた子ども」という意味でもあり「人外の不思議な力を持って生まれてきた子ども」のことを指す場合もある。また、「天狗や鬼などの人知を超えた存在が親である子ども」という解釈も出来る。
ということは、海斗の父や海斗が遭遇した少女たちは、ひょっとしたら何らかの目的で、この世に現れた神の落とし子?ひょっとしたら幽霊だったのかも知れない。?
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若葉が青々と茂り新緑の香る5月は初夏の風が心地よい季節だ。 5月はゴールデンウィークやこどもの日、母の日など、家族や身近な人を想う行事が重なる時期でもある。
海斗は現在大学1年。竹下通りで会った美しい、片時も忘れる事の出来ない少女。そして……20年前に叔父さんの家で見た写真の少女は竹下通りで会った少女とそっくりだった。そして何と写真の裏には7777年?1777年?1977年?そのどれなのか分からないが、この3つのどれかが克明に書かれてあった。海斗の父亮が1977年生まれなのでヒントはここにありそうだ。
そして「妊娠した!」とはどういう意味なのか?
実は…後で分かった事だったが、海斗の祖父稔にはとんでもない過去があった。どの様な変遷を辿ったのかは分からないが、何と……19歳で父亮が誕生していたことになる。
実は…正治が33歳で静子23の時に2人は大恋愛の末結ばれた。その時まだ剛と交際していたわけではなかった。最初は正治と静子が交際していたが、知子がそれを知って自殺未遂事件を起こしたため、2人は周りの説得もあり交際を中断せざるを得なくなった。
可愛い娘が自殺未遂事件を起こしたことで、教育長はカンカンに怒り狂っている。だが、娘がそんな男でも正治しか考えられないと言うので強硬手段に打って出た。
こうして…教育長の脅しに似た強要で結婚せざるを得なくなり結婚した。
「正治君、君を結婚詐欺師として教育界から追放することだってできるのだよ。知子から聞いているが、君は知子に車をねだったそうじゃないか、まあ車は中々高価で買えないので、もっぱら知子の自動車を借りているらしいじゃないか、それから高価な舶来の腕時計もプレゼントしたと聞いている。デート代は知子が払うらしいじゃないか、そんな酷い事をされて私がおめおめと引き下がると思うのかい?訴えてやるからな💢女をむさぼる結婚詐欺師と言って教育現場に居られなくしてやる!💢💢💢だが、あんなにも酷い目に遭って置きながら知子が君を諦め切れないというんだ。結婚さえしてくれれば今回の事は水に流す」
こうして…正治は結婚するしか道はなくなり、泣く泣く冴えない知子と結婚した。
一方の剛はいとこ2人と静子4人で5年もの長きに渡り付き合っているというのに、男がいたとは努々思わなかった。いつも側で微笑んでくれていたあの純真無垢な静子に、男がいたなんて考えられない。ショックで暫く寝込んでしまった。
その思いはとんでもない形で現れてしまった。
静子は正治が有無も言わせぬ形であっという間に結婚してしまい、ショックに打ちひしがれていた。そんな時に剛に誘われドライブに出掛けた。
剛にしてみればまさか静子の相手が結婚した事など知る由もない。ハッキリした内容は分からないが、静子と相手の男は真剣交際で、いつ他人の妻になっても不思議でない状況だという風に認識していた。
(今静子を自分のものにしておかないと静子は他人の妻になる。それだけは絶対に許せない!)
こうして…湘南までドライブしたのだが、車の中で強引に唇を奪った。
「俺は……俺は……静子しか考えられないブチュ😗」
「んもう何……何をするの……大嫌いぅうううっぅ( ノД`)シクシク…わああ~~~ん😭わああ~~~ん😭わああ~~~ん😭」
気持ちの整理が出来ていない静子は、友達としか思っていない剛に強引にキスされて我慢できなくなった。そう言うと静子は泣きながらオレンジに染まった湘南の海を駆けて行った。
(こんな夕暮れ時危険だ!)そう思った剛は慌てて駆けて行き静子を抱きしめ影は重なりあった。
静子は正治が結婚したことに凄いショックを受けたが、乱暴に自分の中に入って来た剛ではあったが、それでも…その傷を癒していくれたのが剛だった。
こうして…強引ともいえる剛の求婚の力に後押しされて間もなく2人は結婚した。
そして何と誕生したのが稔だったが、稔は剛の子供ではなく正治の子供だった。このことが理由で稔の人生には暗雲が立ち込め、僅か19歳で海斗の父亮が誕生していた。
「剛、こんな阿婆擦れ離婚よ💢離婚しなさいよ!💢💢💢」
母節子の嫁いじめの根源にはアイヌというより、結婚したにも拘らず、僅か半年後に子供が誕生したこと自体あの時代では考えられないふしだらな行為。それなのに、そればかりかとんでもない事態が起きた。子供の血液型と剛の血液型が合致しなくて、完全に剛の子ではない事が判明した。
これには完全に切れた母節子だった。
名家である公爵家に、よりによって訳の分からない素性の知れない、それもアイヌと言うではないか。更には何という事だ。長男剛の嫁が他人の子供をはらんでいながら、図々しく我が家に入り込んできたことがどうしても許せない節子だった。
節子は静子のやることなすことが気に食わない。こうして延々と嫁いびりが始まる。
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