自分の顔、というアイデンティティを問う物語
- ★★★ Excellent!!!
「顔を買う」、しかもサブスク制という発想がまず突拍子もなくて驚きました。
そうかぁ、高度な成型技術が発達した将来には、そのような技術もあって、それなりのお金さえあれば利用することが現実的な範囲に入ってくるのかぁ、などと、SFな妄想を侍らせたり。
しかし、自分の顔を捨て、他人の顔を使うということは、自身のアイデンティティとなるものを大きく揺るがす行為なわけです。
果たして、借り物の顔目当てで自分と親しくなった相手というのは、元々の自分の顔であっても同じように接してくれただろうか、そもそも接点が持てただろうか、となると自分らしさとは何なのか……といったところまで考えだすと、自分というものがいかに顔というものによって保障されていたかを痛感させられることでしょう。
この手のお話で脳裏をよぎるのは、荒木飛呂彦先生の「ジョジョの奇妙な冒険」の第四部、辻彩のスタンド「シンデレラ」にまつわるお話です。
このお話も、自身の顔を他人のものに作り替えるという要素が含まれています。
顔、というアイデンティティは、それだけ人の心に訴えかけるテーマがあるのかもしれません。
そんなメッセージを含んだ本作品、是非とも最後までお目通しください。