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Kei

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俺は仕事が終わると大急ぎで家に帰る。アイドル達の配信を見るためだ。ソロで、もしくはグループで活動している彼女たちの多くは配信サイトでライブ配信を行っている。「LIVE」だからその時にインフロントオブPCにスタンバイしていなければならない。絶対か?と言われれば抜け穴はある。配信をRECして動画投稿サイトにアップロードする不埒な輩がいるので、そうした違法アップを視聴するという方法だ。俺にとってはあり得ない。ライブ配信には「生きたライブ空気」がある。彼女達がシェアしてくれるを共有できなければ意味がないからだ。それどころじゃない、ライブでなければ、彼女たちに俺の「熱い気持ちコメントとお金」を伝えることができないのだ。


アイドルのファンも一様ではない。応援する形態によっていくつかの種類があるが、どれが上、どれが下などというものはないと俺は考えている。『推しは増やすもの』だからだ。長くアイドルを追いかけていると増えていくのが自然なのだ。そして俺はクソDDと呼ばれる区分に入っている。だから忙しいのだ。


公演やイベントがあれば、仕事の後すぐさま現場に駆けつける。ない日と、チケットを取れなかった日は配信に全集中する。そのために俺は配信スケジュールをきっちり調べ、誰がいつ配信する予定か、そして誰と誰の時間がどれだけ被るのかを把握している。しかしもっと大事なことがある。それは配信に優先順位をつけることだ。誤解してはいけない。アイドル達に、ではない。配信の内容に、だ。


アイドル達は配信をより面白いものとするために様々な工夫をしてくれている。「ばんごはんクイズ」や「お絵描き」などといったカジュアルなものから、流行りのゲームを配信するといった権利関係は大丈夫かと気になったりマネージャーの影がチラつくものもある。後者は特に事務所に所属している「事務所メン」に見られる傾向だ。


本質的なことを言うと、配信において重要なのは「新しい情報をより多く得ること」なのだ。実はそれは画面の華々しさや派手さに優れた「企画」とはあまり関係がない。むしろ逆に「日常トーク」にこそある。アイドルの身の回りで起こったこと、思い出話、今思っていること、価値観、これからどんな活動をしていきたいか、将来の夢… 彼女たちについてより深く知り、理解する。それがファンの努めだと考えるのだ。彼女たちが一生懸命行う企画を楽しむのももちろんいいことだが、それ「だけ」では、ただの「消費者」に過ぎない…




「ねぇ、となりの部屋から何か聞こえない?」


「あーそれ、気にしないで。独身のおじさんなんだけど、よくひとりでブツブツ言ってるの」


「そうなの… 怖くない? うちら地下っていっても一応アイドルだし」


「いまんとこは大丈夫だと思う。確かにちょっと不気味だけどね」


「あ、そろそろ9時だよ。ライブ始めよっか」


「今日はいくら投げられるかな?楽しみよねー」

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