人生全てを賭けてでも叶えたい夢
第170話
楓さんの誕生日も終わり、三月に入った。
もうすぐで期末試験があるということもあって、今日の放課後は私の家で楓さんと一緒に勉強会をしている。と言っても、勉強会と呼べるほど勉強は進んでいなかった。
「そういや、期末も終わればあっという間に二年生か」
小机の向かい側に座る楓さんが頬杖をつきながら感慨深げに呟いた。
楓さんの言う通り、私たちが一年生として高校を過ごすのも残り少なくなった。かと言って、楓さんと一緒にいられなくなるわけではない。友達のままであれば、二年生になって別々のクラスになってしまった場合にそのまま疎遠になってしまう可能性があったかもしれないけれど、私たちは恋人だ。なにがあっても離れ離れにならない自信がある。でも、
「一緒のクラスが良い」
「ん‥‥」
私は小机に突っ伏す。変な不安が湧き出てきてしまって、勉強どころではなくなってきた。
別のクラスになっても楓さんに会えなくなるわけではないけれど、だからといって会えなくなる時間が増えるのは確かだ。放課後に楓さんと別れて次の日の朝におはようと言われるまでの時間ですら会えなくて寂しさを感じる私に、学校内で会えない時間が耐えられるだろか。できるのあれば、寝るときも一緒に居て欲しい。毎朝電話じゃなくて、起きた瞬間に直接おはようと言って欲しい。
なかなか叶わぬ夢にため息をつく。そういう夢があるのなら、楓さんが告白してくれたようにそれ相応の努力をするべきだ。でも、どうすれば楓さんと毎日お泊りできるのかがわからない。
そのとき突然、背中に柔らかくて温かいものが当たる。同時に花の香りがぶわっ押し寄せてきて、そのあとすぐに耳元で大好きな声が響いた。
「どうしたの?」
後ろから抱き締めてきた楓さんが言う。
私は突っ伏していた顔を上げて、楓さんの胸にもたれかかる。
「一緒が良い」
特に方法も思いつかないから、端的に夢を伝えてみる。すると「うん」とやけに甘い声が返ってきた。
楓さんは私のお腹に回していた手を上に滑らせて顎先に添えると、私の顔を彼女の方に向ける。そして、キスされた。何度か頬にキスしたあと、唇にキスをする。抱き締めるようにぎゅーっとキスをしたら、再びお腹に手を回す。
「ん~~~~」
緩みまくった声を出して、子どもがぬいぐるみを愛でるように抱き締められる。
そういえば最近の楓さんは少しおかしくなった。いや、具体的なキッカケはわかっている。私が彼女を抱いた日からだ。
それからというもの、楓さんの甘え方が強くなった。前までは私ばかりが甘えていたような気もするけれど、今は楓さんも甘えてくる。今のように、突然発作を起きたように私に何度もキスをしたあと、毎度のことぎゅーっとしながら言われるのだ。
「かわいすぎる」
やっぱり今回も言われた。かわいいと言われることは抱く前もよくあったけれど、抱いてからはかわいすぎるになった。
そう言ったあともキスが続く。首筋に何度も何度もキスを落とされて、キスをしながら匂いを嗅がれたりもする。自分がやりたいこと全てやられているような気がするけれど、別にそれでいい。
一見、馬鹿らしいことに思えるけれど、実のところこれは大切なことなのだ。以前までの楓さんならこんな甘える姿を誰かに見せることは恥ずかしいと考えて隠してしまっていたけれど、今はこんな風に包み隠さず甘えてくれる。
しかも私にだけだ。少なくとも私以外の瑠璃さんとかにはいつも通りに接している。そんなことにちょっとばかし優越感を感じてしまうのはおかしいとはわかっているけれど、どこか楓さんが私だけのものになったような気がして嬉しくなってしまう。
でも、これは私が頑張ったから手に入れられたものなのだ。人の心というのは、お金で買えるような“物”ではないから、なかなかどうすれば手に入れられるのかわからない。多少は賭けをする必要があるのだ。
あの行為も、正直賭けだった。服を脱いで下着になった時点で楓さんに拒まれたら終わりだったし、ブラのホックを外してくれなかったときは本当に終わったとも思った。もちろんそのあと、強引に行為を迫ったのもかなりの賭けだ。
なにかをしようとするたび、リスクが脳裏にチラついてしまう。それは楓さんも同じことだったと思う。でも私は、それらのリスクを無視して賭けに出た。もしそれが、私の楓さんへの信頼の証明になれていたのだとしたら、良かった。
それぐらいは頑張ったことなのだ。だからちょっとぐらい、このご褒美を満喫したって許されると思う。
楓さんに抱き締められるのは好きだ。良い匂いがするし、甘えるときの彼女の声はかわいらしい。それに、柔らかいのだ。なにがって、おっぱいがだ。
自分の中で、どこか無意識に自重してきた。それをそんな風に思ってしまうことが恥ずかしいというか、みっともなく感じてしまっていた。でもそれだと、以前までの楓さんと同じだ。今の彼女が包み隠さず恥ずかしい部分を露にしてくれているのだから、こちらも包み隠さないのが礼儀というものだろう。
つまるところ、私は楓さんのおっぱいが好きだ。すごく好きだ。大好きだ。毎秒触っていたい。
あまりこんな風に特定の部位に対して好き好き言ってしまうと当の本人に勘違いされることがあるけれど、もちろん楓さんのことも好きだ。というか楓さんのことが好きだから、その好きな彼女のおっぱいが好きなのだ。別に他の人の胸を見たところでなにも感じない。仮に楓さんのおっぱいが小さかったとしても、同じく私はそれを愛していた。
それぐらい、私は楓さんが好きだ。性的な意味だとしても、それもまた愛だ。それ以外にもたくさんの種類がある好きを彼女は独占してしまっているけれど、それで良い。私があらゆる点において好きと言える人物は楓さんだけで十分だ。
私は体を捻ってぎゅーっから抜け出し、未だに首筋にキスをしようとしてくる楓さんの肩に手を置いて押し倒す。床に背中を着地させた彼女を上から眺めて、なにかを満たす。なぜかはわからないけれど、この位置でこうやって彼女を見ると滾るものがあるのだ。それから胸の中に顔を埋めると、彼女は頭を撫でてくれた。
「なあに、したくなったの?」
胸の中でふがふがと答えると、そのまま思いっきり抱き締めてくれた。
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