21話 海賊の町①
イーコスを無事に出発してから10日が過ぎた。
嵐や渦潮に襲われたり、
「…ナイル海堡が見えたぞ!」
帆柱の見張り台にいる船員が大声で甲板にいる仲間に告げた。
ナイル海堡を抜けたら目的地まであと少し。
「見えてきました、エゼルレッドです。」
見張り台の船員が目的地を視認し、再び報告した。
船橋から見える港の景色が目に見えた時、カズトは少し安心した表情を浮かべた。
そして、小声で
「………帰ってきた。」
少し嬉しそうに呟いた。
エゼルレッドの港
ワダツミ海賊団の玄関口でもある船着場、かつては有名な漁港だったが漁師が減少したため今は
ところが港の出入り口を他の海賊船5隻に壁となって塞がれてしまい入港できなくなった。
更に遊星する
「完全に囲まれました。」
船橋にいた船員が状況を報告した。
「総員、戦闘態勢を取れ!」
すかさず、シリウスはすぐに状況を飲み込み、指示を出した。
「………シリウス。」
ジンクスが話かけてきた。
「……あの海賊船の旗は。」
「……あぁ、間違いないアイツだ。」
シリウスとジンクスはすぐに状況を理解した。
どうして、自分達が囲まれているのかを。それはある人物が仕掛けた嫌がらせである。
「砲門を開け!」
「狙撃部隊が出るぞ、道を空けろ!」
「奇襲部隊はヒビト隊長の背中に乗れ!」
船内はざわつき、大急ぎで戦闘態勢を整えた。
すると、正面から主船と思われる船が1隻ゆっくりと前に出た。ゆっくりと距離を詰め、遊星する
よく見ると少年の背後には怖くいかつい取り巻き達がこちらを鋭い目つきで睨んでいた。
ワダツミ海賊団直系
ナハト・マタギ「久しぶりだな、カズト。」
ナハトはそう言い、脇差にさしてあるサーベルに手を置いた。
「ナハトの兄貴。」
運良く船首で仕事をしていたカズトはナハトを視認し、本音を漏らした。
「キゥ。」
肩に乗っていたネロはいかつい表情でナハトを威嚇した。
ナハトから出ている威圧と殺気に気づいているようだ。
「お前のペットか。」
ナハトはネロを目視した。
「懐いてついてきたんだ。」
カズトは分かりやすく、説明した。
ワダツミ海賊団直系の中でも武闘派でならす海賊組織、
その中でも、船長の右腕をしているナハトが所持する船団の数は四十隻、船員数五万人、縄張りとしている島の数は19つ、更にカジノや風俗店などのデカいシノギでワダツミ海賊団の金庫を金で膨れるほど盛っていた。
その実力から『ワダツミの龍虎』・『
そして、密かにカズトを
「…お久しぶりです。」
カズトは深々と頭を下げて挨拶した。
「お前がここに戻ってくるのは半年ぶりだな。」
「はい、
カズトは躊躇することなく、丁寧な言葉遣いで答えた。
「なんで、出稼ぎに出てたんだ?」
「ツナギの親っさんの指示だからです。」
「ツナギの叔父貴か、成程な。」
ナハトは腕を組んで納得した。
ワダツミ海賊団は組織だが完全に一枚岩ではない、色々な思想を持つ
中でも侠客派で名を通す海賊組織があった、その名はシビキ海賊団。シビキ海賊団の船長であるツナギ・シビキは義理堅く人情で有名な海賊である。
その人間味の良さはアストリア公国の国中に知れ渡っている。
そして、ツナギにはもう一つ偉大な名声を持っていた。
『
アストリア公国、随一の職人でこれまで手掛けた武器や
「………ついでに親父に…フカマ船長に顔を出すつもりです。」
急にカズトは話題を変え、自分の親であるフカマの話を出した。
「…フカマの叔父貴か。」
ワダツミ海賊団直系 フカマ海賊団の船長ジョズ・フカマ。
「叔父貴なら昨日の晩、お気に入りの部下を引き連れて出航している、多分カジノだな。」
「……そうですか。」
カズトは不快な顔で呟いた。
実はカズトはフカマ船長のことが少し苦手だった。
「そんなことよりも、カズト。」
ナハトも強引に話題を変えた。
「……俺と勝負しろ。」
ナハトはそう言い、笑みを浮かべながら腰に差してあるカトラスを抜いた。
「……お前がここに来たって知らせを聞いてからずっと刀が疼いてた。」
殺意をむき出しにしたナハトは刀身の先をカズトの乗る船に向けてニヤリと不敵な笑みを浮かべた。実はナハトはクールに見えるが結構、狂う程の好戦的である。
「……くっ。」
カズトは刀を抜こうとした身構えた時だった。
バシャン
突然、近くの海面が爆発して水飛沫を上げた。
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