第22話 物産展の報告です!
「ということで、トルサート王国での物産展は成功したっていうわけなんですよ」
「……まあ、それは良かったんだが、それをなんで俺たちに言いに来てんだ?」
物産展が終わった後のある日、私はフロリラの町の錬金ギルドに遊び……報告に来ました。ほら、私って結構重要なポジションで凄いスキル持ちじゃないですか。だからやっぱり報告に来た方が良いと思ったんですよ。ええ。リリナも店番をお願いできるようになったので、こういう時便利です。
それで、バーデンさんとハインさんがたまたま揃っていたので、お話していたんです。
「……はー……一応副ギルドマスターだぞ俺は。暇じゃねえ」
「まあまあ、手土産のケーキに釣られたのはバーデンさんじゃないですか」
ハインさんにそれを言われたバーデンさんは、少しだけ照れたように顔を伏せながら、ケーキを一口食べます。
「そのケーキも、というか私のお店自体が王国の御用達ってことでまた人気が出ました」
ブランドというかなんというか、お店もそういう表記が出来るようになってだいぶ有名になれました。王国の方でも支店も作りましたし、商会で雇ったゴローマさん達に本店からも配達をお願いしています。
あ、支店はココンさんに頼みました。王城のコックさんから少しお給料とかは減るかもしれませんけど、引き受けてくれました。感謝です。
「そんなすごいケーキをお土産で持ってきてもらえるなんてありがたいですよね~」
「お前は甘すぎだ」
「ケーキだけにですか」
「燃やすぞ」
目の前でコントがおこなわれています。平和だなー。
こういう平和な感じでいられるのも、リリナがお店をなんとかしているからです。
「師匠もたまにはお出かけしてきてくださいっす~」
って。本当に感謝です。
バーデンさんがカーフィーを飲んでいます。
「そういえばアーニャがうちのお店の店員になってくれたんですよ」
「アーニャって?」
「王国のお姫様です」
「ブハッ!!」
カーフィーを吹き出しました。
「なんでそんなことになってんだ?」
「いやそれがですね……」
ここから私の回想です。
――
お祭りが終わった翌日、私は王城から正式な召集状を受け取りました。差出人は王様、そして文面には堂々とこう書かれていました。
『辺境伯付き錬金術師ミナモを招集する』
……王国のよくわからない立派な印が押されているけど……、仰々しいなと内心ツッコミを入れてしまいました。でもまあ、呼ばれたら行かないわけにはいきません。王城の広い廊下を緊張しながら歩いて、謁見の間に通されました。
「ミナモよ。この度は迷惑をかけたな」
王様が玉座から立ち上がり、私に向かって頭を下げてきたのです。
「い、いえいえいえいえ、そんな、迷惑だなんて……はい、まあ、そんなこと……」
「一瞬悩んだわね」
横に控えていたアーニャが、的確に突っ込んできます。
王様は真剣な顔で続けました。
「そこでだ、責任を持って余は退任をさせてもらう」
「えっ!?」
まさかの発言に、私の声が裏返りました。退任って、王様が……?
「そこで、アナスタシアに余の後任をと思ったのだが……」
「私は王様なんて嫌って言ったの。ミナモのお店で働きたいって」
「へー、そうなんだ……って!え!!」
お姫様が、うちのお店で……!? いやいやいや、何その急展開!?
「だから次の王位はキリルに譲ったってわけ」
「良いんですかそれ……」
私が思わず聞き返すと、王様は苦笑いを浮かべ、アーニャは自信満々に胸を張っていました。アーニャが嫌がるのは前から王様達ももう見越していたみたいです。こうして、まさかのお姫様が店員になることが、あっさりと決まってしまったのです。
――
また同じベッドで寝て、仲間入りが決まったわけなのでした。
「……無茶苦茶すぎる」
「面白いねほんとにミナモちゃんたちは」
「私もびっくりはしましたよ」
バーデンさんは深いため息をつきながら額を押さえ、椅子の背にもたれかかりました。一方で、ハインさんは口元を緩め、まるでお気に入りの劇を見ている観客のような顔です。二人の反応が真逆すぎて、ちょっと面白いです。
「ナギを護衛につけて正解だったな。姫まで護衛対象になるとはな」
バーデンさんがカーフィーのカップを軽く回しながら、感心したように呟きました。
「王国でも大活躍でしたよ、ナギ」
思い出すだけで、少し胸が熱くなります。あのときのナギは、本当に頼もしかった。いつもは穏やかでちょっと天然っぽいのに、戦闘のときは一変して、鋭い動きと的確な判断でみんなを守ってくれました。
「当たり前ですよ。エルフの里でも五指に入る実力の持ち主ですからね」
ハインさんが微笑みながら言いました。その声音には、いつもの通りのにこやかさの中に少しの敬意がにじんでいます。
「しかし……あのケットシー……」
バーデンさんが少し声を落としました。その目はカップの中を見つめているようで、でも、どこか遠くを見ているようでもあります。
「アメインですか?」
「そんな名前だったか、あいつまでそんなに強かったのか?」
眉間に皺を寄せながら、バーデンさんが言います。
「はい。戦闘描写はあんまり上手く伝えられなかったですけど、アメインも本当にすごかったですよ」
あのときのアメインは、まるで別人みたいでした。軽やかに敵の間をすり抜け、尻尾と爪で一撃を叩き込む姿は、まさに森の狩人。あの子が本気になったときの迫力は、言葉では伝えきれないものがありました。
「ただのケットシーがそこまでの……」
ぼそっと漏れたバーデンさんの言葉。
「え?」
私が思わず聞き返すと、彼は一瞬だけ目を伏せ、そしてふっと視線を逸らしました。
「……何でもない」
それだけを残して、話を打ち切るようにカーフィーを口にします。
ほんの短い間でしたが、そのときのバーデンさんの表情に、ほんの少しだけ疑問の色が浮かんでいた気がしました。アメインのこと……何か疑っている?気のせいかもしれませんが。
「あと、レガシア商会の会長になったんですよ私」
「そういえばそうだったな」
策のためとはいえ、会長になっちゃいました。経営は王国預かりなんですけどね。シャロ―さんとゼイリーさんという方が色々とやってくれています。
「商会名は変えたんだっけ?」
「そうです、ヒュウガ商会にしました」
「ヒュウガ?なんだそれは?」
ヒュウガ――日向、前世の私の苗字。私の生きた証みたいなものです。
これにて一件落着かな。きっともうスローライフが出来るようになりましたよね。
少し暑さが混ざっている風が窓から入り、私の髪を揺らしました。
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