第20話 最後の最後の大きな花です

 はぁぁぁぁぁ……ようやく終わりました。帰って仮眠をとって、早起きしてお店の準備……。もう、今何時なんでしょうか。どれくらい寝れるかなぁ……。あ、そういえば会社も私のものになったんでした。王国に住まないといけないのかな。お店ができない?嫌ですそれは……。


「貴様ら・・・・・・わしにこんな・・・・・・」

「ひっ!?」


 油断していました。気絶していたかと思っていて、気が抜けていました。一回立ち上がりましたが、もう一回尻もちを突いてしまいました。


「なーに?もうあなたに出来ることなんて、牢屋に入るくらいでしょ」


 アーニャが見下ろしたまま会長さんに言います。すこしだけ煽っているような感じがしました。


「もう終わりだ……もうこうなったら、全てを壊してやる……!」


 そう言った会長さんは、服の中から紙を取り出して血をしみ込ませます。


「……何を!?」


 アーニャが紙を突き刺しましたが、会長さんは不敵な笑みを浮かべます。何ですかあの紙……


「これはこの建物に仕掛けた時限式爆発魔法の起動術式……もうこの王国は消し飛ぶ運命じゃ!」


 ガッハッハ……!と最後に言い残し、ガクッと気絶しました。

 えっ、時限式爆発魔法ってなんですか!?……時限爆弾!?


「ミナモ!アーニャ!大丈夫!?」


 会長さんが気を失った瞬間、屋上にアメイン達が走りこんできました。アメイン、ナギ、ゴローマさん、みんな少し傷はありますが、無事みたいです。今戦闘が終わったばかりといった様子で、急いできたことがわかります。


「みんな!会長が時限式爆発魔法を発動させたわ!多分、王国を吹き飛ばすくらいの威力よ!!!」

「えっ!?」


 みんながとてつもなく驚いています。


「探しましょう!なんとかなるかもしれないわ!」


 と、アーニャも言っています。どうしましょう。私もとんでもなくマズいことが起きたのはわかってるんですけど……内容が難しくて、なんだか蚊帳の外って感じです。


「アーニャ、ねえアーニャ、その魔法ってどんなのなの?」


 アーニャが私の手を握り、早口で説明を始めました。


「簡単に言うと、大きな爆発を起こす魔法よ。必ず触媒があるの。火の魔力を増幅して王国全体に広げるための……大きな鉄の塊みたいなものよ。解除魔法もあるからなんとか見つけ出すしかないわ」

「爆発……」


 私はごくりと唾を飲みました。やっぱり時限爆弾……そんなもの、どこにあるんでしょう。


「とりあえず探すしかない!」


 アメインがそう言って建物の中に走っていきました。


「ちょっと待ちいや!俺も行くでぇ!」


 それに続き、ゴローマさんも中へ。ナギは音も無くいつの間にか消えていました。きっと探しに行ったのでしょう。

 ……私も探さないと!また死ぬのは嫌です!

――

 私とアーニャも急いで会長の商会の中に駆け込みました。

 広いホール、事務室、倉庫、地下の保管庫……。上から下までみんなで手分けして探しても、なかなかそれらしいものは見つかりません。


「ダメです。中は見当たりません」

「どこにもない!」


 時間だけが過ぎていき、全員の顔が焦りに染まります。

 ナギにも見つけることが出来ないなんて……どこにあるんでしょう……そもそもこの建物の中に無いのでしょうか。


「……避難を呼びかけるべきでは?」


 ナギが言い、ゴローマさんが壁際にある先ほどのマイクを見つけました。


「確かに外に声を届かせることはミナモちゃんのあれを使えば出来るかもしれんが……逆にパニックになるで……」

「それに、見つかったからといって解除魔法は……」

「間に合わない……」


 私の胸がぎゅっと縮みました。このままじゃ、ほんとに王国が――。

 そのとき、あることに気付きました。

 ――屋上は探していない!!

 さっきみんな無意識的に建物に駆け込みました。屋上はきっと探していない!

 私はとっさに階段を駆け上がりました。後ろからみんなの声も聞こえます。この中で一番足が遅い私ですが、思い切り早く上る私には誰もついてこれません。階段が細いだけかもしれませんが。


「はぁ……はぁ……」


 屋上に転がり込むようにして入りました。私の目に飛び込んできたのは……屋上の庭園!!


「……あそこ!」


 私は叫びました。みんなの視線が私に集まります。


「触媒、建物の中じゃなくて庭園に隠してあるんじゃない!?目立つけど、逆に誰も探さないって思わせる場所に!」


 そんなしっかり言葉にはなっていなかったはずです。息を切らしながら駆け出すと、確かにありました。色とりどりの手入れがされた花の中に、大きな鉄が、当たり前のようにそこには鎮座しています。


「……あった!」


 私は叫びました。


「時間は……残り10秒!?」


 よく想像する時限爆弾みたいに、正面に時間付きのモニターがあります。だけど、青いコードも赤いコードもありません。そんなすぐに出来ることは……解除魔法も間に合わない。どうしたら良いのでしょう……

 ……諦めないで、ミナモ!私にはチート能力があるんだからっ!

 スキル《鑑定》を発動して内容を見ます。鉄、爆発魔法、あと色とりどりの花?それを使って出来るもの……スキル内検索……!

 アメインが走ってきます。全てがスローモーションに見えます。私を後ろに引き寄せようとしてきますが、私はそれを拒み、両手を前に出します。ゴローマさんは多分見えない位置、やるしかない。


「レンキーン!!!!花火ーーーーー!!!!!!」


 目の前の触媒と花々が光り、斜め上の夜空に向かって射出されます。そしてそれは空中で爆発して、綺麗な大輪の花が咲きます。もう日もまたぐ時間でしょうか。時間は分かりませんが、そんな気がします。


「綺麗……」


 空を見上げたアメインの口から、そんな言葉が漏れました。


「ははは……綺麗だね……」


 あー、うまくいきました。前世では病室の窓からしか見れなかった花火を、ここまで間近で見れるなんて感動なのですが、今はさっきより力が抜けて立てる気もしません。

 夏……そういえば……カレンダーとか無いけど、この世界にも季節はあるのかなぁ?

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