①あの男と私

①あの男と私

【今朝方、公園で発見されたのは推定十代の女性で、意識はあるものの支離滅裂な事を口にしています。】



遠くから聞こえる無機質な声。



それを聞きながら、先程お風呂に入ったばかりの髪を乾かす。



鏡に映しながら、ドライヤーを使い髪の毛を梳くように。


いつの間にか伸びた髪の毛は腰まで伸びていた。


いわゆる、ストレートロングだ。





【この女性は仕切りに“バケモノ、バケモノがいる“と話しています。バケモノとは例の事件なのでしょうか。無差別に狙う事件が今起きていますが、この女性も被害者なのでしょう。どう思いますか、丸永さん。】


誰かに問うような声が聞こえてくる。




【今、全力で警察が一生懸命に探しているようですが、まだ犯人は捕まりません。私が思うに精神異常者なのでしょう。それも、女性ばかり狙う卑劣極まりない犯罪です。絶対に許してはいけません。】


答えを求めていたであろう人物は、興奮を隠せずに声を荒げていた。



カチっと、ドライヤーのスイッチボタンを押す。



終わったばかりなのか、生温かい風が空気を温くさせた。




「バカみたい。犯人なんてアイツラに決まっているじゃない。」


ボソッと忌ま忌ましげに呟く。




アイツラの目的はただひとつ。



昔も、今も変わらない。



目を瞑り、再び目を開く。


鏡に映る目の前の人物に問いかけた。



アナタハダレ。



その答えに小さく笑みを浮かべる。



遠い昔、すべてを捨てた。



今の私は知る人はいない。

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