またな、大好き。
さわらに たの
第1話 またな、大好き。
美優(みゆ)。
お前に、ちゃんと手紙を書くのは初めてだよな。
何回も「新から、手紙欲しいな」って言ってくれてたのにって、本当に今更だよな。そのたびに「俺、字下手だし」とか言って理由付けて書かなくて、ごめん。
本当は、恥ずかしかったんだ。
男の癖に、手紙とかって。
本当は、何度も書こうと思ってたんだ――本当だ。
でも、俺はずっと、不器用で、ぶっきらぼうで……お前のことを困らせてばかりだったと思う。
「好き」って言葉を、お前は何度もくれたのに、俺はろくに返せなくて、ごめん。
幼馴染で、長い付き合いで、こういう俺だってことをお前が知ってくれてて。
だから、甘えてた。今ならはっきりわかるよ。
ごめん、美優。
お前は、いつも笑ってたな。
「好きだよ」っていってくれてたのに、うんとかああ、とかそんな返事する俺に、「もーっ!」てさ。いっつもふわってした三つ編み揺らして。
「別にいいよ、新のそういうとこも好きだから」って。
そんなこと言われたら、俺、ますます照れちゃってさ。
余計に素直になれなかったんだよ。
バカだよな、俺。
お前がいなくなってから、どれだけ後悔したかわからない。
もっとちゃんと、言葉にすればよかった。
「好きだよ」って、何度でも伝えればよかった。
ぎゅっと抱きしめて、「お前が大事だ」って言えばよかった。
でも、もうお前はいない。 触れることも、声を聞くこともできない。
あの日から半年たって――ようやく、わかってきたんだ。
お前ともう、会えないってことが。
なあ、美優。お前はどこにいるんだ?
どこかで、俺のことを見てるのか?
それとも、ちゃんと安らかに眠れているのか……ううん、こんなこと、考えても仕方ないよな。
もし、いつか、またどこかで会えたら、そのときはちゃんと言うよ。
「大好きだ」って。
今まで言えなかった分も、全部まとめて伝えるよ。
だから、またな。
大好き。
またな、大好き。 さわらに たの @sawaranitano
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