第3話 捨てる神あれば拾う神あり

昨日は悪いことも良いことも色々とあってぐっすり寝たカケル。


カケルは安宿のベッドで目を覚ました。

まだ少し眠気が残る中、習慣のように意識を集中させる。

7時59分、目の前で「あさモニ」の星座占いが始まる。

この世界に来てからも、なぜか毎朝見られる唯一の「元の世界の窓」だ。

聞き慣れたテーマ曲が脳内に響き、キャスターの声が今日の運勢を告げる。

カケルは今日は何位かと身構えた。


カ星座占いを聞きながら、下位じゃないことを祈っていた。

結果は6位。微妙な順位に複雑な気持ちだ。

キーワードは「捨てる神あれば拾う神あり」。

順位も大事だが、この占いではキーワードが意外と重要だったりする。

以前、3位で「アクティブな1日」と出た日は稼げたものの、昨日ほどじゃないにしろ、なかなか危険な目に遭った。

今日の「神」という言葉には、得体の知れない不安が混じる。

拾われるのか捨てられるのか、どっちだろう?


少し緊張しつつも、カケルは身支度を整えた。

新調した装備を手に、ギルドへ向かうことにした。

占いの結果を頭の片隅に置きながら、今日一日をどう切り抜けるか考えを巡らせた。


カケルはギルドに着き、掲示板を眺めた。

採取系の依頼は一つもなく、探索や護衛の依頼ばかりが並んでいる。

昨日の双首トカゲの一件の影響だろう。

仕方なく、報酬はショボいが安全そうな草刈りの依頼を選び、受付へ向かった。

受付嬢のミリアが「あ、待ってましたよ」と言い、2階に向かって声を掛ける。


すると、ギルド長のゼノスがゆっくりと階段を降りてきた。

集まっていた冒険者たちに向かって、大きな声で宣言する。

「近隣の『シルヴァの森』から『クロム山脈』までの探索を行う。ついて来れる者は皆ついてこい!」

カケルは草刈りの依頼票を手に、「自分は関係ないな」と思っていた。

だが、ゼノスが彼に目を向け、「お前は双首トカゲの発見者だ。案内をしてもらう。なに、冒険者は大勢いるし、私も行くから危険はないさ」と笑いながら肩を叩いてきた。


カケルは内心、「占いの『捨てる神あれば拾う神あり』ってこれか?」と冷や汗を流しながら、渋々頷くしかなかった。


ゼノスの呼びかけは討伐ではなく探索だったため、ギルドに集まった冒険者はそれほど多くなかった。

それでも、ゼノスは探索に適したメンバーを厳選し、カケルを含む15人の編成を組んだ。

カケル、ギルド長ゼノス、そして探索や索敵に長けた冒険者たちが、シルヴァの森の入口へと向かった。


森に着くと、カケルは少し緊張しながら「あの辺です」と指差した。

昨日、双首トカゲに襲われた場所だ。

そこには破れたバッグや割れたポーションのビン、散乱した薬草がそのまま残されていて、昨日の命がけの奮戦の跡が生々しく残っていた。

ゼノスがその場を見回し、「ふむ、ここか」と呟いた。

カケルは自分の失った装備を横目に、周囲を警戒しながら一行の様子を見守った。


カケル一行はシルヴァの森を抜け、クロム山脈へと向かってさらに奥へ進んだ。

すると、ウサギのような小動物モンスターが少しずつ現れ始めた。

探索メンバーとはいえ腕利きの集まりだ。

即座に剣や弓で対処し、難なく進んでいく。

クロム山脈の入口に到着すると、そこにはしっかりしたバリケードが築かれており、モンスターが外に出た形跡はなかった。

ゼノスが「何かレアケースだったのかもしれんな。ひとまず安心だ。もう少し周りを探索したら帰るぞ」と皆に告げた。

カケルは自分の報告がこんな大ごとを招いたのかと、少し申し訳ない気持ちになった。


その時、探索メンバーの一人が「あそこ」と小声で指差した。

視線の先、山の崖が続く緩やかなカーブの辺りに、昨日カケルが苦戦した双首トカゲがいた。

カケルの体がギュッと縮こまる。

全員でそちらへ向かうと、トカゲが襲いかかってきた。

カケルは反射的に体をのけぞらせて避けようとしたが、他のメンバーが一瞬で斬り伏せ、「本当にいたんですね」と冷静に呟いた。


一行は奥の見えないカーブを慎重に進んだ。

すると、今度は数匹の双首トカゲが現れ、全員に緊張感が走る。

ゼノスも前に出て、大きな斧を構えて退治に乗り出した。

だが、トカゲたちは戦うことなく逃げるように散らばっていった。

「どういうことだ?」とゼノスが歩みを進めると、そこには驚くべき光景が広がっていた。

崩れた崖の先に、一軒家ほどの大きさの赤い熊が何匹もいたのだ。

熊たちは双首トカゲを捕まえては口に放り込み、悠然と食べていた。

カケルは息を呑み、ゼノスも含めた全員がその異様な光景に凍りついた。


「マズイ!山が崩れて山頂の大型モンスターが外に出てしまっている、一旦戻ってすぐに立て直すぞ」とギルド長。


急いで撤退しようとするメンバーだが1匹の巨大赤熊に見つかってしまう。

熊は自動車と同じくらいのスピードだと聞いたことがあるが

これだけ大きいと一歩がとても大きくスピードも自動車どころではない。

逃げる間もなく距離を詰められてしまう。

ギルド長は「誰でもいいギルドへ知らせろ」と熊と対峙しているが1匹でも苦戦しているようだ。


「いくぞ!」と言われギルド長を残して一部の探索メンバーと共に街へ向かって走る。

後ろからはトラックがビルにぶつかったような音とものすごい熱さを感じる。

あの赤熊、ただデカいだけじゃなく火も吐くようだ。

とにかく走って街へ行こうとするが、この大きな音で他の赤熊も気づき追いかけてきたようで僕はその一軒家なみの熊にぶっ飛ばされた。

ぶつかった瞬間は目の前が暗くなっていき正直死んだと思ってた。


かろうじて生きていたようだが手足がぐにゃりとしていて動けない。

痛いかどうかすらわからない。

目を街の方へ向けると真っ赤に燃えているのが見えた。

絶望感としびれで再び意識を失った。



「7時59分!」

「今日も一日がんばって~。最後にあさモニ占いです」と言う声で目覚める。


部屋のテレビであさモニ占いが流れている。

よくわからないがこちらの世界に戻ってきたようだ。


「捨てる神あれば拾う神あり」とはこのことだったのかもしれない。

異世界で捨てられて、またこの世界に拾われたんだろう。


僕は自分の占いの順位は確認せずにテレビを消した。

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朝の情報番組の星座占いに命運を左右される異世界転生 ながもちフィル @nagamochi

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