魔王の異世界改革記〜魔王に転生してしまったが人類滅亡を計画する配下たちを止めるのに必死です!!!〜
@graymouse
第1話 魔王の赤ちゃん
「うわっ、トラック!」
俺、田中翔太(たなかしょうた)の人生は、コンビニ帰りに突然のトラック事故で幕を閉じた。25歳、フリーターで彼女なし。唯一の楽しみは深夜アニメとソシャゲだったのに、最期がこんなあっけない終わり方だなんて納得いかない。
次に目を開けた時、俺の視界はぼやけていた。体が動かない。手足が短く、むちっとした感触しかない。目の前には、豪華な天蓋付きのベッドと、黒いローブをまとった男が立っていた。
「魔王様、お生まれになりました!」
「……え?」
男の声に反応しようとしたが、口から出たのは「うぎゃー!」という赤ちゃんの泣き声だけ。慌てて周囲を見回すと、鏡に映ったのは黒髪に赤い瞳を持つ、ぽっちゃりした赤ちゃんの姿。どうやら俺は異世界に転生したらしい。しかも、ただの人間じゃなく、「魔王」の赤ちゃんとして。
「魔王様のご意志を仰ぎましょう。まずは人間界への侵攻からか、それとも魔獣の軍勢を増やすべきか?」
黒ローブの男――どうやら側近らしい――が真剣な顔で俺に問いかけてくる。いや、待て。俺、赤ちゃんなんだけど? 侵攻とか言われても、おしめ変えてミルク飲むのが関の限界だよ!
「うー、あー!」
必死に意思を伝えようとするが、側近は目を輝かせて膝をついた。
「おお、さすが魔王様! 『まずは力を蓄えよ』とおっしゃいましたな!」
「いや、ちゃう! ミルクくれって言っただけや!」
もちろん、そんな言葉は届かず、俺は魔王城の巨大な揺りかごに寝かされた。頭の中では、前世の記憶が鮮明に残っている。どうやら俺は、前世の知識と知恵を持ちつつ、この世界の「魔王」として生まれ変わったらしい。しかも、ステータス画面らしきものが視界に浮かんでいた。
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[ステータス]
名前:ゼルヴァス(魔王)
年齢:0歳
職業:魔王(赤ちゃん)
スキル:【魔力無限成長】【全言語理解】【魔族支配】
備考:現在、体力は赤ちゃん並み。魔力だけは規格外。
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「マジかよ…魔力無限成長ってチートすぎるだろ。でも体が赤ちゃんじゃ意味ねぇ!」
とりあえず状況を把握しようと、周囲の会話を聞く。側近たちの話によると、この世界では魔王が100年ぶりに復活したことで、魔族は大喜び。一方で、人間界の勇者たちが「新生魔王を討つ」と動き出しているらしい。俺が生まれただけで戦争が始まるなんて、冗談じゃない。
「うー、うー!」
「魔王様がご機嫌ですな。さあ、ミルクを!」
側近が持ってきたのは、魔獣の乳から作られた濃厚なミルク。飲んでみると、意外と美味い。まあ、赤ちゃんの体だから仕方ないか、と割り切ってゴクゴク飲んでいると、新たな声が部屋に響いた。
「魔王様に謁見いたします!」
扉が開き、入ってきたのは赤い髪をポニーテールにした少女。鋭い目つきに、腰には剣を佩いている。魔族っぽい角が生えた姿から、戦士系の部下だろう。彼女は俺を見て一礼した。
「近衛隊長アリシア、参りました。新生魔王様の教育を私が担当いたします」
「教育? お前、俺に何させる気だよ!」
もちろん「うぎゃー!」としか言えず、アリシアは真剣な顔で頷いた。
「まずは魔力の制御から。魔王様の力は無限ゆえ、暴走すればこの城が吹き飛びます」
「……え、マジで?」
その瞬間、俺の小さな手から黒い魔力が漏れ出し、天井に小さな穴を開けてしまった。側近たちが慌てて叫ぶ。
「魔王様の力が目覚めた!」「さすが我らが王!」
「いや、事故だよ! 制御できてねぇんだよ!」
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その日から、俺の異世界生活が始まった。赤ちゃんの体で魔王として君臨しつつ、アリシアにしごかれながら魔力を鍛える日々。ステータスを見ると、魔力は毎日勝手に成長してるみたいだし、前世の知識を使えば何か面白いことができそうだ。
「よし、こうなったら魔王やってやる。まずは人間と和平結んで、魔族のイメージアップだな。俺、史上初の『平和主義魔王』目指すぞ!」
もちろん、今は「うー、あー」としか言えない。側近たちはそれを聞いて「人間を滅ぼせとおっしゃった!」と解釈してるみたいだけど、まあ、ゆっくり誤解を解いていこう。
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