【三題噺】その入学式、季節感バグってます!
本日の三題:入学式、クリスマス、激しい魔法
新入生代表として、僕——クラリス・ユトリ——は、魔法学園レインライトの講堂にいた。
今日は入学式。
桜も咲いてる。春の香りも漂ってる。
だというのに——
「メリー・クリスマァァス!!!」
講堂に響き渡る大音声。
赤と白のもっふもふな服。 腰に巻いた金ピカのベル。 そして何より、頭に乗った三角帽子。
そこには、どう見てもサンタクロースが立っていた。
「校長のホーリーナイトです★ よろしくね、新入生のみんなっ☆」
こいつが——いや、この方が、我らが学園の校長らしい。
嘘だろう、季節感どうなってんだ。
「さぁて、今日も元気に『入学記念・魔法の試し撃ち』タイム、行っちゃおうか~!!」
嘘だろう、第2弾。
壇上に並ぶ上級生たちが、一斉に魔力を溜め始める。
「おい、なんかヤバくないか」 「光ってる光ってる! それ燃えるやつじゃん!」
僕の隣にいた新入生たちが、ざわつく。
その瞬間——
「ウルトラ・スノウドカーン!!」
校長の杖から、ド派手な激しい魔法が炸裂。
講堂に、降りしきる雪、雪、雪。 それもドラム缶サイズの氷塊混じりである。
「避けろおおお!!!」
講堂、大混乱。
上級生のひとりが魔法を誤爆し、吹き飛ぶクリスマスツリー(なぜある)。
爆発四散するプレゼントボックス(だからなぜある)。
新入生代表、僕。座っているだけで靴が片方消し飛ぶ。
「た、たすけて……」
「ふぅ、盛り上がってるね☆ じゃあ改めて! 入学おめでとぉ~っ☆」
校長がサムズアップしてウインクを飛ばしてきた。怖い。
「ちなみにこの学園、季節の概念は曖昧です☆ 伝統行事は気分で混ざるよっ♪」
伝統の使い方間違ってるぞ!!
「去年の卒業式はハロウィンだったから、今年はクリスマスで調整してみた~☆」
どういう調整!?
「さてさて! ここで新入生代表・クラリスくんに、一言もらおっか~!」
え、今!? この流れで!?
僕は半壊した演台に立ち尽くす。 靴はない、スーツは片袖が炭化してる。 マイク代わりに渡されたのは、光るステッキ(安全性ゼロ)。
「え、えーと……その、えー……」
講堂中が、こちらを見ている。 もしくは、煙の向こうからなんとなく見ている。
「……が、がんばります……」
爆笑と拍手と、なぜか流れ出すジングルベル。
僕の入学式、終わった。
あとで聞いた話。
この学園では、「試練を乗り越えて初めて一人前」らしい。
つまり——
入学式が一番の難関だったのだ。
やってられるか!!!
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