2005/10

 僕たちの関係は、少しずつではあるが進んでいた。


 高校生になると、中学の時とは違い、いろいろな情報が入ってくる。

 また、携帯電話を持ったことにより、情報の量が格段に増えた。

 何が言いたいかというと、性に関することだ。


 僕たちは、少しずつではあるが、お互いの体について確認し合っていった。


 ある日のこと。


 「もっと二人きりになれる場所があるといいね」


 なんて話をふった。特に何も考えていない発言だった。


 「おばあちゃんの家があるの……。今は誰も住んでいないんだけど……。そこなら二人になれるよ……」


 「そう……なんだ。じゃあ、いつか一緒に行ってみたいな」


 僕は心臓がどくどくとなりながら、冷静を装ってそう答えた。


 「うん……。鍵が手に入ったら連絡するね……」


 それって……あれだよね?


 「うん。わかった」


 なぜだか顔を見ることができなかった。彼女はどんな表情をしていたのだろうか。

 きっと僕と同じ気持ちに違いないと思った。


 機会は意外と早く訪れた。


 メールで「今週の日曜日なら、おばあちゃんの家に行けそう」と書かれていた。

 僕は「わかった。待ち合わせして一緒に行こうね」とだけ返した。


 僕はゴムについて調べて、何となくよさそうな蝶々の箱を買った。

 もちろん、初めてだ。

 家でもちゃんと装着する練習を夜な夜なした。

 これで僕は大人になれるんだな、と思った。


 当日、待ち合わせをしてバスに乗った。

 お互いに、いつもより口数が少なかった。

 僕は場所が分からないので、彼女が先導するがままについていった。


 少し古めかしかったが、一軒家だった。

 彼女が鞄から鍵を取り出し、差し込む。

 がちゃり、と扉が開いた。


 「入って……」

 「うん。おじゃまします」


 しばらくして、彼女が布団を準備した。

 僕は緊張でおかしくなりそうだった。


 一緒に布団に入り、いつものように体を確認し合う。

 ただ、いつもと違うのは完全な個室だということ。

 きっと彼女も緊張していたと思う。

 お互いに初めて同士だった。


 そんな甘い時間は、すぐに消え去った。


 矛は交えることなく、壊れたままだった。

 修理を促すも決して直らず、城門は閉ざされたままであった。


 「ごめんね。ごめんね」


 僕は彼女に何回も謝った。


 「大丈夫だよ、あおくん」


 彼女は、いつもの笑顔で迎えようとしてくれたが、僕は謝るばかりだった。


 僕は何に謝っていたのだろうか。

 彼女に? こんな僕でごめん、と。

 自分に? 情けない僕は、と。


 帰りのバスでも、僕は彼女に話せなかった。


 この日を境に、僕は彼女を避けるようになった。

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