朧月宮に煌めく星々

藤泉都理

第1話 翠霞国




 『翠霞すいか国』。

 季節問わず突発的に発生してはいつの間にか消え去っている緑色の霞が有名なこの国の民たちが今、口々に話題として挙げるのは、異母兄弟である二人の王子の名前であった。

 王位継承者である第一王子、瑠霞るか。齢十七歳。

 同じく王位継承者である第二王子、采霞さいか。齢十五歳。

 どちらが王位を継承するのか。と。






(確かに采霞様を守れとの命は受けたけど、)


 王子と王子の妻である妃たちが生活をする朧月宮おぼろづきみやにて。


 桃ノ霞家。

 桑ノ霞家。

 梅ノ霞家。

 妃として多く選出される三家の内の一つ、梅の霞家から妃として選出された十五歳の少女、霞音かのんは自分の夫である采霞を抱きかかえては自分の部屋に駆け込んで、厳重に部屋の扉も窓の扉も閉め切ってのち、あなた何なんですかと小声で訴えた。

 ぱちりぱちりと。

 幼子のように愛らしい顔をしている采霞は目を瞬かせたのち、無邪気な笑みを浮かべて言ったのだ。

 首から頭を外しながら。


 私の名前はAIロボットナンバーゼロ。

 翠霞の命を守れとの命を受けて未来から来た、あなたたち人間が創り出した機械生命体です。











(2025.4.4)



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