第21話 獣人との畜産業!種族文化の違いと交渉の物語

🧭 導入の書:この物語のはじまりに

「お前たちは、食うために“仲間”を飼っているのか?」


ギルドが提案した“共生畜産モデル”に対し、獣人族の族長・ライグは怒りをあらわにした。

彼らにとって、動物は“家族”であり、“神に近い存在”。

家畜として育て、食べるという行為は“禁忌”に近い――

命を育て、命をいただくとは何か?

異なる価値観の中、風間が持ち込んだのは、ある“祈りの儀式”だった。


🌾 本章:農地に立つ者たちの記録

「この鶏舎……とてもよく手入れされているな」

「はい。獣人の青年が、毎日“話しかけながら”育てています」


風間が訪れたのは、南方の獣人集落“サレイナ村”。

ギルド農協はこの地で、鶏やヤギを中心とした共生畜産モデルを試験導入しようとしていた。


「でも……出荷となると、皆が拒絶します。

『育てた命を、自ら殺すことはできない』と」


獣人族にとって、動物は“魂を持つ存在”。

食用としての“命の区切り”を、明確に持たない。


「……でも、彼らも“食べる”んですよね?」


「ええ。ただ、“狩猟で得た命”だけ。

“育てた命”には、深い“つながり”が生まれてしまうんです」


この相反する倫理を超えなければ、共生畜産は成立しない。



風間は、村の族長・ライグと対話の席に着いた。


「育てて、殺す。――それがお前たちの農業か」


「違います。育てて、“生かされた命に感謝する”。

だから、出荷の前には“祈り”を捧げます」


風間は、人間の農家で実践されている【感謝の儀式】を紹介した。


出荷の朝に畜舎で感謝の言葉を伝える


肉となった命には供物を捧げ、年に一度“命送り祭”を開催する


子どもたちに“いただくことの重み”を語り継ぐ


「俺たちは、“奪って”いません。“繋いで”いるんです」


ライグの目が細められた。


「……祈りを込めるのならば、

“命をいただく”ことに意味があるかもしれんな」



交渉の末、サレイナ村では【二系統飼育モデル】が採用された。


一部は“聖獣群”として共生し、生涯飼育


一部は“命の環”として育て、命送りの儀式とともに出荷


「区別がつくのか、心配だったが……

“心で育てた者は、心で別れられる”――

そういう者も、我が村にはいた」


ライグはそう語り、青年の手をとった。


「お前は、“命と向き合う勇者”になれ」



数ヵ月後、アースル村の料理屋に獣人の肉職人が加わった。

彼は、肉を捌く前に手を合わせ、客には“この命がどこから来たか”を語った。


風間は、その姿を静かに見守っていた。


🌱 収穫のひとこと

命をいただくことは、日常じゃない。

だからこそ、祈りと物語が――その重みを支えてくれる。

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