第3話 ダンジョンから謎の毒草流入!? 食の安全を守れ

🧭 導入の書:この物語のはじまりに

「この野菜、苦い……っていうか、舌がしびれたんですけど!」


王都直送の野菜を食べたレストラン客のひと言から、事件は始まった。

調査の結果、農地に紛れ込んでいたのは“ダンジョン由来の毒草”。

風間はその出どころを探るべく、毒草混入の謎を追い、ついに“地下からの侵食”という異世界ならではの原因にたどり着く――


🌾 本章:農地に立つ者たちの記録

「風間さーん! ヤバいっすよ、これ!」


倉庫の前で慌てふためいているのは、ギルド農協の若手職員・ルッカだ。

差し出された麻袋の中には、昨日出荷したばかりのレタスがぐったりと萎れていた。


「ん……あれ?なんか、青紫色のツルが混じってるな。これは……」


レタスの根元に絡みつく、異様に細長いツタ。その先端には淡い緑色の斑点模様がついていた。


「見たことあるぞ。これ、“クロクサ・ダンジェリア”……迷宮植物だ」


迷宮、つまり――ダンジョン内にのみ自生する毒草で、通常は地上の畑に生えることなどない。


「ルッカ、すぐ出荷停止の指示を。王都流通センターにも連絡!『毒草混入の可能性あり』って」


「了解です!」



農地に向かうと、そこには農家のレメルさんが座り込んでいた。


「風間さん……申し訳ねぇ。俺の畑から出たんだってな……」


「検査中ですが、現状はそう見えます。ところで……畑のすぐ近く、地面がやけに柔らかいですね?」


「ん?ああ、最近ちょっと沈んだ気がするが……」


土を掘ってみると、そこには――地下に繋がる裂け目が走っていた。


「まさか……ダンジョンが地表近くまで浮上してる!?」


異世界には、「移動性ダンジョン」と呼ばれる特殊な地下構造が存在する。

ときおり地中を移動し、根を張るようにして“迷宮の土壌”が農地と接触することがあるという。


「ダンジョン側から地下茎が侵入して、毒草が混じったんですね。農家には過失はない」


「じゃあ……俺ら、悪くなかったってことか」


「ええ。ただし、対策は必要です」


俺はギルド農協と精霊測量隊に連絡を取り、**「地中魔力濃度センサー」を急遽設置。

さらに、ダンジョンの植物を遮断するため、“対迷宮結界杭”**を農地の周囲に打ち込んだ。


一方で、回収した毒草はギルド薬師課に依頼して、解毒薬素材として再利用の道も探ることに。



一件落着……かと思いきや、帰り道。


「風間さん。なんで、そこまでやってくれるんですか?」


とレメルさんが聞いた。


「俺、前の世界で“産地偽装”のニュースをよく見てたんですよ。誰かが気づいて、止めてれば違ったかもしれない……そう思うと、見過ごせなくて」


「……あんた、やっぱ農協向きだよ」


そう言って、レメルさんは笑った。


農地の境界に立てられた杭が、夕日に照らされて静かに光っていた。


🌱 収穫のひとこと

土の中に何があるかなんて、誰にもわからない。

だからこそ、見えないところこそ――守らなくちゃいけない。

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