第2話 異常気象の猛威!大干ばつを救え
🧭 導入の書:この物語のはじまりに
アースル地方を襲う、百年ぶりの異常干ばつ。
井戸は干上がり、魔法水源も枯渇寸前。そんななか、ギルド農協に水の供給と作物救済を求めて怒鳴り込んできた農家たち。
水をめぐる争いの裏にあるものは? ギルド職員・風間が見つけた「水のありか」とは――
🌾 本章:農地に立つ者たちの記録
「水がねぇ!!」
今日もまた、朝イチでギルド農協のカウンターが怒号に包まれた。
正確には、3人の農家が、ひとつの魔法水瓶を取り合っていた。
「うちの畑の方が被害がでかい!」
「いや、うちはマナ土壌だから水がないと即死じゃ!」
「黙れ!お前んとこ、昨日の夜こっそり井戸掘ったろ!」
……なるほど、完全に干ばつで水不足が限界に来ている。
俺はギルド農協職員、風間悠馬。
異世界転生して半年、今日のクエストは“水不足による農地被害の解決”だ。
「状況、確認してきます。現地、案内してください」
農家たちの目が、一瞬驚いたようにこちらを見た。
どうやらギルド職員が“現場”に出ることは少ないらしい。
「本気か?あんた……」
「はい。農業って、机の上だけじゃ何もわかりませんから」
*
現場はひどかった。
畑はひび割れ、マジックミントの葉は干からび、火の属性を持つゴボーニャが自発的に発火していた。
「灌漑用の水路は?」
「枯れてる」
「雨呼び魔法は?」
「雨精霊がストライキ中じゃ」
精霊が……ストライキ?
これはもう、単なる自然災害じゃない。
調査の結果、森の奥にある“精霊の泉”が干上がっていたことがわかった。
かつて地域に水をもたらしていた魔法源泉が、地中の魔力バランスの崩れで涸れていたのだ。
「……これ、精霊に正式交渉するしかないな」
村の長老を通して“水精霊族”との会合を設定する。現代の外交交渉の知識が、異世界でこんな形で役立つとは。
*
精霊は言った。
「人間たちは水を無駄にしすぎた。井戸の増設、魔水の汲み取り、契約無視の取水……もう耐えられぬ」
その言葉を、村人たちは黙って聞いた。
「……知らなかったんです。ただの“自然の恵み”だと思ってました」
「水はタダじゃなかったんだな……」
俺は、紙を取り出す。
「この村に、“水使用協定”を提案します。魔力感知による取水量の上限。井戸数制限。水路保護。更新型契約条項付き――精霊族の意見も反映した上で」
沈黙のあと、水精霊の長が一言。
「……承知した」
泉の奥から、水の音が聞こえた。
魔力の再循環が始まった証拠だ。
*
帰り道、モリナじいさんがぽつりと言った。
「風間さん。お前さん、異世界じゃなくても、農協で働いてた口か?」
「……まぁ、似たようなもんです。現場と、現実と、顔を突き合わせるのが、俺のやり方なんで」
乾ききった大地に、一筋の水が流れ出す。
それは、精霊との約束でもあり、俺たちの責任の始まりでもあった。
🌱 収穫のひとこと
農業にとって、水は命。
だけど――命にだって、限りはあるってこと、忘れちゃいけないんだ。
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