【PV 999 回】『異世界ギルド農協職員に転生、転職したら、農家たちが一癖も二癖もあった件』
Algo Lighter アルゴライター
第1章:異世界農業の現場クエスト
第1話 暴走する野菜を止めろ!
🧭 導入の書:この物語のはじまりに
異世界の農村で勤務するギルド農協職員・風間悠馬。彼のもとに、ある日とんでもない通報が届く――「畑のトマトが走り出しました!」
初任務は“逃げる野菜”の回収!? 異世界農業の非常識さに振り回されるなか、現場の農家と協力して“逃げる理由”を突き止める!
🌾 本章:農地に立つ者たちの記録
「また……逃げてるんですか?」
朝、ギルド農協の窓口に駆け込んできたのは、アースル村の農家・モリナじいさんだった。
「走ってるんじゃ!今年のは足が速いんじゃよ!」
そう言って叩きつけられたのは、真っ赤な――トマト。…に見えたが、よく見ると足がついている。ぷにぷにの、3本足が。
「これは……“ミスティマト”か。マンドラゴラ系作物の突然変異種ですね。収穫期になると逃げ出す性質があると研修資料に……」
「そんな悠長なこと言ってる場合か!うちの畑から村中にばらけとる!ギルド農協の仕事じゃろうが!」
まさか、初任務が逃げるトマトの捕獲になるとは、転生前の俺の人生じゃ想像もしなかった。
*
現場に到着した俺とモリナじいさんは、地を這う赤い球体の大群に出くわした。
「うおっ、こっち来る!」
「走るな!踏むな!潰したら皮ごと跳ね返るんじゃよ!」
ミスティマトは収穫時期を自ら判断し、自衛本能で移動する。けれど今年の逃走速度は異常だった。しかも“群れ”を形成して動いている。
「これは……集団行動している……?」
「人間の目を避けて、物陰を選んで動いとるみたいじゃな」
この行動パターン、どこかで見たような――ああ、“移動性害獣の習性”だ。野生化している。これは危険だ。
俺はギルド農協の支給品、魔力発信機付き飛び網【マジカルネットΩ】を構える。
「モリナさん、誘導してください!俺が張る網に追い込みます!」
「合点承知!」
数十分の追いかけっこの末、ようやく最後の一体を網に収める。
ぐったりして膝に手をついた俺に、モリナじいさんが一言。
「……しかし、あれじゃな。去年までは逃げんかったんじゃが……」
その一言で、俺の頭の中で何かが繋がった。
「肥料、変えましたか?」
「ん?ああ、ギルドが推奨しとる“急成長の魔獣肥料”ってやつにしたが」
やっぱりか。あの肥料、使いすぎると作物の魔力感受性が高まり、自我に似た反応を持ちやすくなる――副作用が報告されていた。
「これは……農協が推奨した肥料の責任でもありますね。申し訳ありません」
「ふん。まあ、走るトマトも話のネタにはなるが……来年は戻すかのう」
俺はその場で、肥料使用に関する指導文書をまとめて配布することにした。
最後に逃げ損ねたミスティマトが、俺のブーツにぴょこんと頭をぶつけた。
「お前も、大変だったな……でも、もう逃げなくていいぞ」
ミスティマトは、ころんと一回転して、俺の手のひらに収まった。
その姿に、モリナじいさんが吹き出す。
「ははっ!まるで新米職員が、新米野菜に懐かれたみたいじゃな!」
……俺の異世界農協ライフ、前途多難すぎる気がする。
🌱 収穫のひとこと
そしてこの日、俺は“農産物にも感情はある”という異世界農業の常識を、身をもって学んだのだった。
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