分かっているから。
抹茶 餡子
第1話
第1話: 分かっていたから。
私は今日、君を振った。
背負は私の友人だ。
男二人と女三人、五人グループの。
背負は背が高い。身長が180もある。
顔はどちらかと言えばイケメンではないだが、笑顔が可愛いやつで、ガタイがいい。
後ろから話しかけられると結構存在感があって毎度驚いてしまう。
背負はその度に笑っていた。
そんな彼は、私の事がどうやら好きらしい。
自意識過剰とか、そんなのじゃない。
ちゃんと理由がある。
1年の頃は約束も何もしてないのに、私の帰りを待っていたり、良く話しかけてきて一緒に帰ろうとするのだ。
待っているのは少し怖かったが、帰るのは別に良かった。
だから、「きっと私の事好きなんだろうな」と思いながら、心の中で見過ごして、友人として過ごしていたのだった。
そんなこんなで月日は経ち、私達は卒業した。
私は進学のため、地方へ出た。
友人達とはメールでやり取りしながら、平穏に過ごしている。
初めて暮らし始めてから数日経ち、私はようやく生活に慣れ始めた頃。
友人達とゲームをしながら通話をしていた時、背負と偶然二人きりになった。
その時、告白されたのだ。
「一年の時から好きだった」と。
私が答える前に通話は切られてしまったけれど、翌日気にするな、と言うメールが届いた。
「うん」
…そう、その言葉通り受け流せばよかった。
だけれど、私はその言葉に対して、気持ちは嬉しいからありがとうと言った。
背負も安心したようだった。
だが、これが妙な関係へ引きずってしまったのである。
彼はそう簡単に恋慕が尽きることはなかったらしく、毎日想いを伝えていいかと聞いてきた。
私は受け取るだけだから、と思い軽く了承してしまった。
最初は学生同士の、友達以上恋人未満のような、甘酸っぱいやり取りのようで、少し楽しかった。
だけど、それも日が経つうちに飽きたというか…面倒になってしまったのだ。
元々、背負の愛は一般的に重い方だった。
言葉も、行動も。
私には、それが肩の荷が重かった。
だから…
「デートしたい」
そう真正面に言われた時、私は…怖くなったのだ。
「誘いと気持ちは嬉しいけど、友人として付き合いたいからごめん」
あぁ、私はなんて卑怯なやつなんだろうか。
自分の気持ちで勝手に言葉を紡いで、嫌になったら適当になって、放棄してしまう。
私が1番、されたら嫌なことなのに。
でもこのまま期待させて、匂わせて、そんな事をしてしまったら。
私はいつか彼を振る。
いつか、いつか、私は絶対背負を傷つける。
だから、この際振ったのだ。
期待させて、裏切られるのは私が一番嫌な事で、良く知っている事だから。
ごめん、ごめんね。背負。
貴方はただ、自分なりの形で想いを伝えてくれただけなのに。
こんな卑怯なやつ意外にきっと良い人が…なんておこがましいんだろうけど、私はきっと、そう願っている。
分かっているから。 抹茶 餡子 @481762nomA
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