プロセス
@ayumix
第1話
僕の名前は学。小学生だ。
僕には悩みがある。
いつも母親に小言を言われるのが、たまらなく嫌だ。
「今やろうと思ったのに、『勉強しなさい!』『ゲームは30分よ!』って、小言ばっかり。正直、うんざりだ。」
こんな窮屈な生活から抜け出したい。早く大人になって、自由になりたい——そう思っていた。
そんなある日、兄に誘われて、大学の学祭へ行くことになった。
広いキャンパスに、屋台や展示が並び、どこも賑やかだ。
ふと、壁に貼られた一枚の張り紙が目に留まる。
『君の夢を叶えます。』
まるで僕に語りかけてくるようなその言葉に、思わず足が止まった。
何だろう?気になって、扉を開ける——。
ガラガラッ——扉を開けると、中には白衣を着た男性がいた。
優しい笑顔で僕を見つめる。
「こんにちは。」
「いらっしゃい。」
彼の名は畠平(はたひら)さん。大学の教授らしい。
「この研究室ではね、君の思い描く大人の姿をVRで再現し、まるでゲームのように体験できるんだ。」
「えっ、本当に?」
「試してみる?」
僕はドキドキしながら、装置をかぶった——。
大人の体験①:大人買い
「うおー!すごい!」
目の前に映し出されたのは、大人になった僕の姿。
さっそく、やってみたかった“大人買い”をすることにした。
カードショップで、欲しかったカードゲームを箱買い!
「これで、レアカードもバッチリだ!」
次々とパックを開けていく。レアカードも何枚か出た。でも……。
「ん?なんか……つまらない?」
あんなに憧れていた箱買い。だけど、手に入れるまでのドキドキがないと、全然楽しくない。
自分で貯めたお小遣いで、少しずつ買っていた時の方が、ずっとワクワクしたな……。
大人の体験②:夜更かし
「次は夜更かしだ!」
誰にも怒られずに、好きなだけゲームできる!
夜中までプレイして、ついにクリア!
「やった……!……ん?なんか、だるい?」
目がショボショボするし、体が重い。
鏡を見ると、顔色も悪いし、肌がカサカサしてる。
「もしかして、寝不足のせい……?」
大人の体験③:お菓子食べ放題
「よーし!次は、お菓子を好きなだけ食べるぞ!」
ポテチ、チョコ、クッキー、ケーキにドーナツ。ジュースも飲み放題!
「うまっ!最高!」
——と思ったのも束の間。
「あれ……なんか気持ち悪い……」
お腹がキリキリ痛む。うっ……ヤバいかも……。
「お母さんは、僕の体のことを心配して言ってくれてたのか……。」
大人の体験④:サラリーマン
「今度は、スーツを着て、お父さんみたいなサラリーマンになる!」
——ウイーン。自動ドアが開く。
「おはようございます。」
受付のお姉さん、奇麗な人だな。
緊張しながら、オフィスの中へ入る。
「お、おはようございます……。」
すると——。
「上司より遅く来るなんて、社会人失格だ!罰として、これやっておけ!」
いきなり、上司に怒鳴られた。
えっ……そんな……。
落ち込んでいると、隣の席の人がそっと声をかけてくれた。
「大丈夫?課長、また仕事を押し付けて……。サボりたいからって、こんな量はひどいよね。手伝うよ。」
「ありがとう……。」
優しい人もいるけど……こんな職場で働き続けるのはキツイ。
「お父さんは、僕やお母さんのために、こんな大変な仕事をしているんだ……。」
僕は——もう、早く大人になりたいとは思わなくなった。
「ありがとう。」
僕は装置を外し、先生の顔を見上げた。
「お父さんやお母さんのありがたみが分かりました。大人って自由で楽しいものだと思っていたけど、責任があるんですね。今は子どもだから親が守ってくれる。でも、大人は自分で責任をとらなきゃいけない。」
「気づいてくれてよかった。この装置を作った甲斐があったよ。」
家に帰ると、僕は両親に言った。
「ありがとう。」
二人とも驚いた顔をした。「突然どうしたの?」
「いつも思ってるけど、恥ずかしくて言えなかったんだ。でも今日は、ちゃんと伝えたかった。」
両親は少し照れくさそうに笑った。
焦らなくていい。僕は、ゆっくり成長していこう。
おわり
プロセス @ayumix
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