愛する君、またね
OROCHI@PLEC
愛する君、またね
じゃあまた明日!大好きだよ、またね!
あなたはそう言っていた。
そして、その日は来なかった。
君は死んだ、無差別テロに巻き込まれて。
犯人が捕まっても、私の気は晴れなかった。
ただ、ずっと君を待っていた。
それでも君は来なかった。
窓辺には藤の花が咲いていた。
私はそれを見てただ一つのことを思う。
君の葬式があった。
君は安らかに眠っていた。
やっぱり君は可愛かった。
でも、私はそれを許さない。
無理矢理にでも君を起こす。
私の命に変えてでも。
私は君の亡骸の前で杖を握りしめる。
この世界には魔法がある。
それは、何でもできる。
不死身になることも。
石をパンに変えることも。
人を蘇らせることでさえも、できる。
でも、そういう不可能な事象を起こそうとするほど、とてつもない対価が必要となる。
人を蘇らせる上で、一番簡単なのは、術者本人の命との等価交換だ。
でも、それはできない。
君がまたね、と言ってしまったから、私は死ねない。
愛する君との約束を守らないければならない。
また君と、生きて会わなくてはならない。
私は、禁忌の呪文を使う。
それは、今まで誰も成功したことのない呪文だ。
その呪文は、一年間術者の体を石化させ、さらに術者の意識を無限とも思える時間、無の空間で彷徨わせる。
そしてその間、心を狂わすことがなければ、心から愛する人を蘇らせることができるというものだ。
大半の人は、石化が解けた時、狂っていたり、愛というものを失っていたりした。
中には死んだ人もいる。
私もそうなる可能性が高い。
でも、私はやらなければならない。
君がまたねって言ったから。
そのまたねっていう約束を守らなければいけないから。
君を愛しているから。
そして、君が私を愛し、大好きって言ってくれたから。
私はこの呪文を使う。
また君と会うために。
私は詠唱を始める。
「時を司りし者よ、我が命を石と化し、無の彼方へと沈めよ。生を司りし者よ、その時を対価とし、我が深き愛の証しとして、愛する者の命が再び息吹くことを許せ」
手足が震える。
永遠にも思える時間を耐え忍ばなければならないという恐怖だろうか。
だが、それでも詠唱を止めない。
「神よ、我を試し、永き眠りに導け。その果てに、愛する者は、再び目を開け、共に歩む日々を取り戻さん。 我が心を、また会うために、ここに捧げる」
私は君の顔を見る。
相変わらず君の顔は綺麗だった。
私は笑う。
そして最後の呪文を詠唱する。
「対価を糧とし、不可を可とせよ。愛の
呪文は発動した。
私は自分の体が石になっていくのを感じる。
それでも君を見る。
そして呟く。
「またね、大好きだよ」
愛する君、またね OROCHI@PLEC @YAMATANO-OROCHI
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