モテすぎて拗らせてる美人4姉妹と暮らす事になったけど、俺も拗らせてるから大変です。
空豆 空(そらまめくう)
第1章 俺と4姉妹との暮らしが始まった
第1話 4姉妹が俺の姉と妹になった
俺はこの10年余りの間、子供の頃に言ってしまった言葉をずっと後悔している。
だから今度こそ、うまくやると決めているんだ――
◇
「あー、緊張してきちゃったー!」
「大丈夫だよ母さん。俺もうまくやるから」
俺――
目の前にはモダンな一軒家。
今日は母さんの再婚相手とその連れ子との顔合わせの日なのだ。
知らない人と一緒に暮らすのは不安だけれど、ましてや俺は女性が苦手だけれど、それが母の幸せにつながるのなら、どんな人とでもうまくやっていく。そう覚悟を決めていた。
(よし!!)
息を深く吸い込んで、胸の前で拳を握りしめて気持ちを整える。そして、勢いよくインターホンを押した。次の瞬間。
「マ、マジ!?」
――俺は息を飲むほど驚いた。
玄関から、明らかに非現実的な美しさを纏った女の子が3人も出てきたのだ。
(……さ、3人!? ひとりじゃないの!?)
てっきり、連れ子は1人だと思い込んでいた。1人ならなんとかなると思っていた。いや、いやいやいや、ワンチャン連れ子はひとりだけで、後は親戚かなんかとか……。
心の中でなんとか希望を繋いでいると、後から出てきた母さんの再婚相手、
「やあ、初めまして修吾君。紹介するよ、うちの自慢の娘たちだ。みんな美人だろう?」
その自信満々の振る舞いに、俺は圧倒されつつ絶望してしまう。
(まじかよ、今、娘たちって言った!?)
そんな俺の心の動揺とは裏腹に、
「左から、
目の前の女の子たちは、それぞれぺこりと頭を下げた。
どうやらこの3人は、全員
「は、はじめまして。西村修吾です。よろしく……お願いします……」
なんとか俺も笑顔を作って自己紹介をした後、隣にいる母さんに小声で話しかけた。
「……なぁ、母さん? 再婚相手の子供って……3人もいんの? しかも全員女の子!?」
俺、知らなかったんだけど。3人も、それも全員女の子だなんて。すると母さんは自分の額をぺしっと軽く叩いてあっけらかんと答えた。さっきまで緊張していたくせに、いつの時代のリアクションだよ。
「ごっめーん、言うの忘れてた。
(いやいや、おいおい、『楽しそう♡』じゃないんだよ、こちとらひとりでも大変なのに、……え? 今、4人って言った!??)
とんでもないことを楽しそうな口調で答える母にツッコミたい気持ちをグッと堪え、少し心の準備を整えてから静かに聞いた。
「なぁ、今、……4人って言った??」
(どうか聞き間違えであってくれ……)
「ええ。そう。4人のはずなんだけど……」
すると自信なさげに応えながらキョロキョロとする母の仕草に察したように、
「あ、本当はもうひとり、三女の
どこか言葉を濁す
「あらー。そうなのね。じゃあまた会った時に
「はい。ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします」
――優しそうで素敵な人だな。
それが、俺の彼女への第一印象だった。
「あー♡ 本当にみんな
部屋に入ると雑談が始まった。
「いやぁ、修吾君こそ、
「やぁだぁー。
母さんは
マジで母さんの玄関前での緊張はなんだったんだよ。俺なんてまだこのお洒落な空間に慣れずにいるというのに。
あんなデカいテレビも、革張りの高級ソファーも、ガラスのテーブルだって俺が母と暮らしていたマンションにあったものとは大違いだ。
けれど、今までシングルマザーとして苦労を重ねてきた母の、こんなにも幸せそうな顔を見て嬉しくも思う。
というのも――たぶん、母は昔、俺のせいで再婚を諦めたから。
――俺の幼少期、よく母に連れられて行く公園に、いつも泣き虫の女の子がいた。
けれど笑うと可愛くて、俺はいつの間にかこの子を守ってあげたいと思うようになっていた。
そんなある日、母さんが言ったんだ。
『この子が修吾のお姉ちゃんになって、一緒に暮らすのはどうかな?』
けれど俺は、それが初恋だと自覚する前に母に見抜かれた気がした恥ずかしさから、つい『嫌だ!』と強く声を上げてしまった。
その時の母のショックを受けたような顔は、今でも鮮明に覚えている。
そんな俺の一言のせいで母の再婚話が破談になったと気付いたのは、それから何年も経ってからだった。
俺のいない間にこっそりと、母がその子のお父さんとの写真を眺めながら涙を流していたのを見てしまったから。
けれど、母は文句も言わずこの歳まで女手一つで俺をここまで育ててくれた。だから今度こそ、母さんが掴んだこの幸せを俺のせいで壊したくなんてないのだ。
そう思った時、向こう側はどうなのだろうと気になった。女ばかりのきょうだいの中に男が入るのだ。良く思っていない可能性は大いにある。
少なくとも
そして次女たちはというと……、そう視線を移した時、ふたりからの視線に気付いてぎょっとした。
次女は俺を見てぽーっとしてるし、四女はキラキラと目を輝かせていたのだ。
(あぁ。急に帰りたくなってきた)
その瞬間、押さえ込んでいた本音が湧き上がって来るのを感じた。母の再婚には賛成しているけれど、俺は昔からどうしても女子からのこういう視線が苦手なのだ。
こんなことを思うとただの己惚れ野郎だと思われるかもしれないが、俺はどうやら顔面偏差値というものが一般よりも高いらしい。
『イケメン』『かっこいい』『見てるだけで幸せ』そんな言葉をよく言われる。
けれど四六時中誰かに見られるというのは、決して居心地のいいものではない。さらには男子にまでもてはやされ、揶揄われる。
いつしか俺はそんな環境に疲れ、静かに暮らしたいと願うようになった。
だから密かにこの再婚を機に転校をして、新しい学校ではひっそりと暮らしたい。そう思っていたのに。まさか連れ子が四姉妹で、初日からこんな視線を向けられるなんて。
これでは登下校どころか家の中でも落ち着けそうにない。
とはいえ母の幸せを願う以上、俺が新しい家族と仲良くすることは必須条件。ならば、この姉妹たちとは深くかかわらずうまく立ち回ろう。幸い俺には一人部屋がもらえるはずだし。だったら部屋の中で過ごしていればいい。そう自分を納得させた。その時。
「ねぇねぇ、しゅう君。 『俺はお前を離さないっ』って、言ってみてくれない!?」
「は??」
「いいから、お願いっ」
おねだりをするように手を胸の前で合わせる
「……おれはおまえをはなさない??」
「きゃーんっ♡ さいっこう♡♡♡ やっぱりユーゴにそっくり!! ねぇ、しゅう君。‟あおプリ”のユーゴに似てるって言われない!?」
すると異様に近い距離感と、テンションの高い声。
(俺、この子ニガテかもしれない)
一瞬にしてそう思った。
「いや……特には。言われた事ないっすね……」
だからついそっけなく答えてしまった。そんな時。
「もー、ダメだよ? ニーナ。おにーちゃんを困らせたら。世の中の人たちはニーナみたいにみんながみんな2次元オタクじゃないんだからね!?」
「おにーちゃん、ごめんね? ニーナったら、おにーちゃんがニーナの大好きなアニメのキャラにそっくりで、テンション上がっちゃってるみたい」
「え、あ、そういうこと?」
やたらしっかりした口調の四女の言葉に、俺は少しだけほっとした。
(なんだ、
「ふふ。
(そして
「そうなんだ。それはよかった」
さっきの2人からの視線は、俺が今まで受けてきた女子からの視線とは別ものだと思えて少し緊張がほどけた。その時。
「うん。おにーちゃんは
「へ!? うんめい??」
この出会いのどこに運命を感じる要素があったのか、俺には全く分からなくて戸惑ってしまう。けれど母の幸せのためにも、無碍にはできない。
(……俺……うまくやっていけるのかな)
焦燥感が一気に込み上げてきた。
しかもまだ俺は三女の
それを思うとさらに心がざわついてきてしまう。
この時の俺は、この四姉妹の中の誰かと付き合うことになるなんて、想像すら出来なかったのだ――。
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