トリックスターの本懐(7)
マイにも、アルサ・デ・ムルシエラゴの姿が見えるようになった。
ただそれはいまだ遠く空の彼方にある黒い点で、同じ方向に出てきた大きなハルカちゃんの視線もそちらを向いている。
マイに見えるようになったのはその黒い点だけでない。
黒い点が現れたのと時を同じくして、ハルカちゃんとムルシエラゴの
その線はアルサ・デ・ムルシエラゴの砲撃の大容量レーザー。
実際にマイに見えているのは、アルサからのレーザー砲撃そのものでなく、粉末ディスプレがアルサからの射撃を受け発光しながら消滅している姿である。
幾つかの光線はハルカちゃんを突き抜けている。
大きいから強いのか、ハルカちゃんが怪我をしているようには見えない。
同時に、都市のあちこちで爆発が起こっている。
マイはハルカちゃんがEnScapeでなくなっていることに気が付いた。
それはこれまでマイが見ていたハルカがEnScapeだったことを意味するのだが、この街で生まれ育ったマイはEnScapeでないものが見えるということにどんな意味があるのかよく理解していない。
理解ができていないというより、その差を理解をする必要のない人生を送ってきていたので、そこに違いがあることがいかに重大であるか考えてみる必要を思いつけないのだ。
運よく、マイの近くに爆発は来ない。
「ハルカちゃん! がんばれー!」
マイは必死の応援をする。
キラメスターの力なら、悪者とも戦えるはずだ。
しかし、あまり大きな動きが見えない。
もしかしたら、応援が足りないのかもしれない。
「トゥィンクルスター!」
キラメスターへのお決まりの掛け声をかける。
まだ足りないのかもしれない。もっと大きな声で!
「キラキラキラキラ! トィンクルスター!」
マイの掛け声をきっかけにしたのか、ハルカちゃんの周囲にアピールの光が地面から立ち上りはじめ、ハルカちゃんはこちらに背を向けたまま、両手の指でおでこを指し示すポーズをする。
マイちゃんにはそのポーズがなにか分かった。
「ビーム・オブ・チャーム!」
キラハウスで見慣れた光線がハルカちゃんのおでこから発射される。
キラハウスでいつも見ているように、キラスターはその光線を右から左に薙いで行く。
キラハウスではビームは客席に向けられて客席で連続爆発するが、今回はそうではない。
ビームは虚空に向けられ、赤い火星の空を切り裂いてゆく。
遠くで何かが爆発する音が聞こえた。
空に見えていた黒い点が落ちてゆく。
悪者が出していたらしい空中のレーザーも消えた。
マイの応援を受けて、ハルカちゃんは悪者をやっつけたのだ。
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