完璧超人生徒会長お兄ちゃんの秘密
さわらに たの
第1話 完璧超人生徒会長お兄ちゃんの秘密
わたしは高峰 織(たかみね おり)。
高校1年生のわたしには、お兄ちゃんがいる。
高峰 嶺(たかみね れい)。同じ高校にかよう3年生で、生徒会長。
なんとなく、そこまでで予想がついたかもしれないんだけど――お兄ちゃん、完璧超人なんだよね。
品行方正、頭脳明晰、スポーツ万能。ついでに身長も180センチをゆうに超えていて、街を一緒に歩けばモデルと間違えられるようなルックスの持ち主。
お兄ちゃんはお父さん似なんだけど、涼し気な瞳にクールな顔立ち、ってよく言われる。ちなみにわたしはお母さん似で、よく癒し系って言われる真逆の垂れ目。
「えっ、嶺センパイって織のお兄ちゃんなの?!」
「全然知らなかった! だって全然似てないよね?」
はいはい、よく言われます。
「いいないいな、紹介してよ!」
「羨ましすぎる~!」
中学時代から繰り返されるその言葉にわたしはいつも愛想笑いで返すしかない。
――だって。
羨ましい? 何も知らないくせに。だって、お兄ちゃんは――
ちょっとおかしいんだもん!!!!
■
「ねえ、お兄ちゃん。この姿勢、テレビ見にくい……」
「そ、そうか……じゃあこの角度はどうだ?」
「角度とかじゃなくてさぁ……」
晩御飯も終わり、リビングでくつろぐ時間帯。部屋着に着替えたお兄ちゃんが、わたしを膝の上に載せて両腕でぎゅっと抱きしめている。
まるで、クッションみたいに。
「じゃあもうそろそろ自分の部屋に行こうかな……」
「ダメだ。今、俺は妹成分を補充している」
「……妹成分って何!?」
お兄ちゃん曰く、「俺は外でめちゃくちゃ頑張っているんだ! 家の中では好きにさせてくれ!」だそうで。
「織の傍は落ち着くな……」
「ちょっと! 匂い嗅いでる!? やだ、変態!」
「変態じゃない! これは正当な補給だ!」
やっぱりおかしいよ!
この十数年、お兄ちゃんはずっとこの調子だ。
外だと全然話もしないくせに、家ではべったり。
「おかーさん! お兄ちゃんしつこい!!」
だというのに、母はのんびりと笑うだけ。わたしそっくりの垂れ目を笑ませてにこにことほほ笑む。
「あらあら、仲良しね~。嶺は昔からそうだったもの、織と離れるとわんわん泣いていたものね~」
「いやいや、思い出にふけってないで、助けてよ!」
「でもぉ……嫌なら逃げればいいじゃないの?」
うっ……。
むうっと頬が膨らむ。
そう、逃げようと思えば逃げられる。腕力では勝てないけど、全力で逃げ出せばたぶん振り切れる。
でも――
「結局、お前も俺のことが好きだろう?」
振り返れば、そう言ってにやりと笑うお兄ちゃん。
くっ……、我が兄ながら、顔がいい。
ついでに声もいい。
「……普通、高校生にもなって『妹成分』とか言ってるお兄ちゃんなんていないよ」
呆れたようにため息をついて、やれやれ、と大袈裟に首を振ってみせた。
「まったく……しょうがないなぁ……」
逃げない私に非があると言われたら、確かにそうかもしれない。
でも、この完璧なお兄ちゃんを嫌いになれる妹なんて、いる?
お兄ちゃんは本当にわたしが嫌がってるときはこういうコトをしない。
ちょっとくらいスキンシップ過多でも、まあ……これは兄成分補給ってことで。
あれ?
もしかして、私も……おかしい……?
完璧超人生徒会長お兄ちゃんの秘密 さわらに たの @sawaranitano
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